【第52回】 安全保障①:国力として防衛力を総合的に考える会議(第1回)

安全保障
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今回は「安全保障①」として、国の「国力として防衛力を総合的に考える会議(第1回)」の内容をご紹介します。(出所:国力として防衛力を総合的に考える会議(第1回)

ご紹介にあたっては、会の大まかな概要をお伝するものです。

詳細な内容は、公開されていますのでそちらをご参照ください。

国力として防衛力を総合的に考える会議(第1回)

会議の目的

・日本を取り巻く厳しい安全保障環境を乗り切るため
・国力を総合し、あらゆる政策手段を組み合わせて対応していくことが重要
・総合的な防衛体制の強化について、検討する必要がある。
というものです。

有識者の構成員

・上山隆大 総合科学技術・イノベーション会議 議員(常勤)
・翁百合 株式会社日本総合研究所 理事長
・喜多恒雄 株式会社日本経済新聞社 顧問
・國部毅 株式会社三井住友フィナンシャルグループ 取締役会長
・黒江哲郎 三井住友海上火災保険株式会社 顧問
・佐々江賢一郎 公益財団法人 日本国際問題研究所 理事長
・中西寛 国立大学法人 京都大学大学院法学研究科 教授
・橋本和仁 国立研究開発法人 科学技術振興機構 理事長
・船橋洋一 公益財団法人 国際文化会館グローバル・カウンシル チェアマン
・山口寿一 株式会社読売新聞グループ本社 代表取締役社長

議事要旨

▶日 時 令和4年9月30日(金)17時00分~17時50分
▶議事内容
〇座長の選任が行われ、佐々江賢一郎構成員が座長に選任

【防衛力の強化の必要性に関する基本認識】
〇我が国周辺の安全保障環境は厳しさを一段と増しており、防衛力強化を政府全体として総合的に検討することが急務
〇自分の国は自分たちで守るとの考えを明確にしていくことが必要であり、同盟国からの信頼を得る第一歩となる
〇国を守るのは人なので、最前線で国を守る人たちの処遇を良くすることを忘れないで欲しい
〇装備品の拡充にとどまらず、宇宙・サイバー・電磁波・AI等、備えるべき分野が広がる中、米国との役割分担や価値観を共有する国との連携強化を含め、どうすれば抑止力・対処力を総合的に高めていくことができるかという、グランドデザインが必要
〇装備の生産やデュアルユース分野を含めた技術開発を担う基盤の強化は欠かせない。商慣行の見直し等を通じて、サプライチェーンの再構築に取り組むべき
〇アルな実戦・継戦防衛力があってこそ、リアルな対処力と抑止力も期待できる。リアルな実戦・継戦防衛力の要は、自衛隊に常設統合司令部と常設統合司令官を設置することである
〇存の装備品のスクラップ・アンド・ビルトを行いながら、反撃能力を保有し、継戦能力を高めるといった対象の重点化を図ることが必要
〇防衛装備品の輸出拡大を、日本の安全保障の理念と整合的に進めていくための対策が検討されるべき

【政府全体・縦割りを排した取組やNATO基準】
〇防衛関係支出については、NATO基準GDP比2%を機械的に追い求めるのではなく、真に実効的な防衛力、抑止力に資する支出内容の検討、また、NATO加盟国とは異なる日本の国情に即した検討が必要
〇宇宙、サイバー、AIなど、科学技術は経済発展の基盤と同時に防衛力の基盤にもなっている。…総合的な防衛体制の構築に資するよう、安全保障分野におけるニーズとシーズをマッチングさせる政府横断的な枠組みの構築を検討すべき
〇研究開発に関しては、防衛省以外の省庁の予算で取り組まれているものや、民間企業が行っているものの中にも、防衛力の強化に資するものがあるはず
〇自衛隊だけでは国は守れないという点に関しては、尖閣であれば海上保安庁、あるいはサイバーであれば警察、総務省等々や更には民間企業が対応している。全ての関係者が整合性ある対応を取っていくことが必要。また、科学技術やインフラ整備など自衛隊だけでは実施できない政策は多くある

【特に、先端科学技術と防衛力との関係】
〇科学技術分野における、人材というソフト・パワーと安全保障の問題を真剣に考えなければならない。
〇我が国においては、デュアルユースをはじめ、科学技術者が、アカデミアにおいては、安全保障領域に参画する際、大学内部に特別な空間を作るか、大学の外に安心して研究できる場を作ることが考えられる
○最先端の科学技術の進展の速さは、これまでの常識を遥かに超えており、基礎研究の成果がすぐに実用技術で展開されるようなケースが増えている
〇端的で原理的な技術は、ほとんどが民生でも防衛・安全保障でも、いずれにも活用できる。言い換えれば、民生用基礎技術、防衛用の基礎技術といった区別は、原理的には無意味ではないか。このような観点から、防衛力強化に当たっては、防衛の研究者だけでなく、民間やアカデミアの最先端の研究者の協力が必須。
〇総合的な国力という視点が特に重要。成長戦略の第1の柱に挙げられた科学技術立国の実現を強調すべき。

【経済財政の在り方】
○ 財源については、無駄を取り除く歳出改革の取組を一層進めるとともに、現在の世代の負担が必要。ただし、負担能力に配慮しながら具体的な道筋をつけるが必要があり、持続的な経済成長実現と財政基盤確保という視点に立った検討が重要。
〇防衛力の強化は単年度の話ではなく継続して取り組む課題。必要な財源を安定して確保していかなければならない。自分の国は自分で守るのだから、財源を安易に国債に頼るのではなく、国民全体で負担することが大変必要。

【その他】
〇自衛隊が強くなければ国を守れないという点に関しては、自衛隊をどこまで強くしなければならないかを示す必要。
〇台湾有事において、国と国民をきちんと守れる防衛力をつくる必要があるということを、国民に明らかにすべき。そのための道筋、あるいはそれに向かっての国民の負担をどうすべきか、年末の三文書の見直しに向けて国民に説明することが大事。
〇防衛力強化の目的は、新たな危機の時代に、我が国の積極的平和主義を貫き、国際社会の平和と安定に貢献することにある。国民が「我がこと」と受け止め考えるよう、防衛力強化の目的を正面から伝えるメッセージが必要。

安全保障環境の変化と防衛力強化の必要性(資料3)

安全保障環境(全体像①)

図1.我が国を取り巻く安全保障環境 〜全体像〜(出所:内閣官房)

安全保障環境(全体像②)

図2.我が国を取り巻く安全保障環境 〜全体像〜(出所:内閣官房)

軍事力及び戦い方の変容①

図3.軍事力及び戦い方の変容(出所:内閣官房)

軍事力及び戦い方の変容④

図4.軍事力及び戦い方の変容(出所:内閣官房)

軍事力及び戦い方の変容⑤

図5.軍事力及び戦い方の変容(出所:内閣官房)

⻄太平洋における1999年時点の米中戦力

図6.⻄太平洋における1999年時点の米中戦力(出所:内閣官房)

⻄太平洋における2025年時点の米中戦力

図7.⻄太平洋における2025年時点の米中戦力(出所:内閣官房)

中国による我が国周辺海空域での活動状況

図8.中国による我が国周辺海空域での活動状況(出所:内閣官房)

北朝鮮のミサイル能力の向上

図9.北朝鮮のミサイル能力の向上(出所:内閣官房)

ロシアによる最近の活動

図10.ロシアによる最近の活動(出所:内閣官房)

おわりに・・・

今回は「安全保障①」として、
国の「国力として防衛力を総合的に考える会議(第1回)」の内容をご紹介しました。
日本を取り巻く環境の安全保障上の内容を簡単にご説明しました。
国の消極(夜警)に係る「政治」「外交」「軍事」と
積極(福祉)の一部にあたる「政治」「経済」は
独立した国家として存続していく上でたいへん重要な4本柱といえます。
この4分野の横断的な概念が(狭義での)安全保障と言えるのかもしれません。
それぞれがたいへん重要であると同時に、
相互にも、そして、全体として整備していくこともたいへん重要な試みになります。

国会では「反撃能力」という言葉を用いて、
日本の防衛力整備の再構築を試みる動きが進んでいます。

筆者は「反撃能力」という言葉も支持していますし、
「敵基地攻撃能力」という言葉も肯定的に捉えています。

さらに筆者は安全保障構築の前提にあるものとして、
 「防衛比例の原則
を提唱しています。
【第51回】安全保障(中台問題)」で初めて触れています。
これは、
 防衛力の整備は、安全保障戦略・軍事情勢・外交・科学技術を背景とし、それら変化に伴う「均衡性」「相対性」「優位性」を確保すべきという原則のことを説明しています。

※ただし、近隣国が核兵器を保有するからと言って、日本としても保有すべきである。という立場には立っておりません。誤解なきようお願いします。

軍事的に均衡性を維持し、相対性を考慮し、優位性を獲得していく方法は、
国の全体像から落とし込まなくてはなりません。
そういった意味で今回開催された会議は、たいへん意義のある取り組みと筆者は評価しています。

一方で、全体像からの落とし込みが、実は全体ではない偏在的な落とし込みであった場合、
期待される方向には進まないという課題があります。
その意味で、充実した議論をぜひすすめていただきたいと思っています。
変化を知ることで強かな次手を打つことができます。
知った「今がスタートライン!」です。

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