【第55回】 安全保障④:国力として防衛力を総合的に考える会議(第4回)

安全保障
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今回は「安全保障④」として、国の「国力として防衛力を総合的に考える会議(第4回)」の内容をご紹介します。(出所:国力として防衛力を総合的に考える会議(第4回)

すでに、
「【第52回】安全保障①:国力として防衛力を総合的に考える会議(第1回)」
「【第53回】安全保障②:国力として防衛力を総合的に考える会議(第2回)」
「【第54回】安全保障③:国力として防衛力を総合的に考える会議(第3回)」
でお伝えしたもののつづきになります。

ご紹介にあたっては、会の大まかな概要をお伝するものです。

詳細な内容は、公開されていますのでそちらをご参照ください。

国力として防衛力を総合的に考える会議(第4回)

議事要旨

▶日 時 令和4年11月21日9:35~10:10
▶議事内容
〇とりまとめに向けた議論
〇資料「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」報告書(案)

国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」報告書

1.防衛力の根本的強化について

(1) 目的・理念、国民の理解

インド太平洋におけるパワーバランスの変化や、周辺国等による変則軌道のものを含む相次ぐミサイル発射など、深刻化する我が国の安全保障環境を受け、国民の安全保障に対する関心がかつてないほど高まっている。

防衛力の抜本的強化の目的は、このような厳しい安全保障環境において、我が国の国民の生命と財産、我が国の主権及び平和と安定を守り、国際社会の秩序を保ち、安定を図ることにある。それには、日本及び日本周辺での戦争を抑止し、力による現状変更を許さないという我が国の意思を国内外に示し、有事の発生それ自体を防ぐ抑止力を確保しなければならない。…

…政府は国民に対して丁寧に説明していく必要がある。

その際に重要なことは、なぜ防衛力を抜本的に強化する必要があるのか、国民生活の安全や経済活動の安定を守るために必要な措置はどのようなものか、そのためにどれぐらいの負担が必要となるのかについて国民に理解してもらう努力であり、国民に丁寧に説明していくことである。

(2) 防衛力の抜本的強化の必要性

(戦路性・実現可能性)

我が国周辺の安全保障環境は厳しさを一段と増しており、また、戦闘領域が宇宙、サイバー、電磁波といった分野にも広がり、いわゆるハイブリッド戦の展開など、戦い方も大きく変容している。このような新しく、厳しい安全保障環境を考えるとき、何ができるかだけではなく、何をなすべきかという発想で、5年以内に防衛力を抜本的に強化しなければならない。

…まず、具体的な荷威となる能力に着目し、5年後や10年後における戦い方を見据えて、他国による侵攻の抑止や阻止、排除を行い得る防衛力を構築するという戦路性が求められる。
防衛省は、防衛力の抜本的強化の7つの柱として、
 ①スタンド・オフ防衛能力、
 ②総合ミサイル防空能力、
 ③無人アセット防衛能力、
 ④領域横断作戦能力、
 ⑤指揮統制・情報関連機能、
 ⑥機動展開能力、
 ⑦持続性・強靭性
を掲げており、上記の戦路性の観点も踏まえつつ、これらを速やかに実行することが不可欠である。
同時に、同盟国や同志国との連携や補完関係を踏まえたグランドデザインも必要である。

(反擊能力・継戦能力)

…その際、国産のスタンド・オフミサイルの改良等や外国製のミサイルの購入により、今後5年を念頭にできる限り早期に十分な数のミサイルを装備すべきである。
…そのためには、これまで十分に手が回らなかった弾薬や有事対応に必要な抗たん性の高い施設等のその戦力の基礎となる部分を着実に整備していくことが必要である。
…また、有事の際も国民を守り、社会経済を安定させる観点から、エネルギー安全保障や食料交全保障、我が国の自律性・不可性・優位性の確保を含む経済安全保障の視点や、国民保護に係るしっかりとした計画づくりも重要である。

(防衛産業・人的基盤)

…そのため、防衛装備品の移転に課している防衛装備移転三原則及び同運用指針等による制約をできる限り取り除き、我が国の優れた装備品等を積極的に他国に移転できるようにするなど、防衛産業が行う投資を回収できるようにし、少なくとも防衛産業を持続可能なものとしなければならない。…
また、自衛隊員は、職務送行にあたり、「事に臨んでは危険を願みず、身をもって貴務の完遂に務める」と、自分の命をかけることをあらかじめ宣整している唯一の公務員である。自衛官・事務官の人材確保は重要な課題であり、危険を顧みず職務に従事することが求められている自衛欧員の処過改善、過職自衛官の活用などを積極的に検討していく必要がある。さらに、サイバー・宇宙などを含む領城機断作能力が重要になってきていることを踏まえ、防術大学校や自衛隊の各種学校における人材育成において、新しい発想が必要となっている。

(防衛力の抜本的強化と総合的な防衛体制の強化)

…特に、防衛装備品は完成まで時間がかかるため、初めに総額で契約し、その後複数年度に分けて支払いを行うという特徴がある。このように後年度負担となる契約額と毎年度の支払いである予算とでタイムラグが生じるという構造を含め、国民に分かりやすく示されなければならない。

2.縦割りを打破した総合的な防衛体制の強化について

(1) 総論

…「自衛隊が強くなければ国は守れない」という考えが根本であるが、同時に「自衛隊だけでは国は守れない」ということも肝に銘じ、自衛隊のみならず、国全体で総合的に取り組まなければならない。この点に関し、新たな国家安全保障戦路と防衛計画の大編等により、防衛力の抜本的な強化とそれを補完する総合的な防衛体制の強化の適切な連携が確保されるようにするべきである。…
…現下の厳しい安全保障環境を踏まえれば、平素から最前線で活動している海上保安庁の体制を大幅に強化し、抑止力・対処力を増強していかなければならない。また、有事における防衛大臣による海上保安庁に対する統制、それに基づく海上保安庁と自衛除の連携も極めて重要な課題である。…
…こうした現状を踏まえれば、これらの分野におけるあらゆる能力を、国力としての防衛力という観点で総合的・一体的に利活用すべきである。他府省や民間企業が管理・所有する研究成果やインフラ機能が政府として最大限活用されるよう、府省間、官民の連携体制を構築することが必要である。

(2) 研究開発

…また、先端的で原理的な技術は、ほとんどが民生でも安全保障でも、いずれにも活用できるマルチュースである。言い換えれば、民生用基礎技術、安全保談用の基礎技術といった区別は、実際には不可能になってきている。…
このため、総合的な防術体制の強化に当たっては、安全保原分野の研究者だけでなく、広くアカデミアや民間の最先端の研究者の協力が必須である。政府としては、府省間の縦割りを打破して、政府と大学、民間が一体となって、防衛力の強化にもつながる研究開発を進めるための仕組みづくりに早急に取り組むべきである。…

(3) 公共インフラ

公共インフラも安全保康を目的とした利活用を更に進めるべきである。…

(4) サイバー安全保障、国際的協力

…具体的には、我が国全体のサイパー安全保際分野での対応を一元的に指揮する司令塔機能を大幅に強化するなどし、能動的なサイバー防御を実施できるような新たな制度を設けるべきである。ただし、制度の検討に当たっては、その対象が安全保際にかかわるものに限ることを明菜にし、通信の秘密等国民の機利侵害に対する懸念を払拭することが必要となる。…

そのため同志国等との国際的協力の推進も不可欠であり、安全保際のニーズを踏まえて縦割りを打破して関係省庁が協力する仕組みを構築すべきである。

(5) 具体的な仕組み

我が国防衛力の抜本的強化を図るにあたり、総合的な防衛体制の強化は欠かせず、縦割りを打破し、政策資源の最大限の有効活用を図ることを通じ、我が国の持てる力を結集しなければならない。…

① 基本的考え方

② 研究開発
…具体的には、国家安全保障局、防衛省及び内開府(料学技術政策担当)を含む関係府省会議において、毎年度の予算福成過程前に防衛上の「重要技術課題」とマッチングの「目標額」を定めた上で、防衛省の意見を踏まえた研究開発ニーズ、防衛省の所究開発、各省が汎用目的として実塩可能な研究開発をマッチングするとともに、事業の数行についても関係府省会議で進接確認する。

③ 公共インフラ
…具体的には、国家安全保障局、防衛省及び国土交通省を含む関係時省会展において、南西地城(特に先島諸島)における空港・港湾、自衛談・海上保安庁の配備・利用が想定される空港・港済、国民保護のために必要な空港・港湾等について、自衛隊・海上保安庁のニーズを踏まえ、「特定重要拠点空港・港湾」(仮称)の整備・運用方針を定めた上で、それを空港法・港湾法に基づく基本方針に反映させ、利用等に係る規程の整備を行う。

④ サイバー安全保障
…サイバー安全保際分野の取組に関して、縦割りを打酸し、政府内で責任部局を定めて、一元的に指揮する体制を構築する。新体制は、サイバー関連のインテリジェンスの収集・集約・分析を実施し、その結果も踏まえ、民間との情報共有を含めた積極的な連携やサイバー攻撃を未然に防ぐための能動的な対処等を含むサイバー安全保原分野の取組の総合調整を行う。

⑤ 国際的協力
…非ODAの無償の資金協力による同志国の軍等に対する資機材供与やインフラ整備等を「特定安全保障国際支援事業」として特定する。…

3. 経済財政の在り方について

(1) 防衛力強化と経済財政

国力としての防衛力を強化するためにも、経済力を強化する必要がある。防衛力強化には、先端技術の開発や防衛産業の振興など、我が国の経済力強化につなげられそうな糸口が複数ある。
…有事を想定した総合的な防衛体制の強化には、持続性のある経済力・財政基盤の強化と、それに対する国民の理解が必要である。有事の際に、我が国経済・金酸システムにどのようなリスクが発生するのか、それらのリスクをいかに最小化して、我が国経済・金酸システムを守るのかをあらかじめ検討しておくことが重要になる。

(2) 財源の確保

…財源確保の検討に際しては、まずは厳出改革により財源を捻出していくことを優先的に検討すべきである。透明性の高い議論と目に見える歳出の効率化を行うことにより、はじめて追加的な財源確保についての国民の理解が得られるものであることを忘れてはならない。…
…歴史を振り返れば、戦前、多額の国債が発行され、終戦直後にインフレが生じ、その過程で、国債を保有していた国民の資産が犠牲になったという重い事実があった。第二次大戦後に、安定的な税制の確立を目指し税制改正がなされるなど、国民の理解を得て歳入増の努力が重ねられてきたのは、こうした歴史の教訓があったからだ。
そうした先人の努力の土台の上に立って、国を守る防衛力強化が急務となっているなか、国を守るのは国民全体の課題であり、国民全体の協力が不可欠であることを政治が真正面から説き、負担が偏りすぎないよう幅広い税目による負担が必要なことを明確にして、理解を得る努力を行うべきである。持続的な経済成長実現と財政基盤確保とを同時に達成するという視点に立ち、国民各層の負担能力や現下の経済情勢へ配感しつつ、財源確保の具体的な道筋をつける必要がある。…

おわりに・・・

安全保障①②③④」のシリーズにて、「国力として防衛力を総合的に考える会議」の内容と報告書をご紹介しました。
国防に関係するすべての分野を総合して対策を考えていく必要性に言及していました。
これは、たいへん重要な動きなのではないでしょうか。
それと同時に、「たいへん膨大な推進コスト」が求められることになります。
コスト=予算だけでなく、知識量技術力創造力先見の明構成力つながる力
これまで時代が進む中で、着実な進捗があればもちろんそれなりの検討コストを着実に進めていくレベルで済んだのかもしれません。
ですが、
期待される進捗がこれまで実行されていなかった可能性が大いにあるだろうことをふまえると、
今回の会議はたいへん意義のある時間になったものと推察しています。
(けっして、これまでの政治や当局の取り組みが不十分だったという意味ではありません。
 つまり、いよいよ政治や当局の取り組みに対して、時代が受容するようになってきた。
 というのが筆者の見方に近い表現になります。)

今回の会議以降に進むであろう総合的な体制づくりが始まることへの期待も含めて、
たいへん有意義な機会になったのではないでしょうか。

公開されている内容としては、以上の内容でした。
非公開となっている内容もあるのかもしれません。
具体的な内容をもって十分に検討されていることと推察しています。

こういった検討がはじまったことについて、筆者は心から歓迎しています。
なぜなら、現状維持を、あるいは、現状維持を目的とした(目的としていないにしても目的化していた感のある)制度改革がこれまで進んできたことが否めないからです。
これまでの危うい状態であった過去と現状を、
これから変えるきっかけになりうるのではないでしょうか。

本シリーズでは、「防衛比例の原則(法則)」をお伝えしました。
これは、
防衛力は、相対性を前提とした均衡性と優位性をもつべきである。
という内容でした。
予算はたいへん重要な前提にはなるのですが、その中でも、
防衛比例の法則に立脚した整備や行使の在り方を規定していかなければなりません。
厳しい表現を用いて恐縮ですが、「場当たり的な防衛力整備」だと、
そのツケはいずれ、
 ・いざとなった非常時に払うか、
 ・気づいた時代の国民が払うことになるのです。

日本はいま、国を守るために必要な進化をしようとしています。
(いい意味で ”化ける” のかも知れません。)
着手のタイミングが ”トキすでに遅し” でなければ良いのですが、
それは、今後の周到なプロセスの進め方次第とみています。
当局はたいへん有能な人材で構成されています。
各種理論や原理原則法則など科学的知見のほか、固定観念を排した創造的発想をもとに、どうか進めていただきたいと思っています。
すでにある規制に対する緩和や代替策や抜本的な見直しも必要でしょう。
心から期待したいと思います。よろしくお願いします。

読者のみなさんも、政府はけっして侵略国家を目指しているわけではありませんので、
応援者として、時代の変化に日本の変化が符合していけるよう、
ポジティブな叱咤激励をお願いします。
そうすることで、読者も含めて国民全員の暮らしがこれまでのような安定的な状態を保ちながら、
未来へと進んで行くことに役立つでしょう。
(戦争で迎える将来の暮らしか、はたまた、平和な暮らしか。
 …それを選ぶことができる分岐点が今なのかも知れません。)
知った「今がスタートライン!」です。

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