【第53回】 安全保障②:国力として防衛力を総合的に考える会議(第2回)

安全保障
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今回は「安全保障②」として、国の「国力として防衛力を総合的に考える会議(第2回)」の内容をご紹介します。(出所:国力として防衛力を総合的に考える会議(第2回)

すでに、「【第52回】安全保障①:国力として防衛力を総合的に考える会議(第1回)」でお伝えしたもののつづきになります。

ご紹介にあたっては、会の大まかな概要をお伝するものです。

詳細な内容は、公開されていますのでそちらをご参照ください。

国力として防衛力を総合的に考える会議(第2回)

議事要旨

▶日 時 令和4年10月20日(木)17時45分~19時00分
▶議事内容
〇各有識者より、政府による説明や、橋本委員・上山委員のプレゼンを踏まえ、下記のような意見があった。

【防衛力の強化】
(防衛力の整備等)
〇5年以内に抜本的に防衛力を強化するということなので、戦略性・実現性の観点から優先順位をつけて着実に成果を上げる必要。例えばスタンドオフミサイルは国産の改良に数年以上かかり、2027年までに間に合わない可能性もある。国産の改良を進めるのは重要だが、当面は外国製のミサイルの購入を進めることも検討対象
〇実現性は国民の理解を得ながら防衛力を強化していく上で欠かせない要件。…
 費用対効果をしっかりと吟味することも重要。
〇国力を考える、防衛費を増やすといっても、ガバナンス改革を同時にやらないことには、本当の意味での国力の増大にはならない。
〇「国力に見合った防衛力」という言い方がよくあるが、確かに国力を超えた防衛力は持続性がないし、長続きはしない。しかし、場合によっては、特に、抑止力が大きく崩れていくなど、急を要する非常に根本的な状況変化が起こるというようなときは、ある意味では国力を超えた突破力の防衛力が必要になる。そういうことも含めて、極めて動的なダイナミックな国力観ということで見ていく必要。
〇縦割りというものではなくて、運用統合ということが、防衛力の最も重要な転換になるが、その際にガバナンス・イノベーションが必要になる。それなしには、単なる足し算でしかない。ガバナンス・イノベーションを入れることで掛け算になる。
〇実際に抑止が破られた場合、日本にとって一番の脆弱性は、日本社会が、ミサイルが降ってくる状態に耐えられるかどうかということ。たとえ反撃能力があり、敵基地攻撃能力を持っても、現在ウクライナが受けているような攻撃を受けることを前提に、国民防護についてきちんとした計画を持つことが必要。
〇反撃能力が必要であるが、弾薬等の一番ベースになる部分については、最初の大綱が1976年に制定されたときからずっと言われているが、未整備となっている。これは、別表の記載項目に予算をつけることを優先してきたために、ずっとおざなりになってきた。今回、防衛文書を改訂するときに、どういう表現をつけるかということもよく考えてもらいたい。
〇具体的な脅威の能力の面に着目をした防衛力の整備をするという意味で、言わば脅威抑止型の防衛力をつくるという点を、国民に対して分かりやすく説明することが重要。
〇反撃能力について、能力を保有すること自体を議論するというのはもう遅く、むしろ、その能力をどのようにして発動するのかが重要。これは他国の領域にあるアセットを攻撃するという非常に重大な決断になるので、発動について、例えば国会承認など政治レベルにその発動の権限を付与するなどの議論が必要。
〇国力として防衛力を総合的に高めていくにあたっては、同盟国や同志国との連携や補完関係を踏まえたグランドデザインが必要。防衛力整備の7つの柱について、各々の分野で我が国としてどこまで備えが必要か。

(防衛産業)
〇防衛力整備の7つの柱のうち、持続性・強靱性が非常に重要。自衛隊は装備と人で構成されており、それぞれが最大限持続的に能力を発揮できる体制をつくらなければならない。
 日本は工廠を持っていないので、防衛産業は防衛力そのものと考えて、従来のように調達契約の対価を支払うだけでなく、より積極的に育成・強化を図っていく必要。
〇防衛産業の強化について、企業努力が報われる枠組みを整えることで、防衛産業に携わる企業が成長事業として取り組める環境を整備する必要がある。また、自律的な成長を可能にする観点から、買い手が日本政府だけという構造から脱却し、政府として海外に市場を広げる方策についても議論すべき
〇衛産業の育成・強化は不可欠。企業が防衛部門から撤退するというケースが出ており、競争力のある国内企業がなければ、優れた装備品などを国産化することは不可能。

【縦割を打破した総合的な防衛体制の強化】
(総論)
〇国際制度やルール、標準などを自らの国益、国力増進のためにうまく使うことが重要。
〇国力としての防衛力、あるいは抑止力は、いわゆる自衛隊を中心とした軍事的な力だけではなく、外交への投資も重要。開発協力も含めて拡充をすることが、防衛の負担を減らすことになる。
〇電力・通信インフラが攻撃される事態に、自衛隊以外の部分も含めてどのように対処するのかという計画を持っていないと抑止力にならない。
〇海上保安庁の権限強化、体制強化、あるいは自衛隊等との連携強化は重要。
〇サイバーについて、ハイブリッド戦では、相手方は分からないように様々なところにサイバー攻撃を仕掛けてくる。被害を受けたインフラ等々で関係省庁が分かれてしまうと非効率なので、民間も含めて一体となって対応できるような革新的な体制を考えるべき。
〇諸外国との連携も不可欠で、国際的な人道支援やODAの活用が必要。

(研究開発)
〇研究開発予算について、司令塔となるCSTIのメンバーに防衛大臣は入っておらず、科学技術予算と防衛問題は政府部内で制度的に遮断されている。今のままで研究開発予算を防衛費に含めるように予算区分を変更しても、防衛力の強化には結びつかない。政府内に新たな仕組み、ほかの省庁の予算であっても防衛省が関与できる仕組みをつくる必要。
〇側の先進国は、先端技術を守る、先端技術の軍事転用を進めるという2点で協力体制を築いて、それを強化しつつある。日本がこうした多国間の研究開発ネットワークに加わるには、セキュリティクリアランスの制度化や、サイバーセキュリティの確保が欠かせない
〇研究開発について、防衛大臣はCSTIの正式メンバーに入るべき。
〇端的で原理的な技術の多くはマルチユースであり、また、公共インフラは、有事に国民を守る重要な機能を担うこととなる。こうした実態を踏まえれば、これらは軍用と民生に分けず、国力としての防衛力という観点で一体として運用すべき。
〇研究開発について、縦割りを打破して、政府と大学、民間が一体となって防衛力の強化につながる研究を進める仕組みづくりは早急に取り組むべき問題。科学技術関係予算は約4兆円あるが、そのうち防衛省は約1,600億円と僅かで、文部科学省の2兆円の約8%にすぎない。これまでの慣例にとらわれることなく、役所の枠を超えて目標を高く掲げて研究開発に取り組むべき。
〇AIやサイバーなど最先端の科学技術のところに対しては、最先端の研究者等を入れて議論することが必須。研究開発の枠組みを作るだけではなく、その中に適切な人をアサインしないと機能しない。
〇アメリカでは、防衛産業と国の在り方が密接につながっており、そこに間違いなくアカデミアの人々は関わっている。アカデミアと防衛技術との関係については、相当慎重に、国民と一緒に共に考えながら、コンセンサスを作っていくことが極めて重要であり、かつ、CSTIのやるべき仕事。

(公共インフラ)
〇インフラについては、まさに自衛隊のニーズを反映する仕組みが必要。他方で、公共の港とか空港でなかなか自衛隊がアクセスさせてもらえない現状があり、改善を国全体として図っていくことが必要。
〇港や空港を有事の際に活用するルールづくりも喫緊の課題。

【経済財政のあり方】
〇経済力については、経済安全保障が非常に重要な戦略概念として出てきている。特にOECD諸国は戦後、完全雇用と物価の安定の2本柱で経済運営をやってきているが、経済安全保障を加えた3本柱にしていくことが必要。
〇日本の一番の脆弱性は、金融・財政が有事にもつのかどうかという点。
〇有事を想定した防衛力強化には、持続的な経済、財政基盤強化と国民の意識の共有が大変重要。
〇国民各層の負担能力や現下の経済情勢への配慮は必要。また、国民の理解を得るには、透明性の高い議論と、目に見える歳出の効率化は不可欠。

防衛力の抜本的強化(資料1)

防衛目標の考え方

図1.我が国の防衛目標の考え方(出所:内閣官房)

ロシアによるウクライナ侵略の教訓

図2.ロシアによるウクライナ侵略の教訓(出所:内閣官房)

新たな防衛力の方向性

図3.ロシアによるウクライナ侵略の教訓(出所:内閣官房)

総合的な防衛力強化に向けた論点(財務省提出資料)(資料2)

我が国経済・金融・財政の脆弱性

図4.我が国経済・金融・財政の脆弱性(出所:内閣官房)

総合的な防衛体制の強化に資する科学技術分野の研究開発に向け(資料4)

図5.科学技術分野と安全保障の協力枠組み(出所:内閣官房)

総合的な防衛力強化のための研究開発の貢献について(まとめ)

〇先端的で原理的な技術はマルチユースであり、それを生み出すのは先端的な基礎研究。我が国の防衛力のみならず経済力等の強化において極めて重要な役割。

〇 我が国防衛力強化に向けては、研究開発による貢献を高めるべく、防衛の専門家と最先端研究者とのマッチングの仕組みを構築することが肝要。

〇 研究開発の拡充は防衛省のみならず、国立研究開発法人を場としたマルチユース研究、更には大学を場とするマルチユース研究など、海外事例も参照しつつ、我が国に適した方策を。

〇 例えば、安全保障関係の会議体と総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)の間で意見交換等を行いつつ、CSTIが決定する方針に適宜反映し、支援すべき重要技術を定めた上で、実務レベルで方向性を議論し、更に、防衛装備庁や大学等の研究者の参画など、国立研究開発法人を目的研究のハブとして活用することが考えられるのではないか。

〇 米国では、DARPA型研究が安全保障の開発ニーズに対して迅速にソリューションを提供し、破壊的イノベーションからスタートアップへの橋渡しの役割を果たしており、我が国においても、DARPA型を参考にしつつ、こうした仕組みを整えていくことも今後の検討課題ではないか。

防衛力を支える産業・技術基盤の強化に向けて(補足資料)

図6.防衛力を支える産業・技術基盤の強化に向けて(出所:内閣官房)

おわりに・・・

軍事技術の発展と、科学技術の発展というのは密接不離の関係と言えるでしょう。
現在、当たり前に使っているインターネットもまた、軍事技術を端緒に始まっています。
日本はこれまで、軍事技術の開発と、民間における科学技術・研究開発との間に境界線がありました。
その歴史は、戦後60年以上も続いてしまったと捉えることができるのかもしれません。

日本の経済状況や社会状況をふまえ、人口問題や少子高齢化や財政上の課題をはらみながら、
いよいよ全体最適化を図る必要性に気づくことができたと筆者はみています。
社会保障、経済、外交・安全保障といった個々別々での対応の推進は、
ここにきて、総合政策へとその変容を始めているのではないでしょうか。

一国の防衛力を捉えることはとても壮大な話です。
・例年ベース
・10年前と大きく変わっていない
・現状と過去に進展あった領域は
を比較/評価してみると、あるいは、振り返りを行うと、
その進化の停滞を洗い出すことができます。
筆者がスクリーニングで比較しただけでも、深刻な現状を洗い出すことができました。

今回、標題のような会議体が開催されています。
どうか、関係する所管庁においてその改善の方向性を導出していただければ幸いです。
知った「今がスタートライン!」です。

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