【第54回】 安全保障③:国力として防衛力を総合的に考える会議(第3回)

安全保障
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今回は「安全保障③」として、国の「国力として防衛力を総合的に考える会議(第3回)」の内容をご紹介します。(出所:国力として防衛力を総合的に考える会議(第3回)

すでに、「【第52回】安全保障①:国力として防衛力を総合的に考える会議(第1回)」
「【第53回】安全保障②:国力として防衛力を総合的に考える会議(第2回)」でお伝えしたもののつづきになります。

ご紹介にあたっては、会の大まかな概要をお伝するものです。

詳細な内容は、公開されていますのでそちらをご参照ください。

国力として防衛力を総合的に考える会議(第3回)

議事要旨

▶日 時 令和4年11月9日(水)17時00分~18時10分
▶議事内容
〇各有識者より、政府による説明や、折木元統合幕僚長・佐藤元海上保安庁長官のご発言を踏まえ、下記のような意見があった。

【防衛力の強化について】
(目的・理念、国民の理解)
〇米中対立の緊迫度の高まりや、周辺国による相次ぐミサイル発射などを受け、国民の安全保障に対する関心が高まっている。我が国が置かれている安全保障環境に加えて、国民生活の安全や経済活動の安定を守るために必要な措置や、それに伴う負担について国民自身が理解をする必要がある。
〇「何ができるかではなく、何をなすべきかという発想に転換すべき」との考えは大変重要。

(防衛力強化の必要性)
〇5年以内の抜本的強化は、かつてない取組となる。国民負担の議論を推し進めるためにも、戦略性・実現性・費用対効果を踏まえた防衛力強化の中身、道筋を分かりやすく示すべき。
〇日本が目前の脅威に直面していることを踏まえると、最も優先されるべきは有事の発生自体を防ぐ抑止力であり、抑止力に直結する反撃能力、つまりスタンドオフミサイルではないか。国産の改良を進めつつ、外国製のミサイルを購入して、早期配備を優先すべき。
〇基地の日米共同使用に真正面から取り組む必要。
〇衛隊について、陸・海・空の3隊で伝統的に担ってきたが、既に、サイバー、宇宙といったような、その3隊をまたがる、あるいはそれらとは別の空間が非常に重要になっている。それらについて、例えば防衛大学校や、各種組織においてどのように人材養成していくかということについても、新しい発想で取り組む必要。
〇防衛力を総合的に強化していくには、防衛産業の強化は欠かせない。
〇衛とは戦争を起こさないための努力であり、軍事力の均衡が戦争の抑止力になることは言うまでもないが、同時に、広い意味での国力の均衡を企図することが重要。
〇防衛産業の振興は官民一体で取り組むべき。その観点から、防衛産業に関しては、何が原因で企業の撤退が続いたのか、企業側は何を望んでいるのか、防衛装備品の輸出を妨げていた要因は何か、外国の防衛産業との競争に勝つにはどうすれば良いかなど、課題を総ざらいすべき
〇「自衛隊が強くなければ、国は守れない」という点は、まさに防衛力の抜本的強化の本丸である
〇防衛力の抜本的強化のための中期防衛力整備計画の対象経費というのは、今の水準を大幅に増額させなければならないことは明らか
〇研究開発・公共インフラの分野は、本体の防衛力強化を、いわば補完し、有効に働かせるために一体となって整備されるべき性格のものである。
〇海上保安庁の体制強化について、海上保安庁専用の岸壁が全国で2か所しかないということは問題。
〇有事における海上自衛隊、海上保安庁の役割、これを明確に定義する必要。
〇有事を想定した海上自衛隊と海上保安庁の訓練を行う必要がある。
〇シーレーン防衛と商船隊の防護は、国家安全保障だけでなく国民安全保障の観点からも不可欠であり、防衛力の抜本的増強においてきわめて優先順位の高い課題と位置付けるべきである。

【縦割りを打破した総合的な防衛体制の強化について】
(研究開発)
〇米国における科学技術と安全保障を組み合わせた国家戦略は印象深い。
〇研究開発について、マルチユース研究を円滑に推進するべく、進捗確認はシーズ側とニーズ側の情報交換を促すことを主眼に進めるべき。

(公共インフラ)
〇公共インフラについて、港湾・空港が大きなテーマであるが、それ以外の国交省が管理している道路や構築物や、サイバーの通信・電力インフラといったものも、今日の防衛にとって重要であり、どう手当するかも考えるべき

(サイバー安全保障、国際的協力)
〇研究開発や公共インフラの分野の各省庁の政策資源を活用する新たな枠組みは画期的。
〇研究開発や公共インフラ以外にも、国際的な活動の取扱いやサイバーセキュリティなど分野を広げて、総合的な防衛体制の強化の取組を行うべき。
〇宇宙・サイバー・電磁波では、特にサイバー防御は待ったなしの課題。

(具体的な仕組み)
〇縦割りの打破を多くの委員の方が指摘された。
〇「自衛隊だけでは、国を守れない」という意味で、縦割りの行政を排するということが大事であり、新たな枠組みは大変大きな進歩。
〇新たな総合的な防衛体制の強化に向けた取組は、新しい試みとして非常に歓迎すべき取組だが、実際の運用についてよく考える必要

【経済財政の在り方について】
〇防衛力の強化は将来にわたって継続して安定して取り組むものであるため、安定した財源の確保は、基本になることを明確にするべき
〇財源確保の考え方について、まずは歳出改革を行った上で、不足する財源について措置を検討していくべき
〇防衛関連には、長く続いてきた様々な制約がある。装備品の輸出規制はその典型だが、防衛体制の強化に使う費用には公共インフラが含まれて、これは建設国債が充てられるが、自衛隊の隊舎など、防衛費から捻出するものには建設国債が充てられていない。こうした考えも、防衛力強化の財源確保を検討する中で見直すことが必要。

総合的な防衛体制の強化に必要な財源確保の考え方(資料3)

財源確保の基本的な考え方①

図1.財源確保の基本的な考え方①(出所:内閣官房)

財源確保の基本的な考え方②

図2.財源確保の基本的な考え方②(出所:内閣官房)

折木元統合幕僚長提出資料(資料4)

真に戦える自衛隊へ

図3.真に戦える自衛隊へ(出所:内閣官房)

「相手が嫌がり、強化されると痛い分野」への投資

図4.「相手が嫌がり、強化されると痛い分野」への投資(出所:内閣官房)

「人」は戦力の基盤

図5.「人」は戦力の基盤(出所:内閣官房)

研究開発で負ければ、将来の戦いで負ける

図6.研究開発で負ければ、将来の戦いで負ける(出所:内閣官房)

おわりに・・・

今回は「安全保障③」として、国の「国力として防衛力を総合的に考える会議(第3回)」の内容をご紹介しました。
「自衛隊だけでは国は守れない。」というお言葉もたいへん重たいものを感じました。
国防という分野は、安全保障の一部ではあるのですが、
その国防は、たいへんさまざまな分野を包摂している言葉でもあります。
自由で民主主義に成熟したが、
遵法の精神に成熟した国民が、
協力・協働・協調することに長けた国民性が、
技術発展や研究開発にあくなき挑戦をし続けられる環境が、
…もしもあれば、
自由で開かれた世界秩序構築の実現や貢献も十分に可能だと信じています。
そのために必要な検討が今まさに始まったと筆者は受け止めています。
今回は…
 ・財源的な検討
 ・公共インフラとしての検討
 ・防衛組織の再構築の検討

などの検討が行われました。

自衛隊や海上保安庁の機動展開をベースに、
空港・港湾等がメインで議論の題材に使われました。
話には上がっていないか、あるいは、非公開としたかは定かではありません。
戦略・戦術における展開には、
道路、駐車場、橋梁、鉄道、空港、港湾、物資集積場、…
(他にもたくさん公共インフラはありますが)…
多くのインフラが関係してきます。
加えて、戦闘が行われると、あるいは、戦闘が想定されると、
国民の生命を守る措置(国民保護)も必要になります。
そういった、全体視の中で、社会的なシステム再構築を試みなければなりません。

最近では、戦闘を続ける能力として「継戦能力」もクローズアップされてきました。
たまに撃つ、弾(たま)が無いのが、玉(たま)に瑕(きず)
という防衛川柳を耳にしたことがある人もいるのかもしれません。
これは、武器や需品系の装備・保有の現有数(現時点でもっている数)もさることながら、
供給系サプライチェーン)も包括したものといるでしょう。
これは「物」に関するお話しです。

「人」についても同じことが言えます。
少子高齢化、過疎化、などの人口構造のほか、
働き方への価値観の変化や、
グレートレジグネーション大退職時代)と言われるこれからの時代に、
人的資源の再構築は急務です。
人員数に関しては、
 ▶「定員」…法令で定められた数
 ▶「現員」…現在保有する数
への抜本的な考え方の転換も必要でしょうし、
人的資源のモロモロ(←含みをもたせています)の抜本的な再構成も必要だとの立場です。
前時代的な人事施策や、これまでの概念に引っ張られた発想では、
さまざまな面で安全保障上のリスクになってしまうことでしょう。
ここでは紙面の都合で「モロモロさまざま」部分の言及は控えます。
「対症療法」から「根本治療」へ…のような進化が重要なのではないでしょうか。

さて、「人、物、金」と言われるように、
 ・政治的判断を担う政治家・当局、
 ・安全保障・防衛を見据えた社会インフラの構築・維持・管理を担う当局、
 ・安全保障・外交・防衛を直接担当する当局の人材、
 ・戦略を担当する人材、
 ・戦術・戦闘を担当する人材、
 ・戦闘を長期継続することができる各種資源供給アイデアと仕組みづくり、
 ・戦闘を遂行する武器・装備・物品の開発、
 ・戦闘を有利化する戦術・科学技術・戦闘システム・通信システム・装備、

などがあります。そういった、大局的な見地~小局的な視点の幅広い視野と奥行きのある深さでの検討が必要になると考えています。
出席者はすばらしい方々ばかりです。
ぜひともそういった視野視点で本テーマを引き続き推進していただきたいと思っています。
知った「今がスタートライン!」です。

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