今回は「安保3文書③」ということで、「防衛力整備計画」をご紹介します。
2022(令和4)年12月16日に閣議決定されました。
安保3文書は
①「国家安全保障戦略」
②「国家防衛戦略」(これまでの「防衛計画の大綱(防衛大綱)のこと」)
③「防衛力整備計画」
の3つのことをいいます。
(出典:国家安全保障戦略について(内閣官房))
目次
Ⅰ 計画の方針
Ⅱ 自衛隊の能力等に関する主要事業
1 スタンド・オフ防衛能力
2 統合防空ミサイル防衛能力
3 無人アセット防衛能力
4 領域横断作戦能力
⑴ 宇宙領域における能力
⑵ サイバー領域における能力
⑶ 電磁波領域における能力
⑷ 陸・海・空の領域における能力
5 指揮統制・情報関連機能
⑴ 指揮統制機能の強化
⑵ 情報収集・分析等機能の強化
⑶ 認知領域を含む情報戦等への対処
6 機動展開能力・国民保護
7 持続性・強靱性
⑴ 弾薬等の整備
⑵ 燃料等の確保
⑶ 防衛装備品の可動数向上
⑷ 施設整備
Ⅲ 自衛隊の体制等
1 統合運用体制
2 陸上自衛隊
⑴ 保有すべき防衛力の水準
⑵ 基幹部隊の見直し等
3 海上自衛隊
⑴ 保有すべき防衛力の水準
⑵ 基幹部隊の見直し等
4 航空自衛隊
⑴ 保有すべき防衛力の水準
⑵ 基幹部隊の見直し等
5 組織定員の最適化
Ⅳ 日米同盟の強化
1 日米防衛協力の強化
2 在日米軍の駐留を支えるための施策の着実な実施
Ⅴ 同志国等との連携
1 共同訓練・演習
2 装備・技術協力
3 能力構築支援
Ⅵ 防衛力を支える要素
1 訓練・演習
2 海上保安庁との連携・協力の強化
3 地域コミュニティーとの連携
4 政策立案機能の強化等
Ⅶ 国民の生命・身体・財産の保護・国際的な安全保障協力への取組
1 大規模災害等への対応
2 海洋安全保障及び既存の国際的なルールに基づく空の利用に関する取組
3 国際平和協力活動等
Ⅷ 早期装備化のための新たな取組
Ⅸ いわば防衛力そのものとしての防衛生産・技術基盤
1 防衛生産基盤の強化
2 防衛技術基盤の強化
⑴ スタンド・オフ防衛能力
⑵ 極超音速滑空兵器(HGV)等対処能力
⑶ ドローン・スウォーム攻撃等対処能力
⑷ 無人アセット
⑸ 次期戦闘機に関する取組
⑹ その他抑止力・対処力の強化
3 防衛装備移転の推進
4 各種措置と制度整備の推進
Ⅹ 防衛力の中核である自衛隊員の能力を発揮するための基盤の強化
1 人的基盤の強化
⑴ 採用の取組強化
⑵ 予備自衛官等の活用
⑶ 人材の有効活用
⑷ 生活・勤務環境の改善等
⑸ 人材の育成
⑹ 処遇の向上及び再就職支援
2 衛生機能の変革
Ⅺ 最適化の取組
1 装備品
2 人員
Ⅻ 整備規模
ⅩⅢ 所要経費等
ⅩⅣ 留意事項
別表1
別表2
別表3
Ⅰ 計画の方針
概説
「国家防衛戦略」(令和4年 12 月 16 日国家安全保障会議決定及び閣議決定)に従い、宇宙・サイバー・電磁波領域を含む全ての領域における能力を有機的に融合し、平時から有事までのあらゆる段階における柔軟かつ戦略的な活動の常時継続的な実施を可能とする多次元統合防衛力を抜本的に強化し、相手の能力と新しい戦い方に着目して、5年後の 2027 年度までに、我が国への侵攻が生起する場合には、我が国が主たる責任をもって対処し、同盟国等の支援を受けつつ、これを阻止・排除できるように防衛力を強化する。おおむね 10 年後までに、防衛力の目標をより確実にするため更なる努力を行い、より早期かつ遠方で侵攻を阻止・排除できるように防衛力を強化する。・・・
1
我が国の防衛上必要な機能・能力として、まず、我が国への侵攻そのものを抑止するために、遠距離から侵攻戦力を阻止・排除できるようにする必要がある。このため、「スタンド・オフ防衛能力」と「統合防空ミサイル防衛能力」を強化する。・・・
このため、「無人アセット防衛能力」、「領域横断作戦能力」、「指揮統制・情報関連機能」を強化する。さらに、迅速かつ粘り強く活動し続けて、相手方の侵攻意図を断念させられるようにする必要がある。・・・
2
装備品の取得に当たっては、能力の高い新たな装備品の導入、既存の装備品の延命、能力向上等を適切に組み合わせることにより、必要十分な質・量の防衛力を確保する。・・・
その際、研究開発を含む装備品のライフサイクルを通じたプロジェクト管理の強化等によるコストの削減に努め、費用対効果の向上を図る。・・・
3
人口減少と少子高齢化が急速に進展し、募集対象者の増加が見込めない状況においても、自衛隊の精強性を確保し、防衛力の中核をなす自衛隊員の人材確保と能力・士気の向上を図る観点から、採用の取組強化、予備自衛官等の活用、女性の活躍推進、自衛官の定年年齢引上げ、再任用自衛官を含む多様かつ優秀な人材の有効な活用、生活・勤務環境の改善、人材の育成、処遇の向上、再就職支援等の人的基盤の強化に関する各種施策を総合的に推進する。・・・
4
日米共同の統合的な抑止力を一層強化するため、宇宙・サイバー・電磁波を含む領域横断作戦に係る協力及び相互運用性の向上等を推進するとともに、あらゆる段階における日米共同での実効的な対処力を支える基盤を強化するため、日米間の情報共有を促進するための情報保全及びサイバーセキュリティに係る取組並びに装備・技術協力を強化する。また、在日米軍の駐留を支えるための施策を着実に実施する。・・・
5
防衛力の抜本的強化に当たっては、スクラップ・アンド・ビルドを徹底して、組織定員と装備の最適化を実施するとともに、効率的な調達等を進めて大幅なコスト縮減を実現してきたこれまでの努力を更に強化していく。あわせて、人口減少と少子高齢化を踏まえ、無人化・省人化・最適化を徹底していく。・・・
Ⅱ 自衛隊の能力等に関する主要事業
1 スタンド・オフ防衛能力
我が国に侵攻してくる艦艇や上陸部隊等に対して、脅威圏外から対処する能力を強化するため、12 式地対艦誘導弾能力向上型(地上発射型・艦艇発射型・航空機発射型)、島嶼防衛用高速滑空弾及び極超音速誘導弾の開発・試作を実施・継続する。・・・
2 統合防空ミサイル防衛能力
極超音速滑空兵器(HGV)等の探知・追尾能力を強化するため、固定式警戒管制レーダー(FPS)等の整備及び能力向上、次期警戒管制レーダーの換装・整備を図る。また、地対空誘導弾ペトリオット・システムを改修し、新型レーダー(LTAMDS)を導入することで、能力向上型迎撃ミサイル(PAC-3MSE)による極超音速滑空兵器(HGV)等への対処能力を向上させる。
・・・
なお、我が国に対する武力攻撃が発生し、その手段として弾道ミサイル等による攻撃が行われた場合、武力の行使の三要件に基づき、そのような攻撃を防ぐのにやむを得ない必要最小限度の自衛の措置として、相手の領域において、我が国が有効な反撃を加えることを可能とする、スタンド・オフ防衛能力等を活用した自衛隊の能力を反撃能力として用いる。この反撃能力の運用は、統合運用を前提とした一元的な指揮統制の下で行う。
3 無人アセット防衛能力
人的損耗を局限しつつ任務を遂行するため、既存の装備体系・人員配置を見直しつつ、各種無人アセットを早期に整備する。その整備に当たっては、安全性の確保と効果的な任務遂行の両立を図るものとする。
4 領域横断作戦能力
⑴ 宇宙領域における能力
スタンド・オフ・ミサイルの運用を始めとする領域横断作戦能力を向上させるため、宇宙領域を活用した情報収集、通信等の各種能力を一層向上させる。具体的には、米国との連携を強化するとともに、民間衛星の利用等を始めとする各種取組によって補完しつつ、目標の探知・追尾能力の獲得を目的とした衛星コンステレーションを構築する。・・・
さらに、我が国の衛星を含む宇宙システムの抗たん性を強化するため、準天頂衛星を含む複数の測位信号の受信や民間衛星等の利用を推進しつつ、衛星通信の抗たん性技術の開発実証に着手する。・・・
⑵ サイバー領域における能力
政府全体において、サイバー安全保障分野の政策が一元的に総合調整されることを踏まえ、防衛省・自衛隊においては、自らのサイバーセキュリティのレベルを高めつつ、関係省庁、重要インフラ事業者及び防衛産業との連携強化に資する取組を推進することとする。
サイバー攻撃を受けている状況下において、指揮統制能力及び優先度の高い装備品システムを保全し、自衛隊の任務遂行を保証できる態勢を確立するとともに、防衛産業のサイバー防衛を下支えできる態勢を構築する。・・・
これらの取組を行う組織全体としての能力を強化するため、2027 年度を目途に、自衛隊サイバー防衛隊等のサイバー関連部隊を約 4,000 人に拡充し、さらに、システム調達や維持運営等のサイバー関連業務に従事する隊員に対する教育を実施する。これにより、2027 年度を目途に、サイバー関連部隊の要員と合わせて防衛省・自衛隊のサイバー要員を約2万人体制とし、将来的には、更なる体制拡充を目指す。
⑶ 電磁波領域における能力
自衛隊の通信妨害やレーダー妨害能力の強化と併せて、電磁波の探知・識別能力の強化や電磁波を用いた欺まんの手段を獲得するなど電子戦能力を向上させるとともに、レーザー等を活用した小型無人機(UAV)への対処等の電磁波の利用方法を拡大する。また、自衛隊の使用する電磁波の利用状況を適切に管理・調整する機能を強化する。
⑷ 陸・海・空の領域における能力
各自衛隊において、装備品等の取得及び能力向上等を加速し、領域横断作戦の基本となる陸・海・空の領域の能力を強化する。
5 指揮統制・情報関連機能
⑴ 指揮統制機能の強化
迅速・確実な指揮統制を行うため、抗たん性のある通信、システム・ネットワーク及びデータ基盤を構築し、スタンド・オフ防衛能力及び統合防空ミサイル防衛能力を始めとする各種能力を統合的に運用するため、リアルタイムに指揮統制を行う態勢を概成するとともに、各自衛隊の一元的な指揮を可能とする指揮統制能力に関する検討を進め、必要な措置を講じる。
このため、領域横断作戦に資する情報共有機能の強化を図るため、共通基盤としてのクラウドの整備、自衛隊の指揮統制機能及び関係省庁等との連接機能を強化する中央指揮システムの換装を行う。・・・
⑵ 情報収集・分析等機能の強化
我が国周辺における軍事動向等を常時継続的に情報収集し、その処理、分析、共有等を行う能力及び態勢を抜本的に強化することにより、隙のない情報収集・分析体制を構築するとともに、政策判断や部隊運用に資する情報を迅速に提供することができる態勢を確立する。加えて、米軍との情報共有態勢及び無人アセットに係る統合運用の在り方について検討し、必要な措置を講じる。
⑶ 認知領域を含む情報戦等への対処
国際社会において、紛争が生起していない段階から、偽情報や戦略的な情報発信等を用いて他国の世論・意思決定に影響を及ぼすとともに、自らの意思決定への影響を局限することで、自らに有利な安全保障環境の構築を企図する情報戦に重点が置かれている状況を踏まえ、我が国として情報戦に確実に対処できる体制・態勢を構築する。
6 機動展開能力・国民保護
島嶼部への侵攻阻止に必要な部隊等を南西地域に迅速かつ確実に輸送するため、輸送船舶(中型級船舶(LSV)、小型級船舶(LCU)及び機動舟艇)、輸送機(C-2)、空中給油・輸送機(KC-46A等)、輸送・多用途ヘリコプター(CH-47J/JA、UH-2)等の各種輸送アセットの取得を推進する。また、海上輸送力を補完するため、車両及びコンテナの大量輸送に特化した民間資金等活用事業(PFI)船舶を確保する。・・・
また、自衛隊の機動展開や国民保護の実効性を高めるために、平素から各種アセット等の運用を適切に行えるよう、政府全体として、特に南西地域における空港・港湾等を整備・強化する施策に取り組むとともに、既存の空港・港湾等を運用基盤として使用するために必要な措置を講じる。・・・
7 持続性・強靱性
⑴ 弾薬等の整備
12 式地対艦誘導弾能力向上型等のスタンド・オフ・ミサイル、弾道ミサイル防衛用迎撃ミサイル(SM-3ブロックⅡA)、能力向上型迎撃ミサイル(PAC-3MSE)、長距離艦対空ミサイル(SM-6)、03 式中距離地対空誘導弾(改善型)能力向上型等の各種弾薬について、必要な数量を早期に整備する。・・・弾薬の維持整備体制の強化、弾薬庫の増設等・・・
⑵ 燃料等の確保
自衛隊が行う作戦に必要な燃料所要量を早期かつ安定的に確保するため、燃料タンクの新規整備及び民間燃料タンクの借り上げを実施する。加えて、糧食・被服の必要数量を確保する。
⑶ 防衛装備品の可動数向上
防衛装備品の高度化・複雑化に対応しつつ、リードタイムを考慮した部品費と修理費の確保により、部品不足による非可動を解消し、2027 年度までに装備品の可動数を最大化する。
⑷ 施設整備
スタンド・オフ・ミサイルを始めとした各種弾薬の取得に連動して、
必要となる火薬庫を整備する。また、火薬庫の確保に当たっては、各自衛隊の効率的な協同運用、米軍の火薬庫の共同使用、弾薬の抗たん性の確保の観点から島嶼部への分散配置を追求、促進する。
主要な装備品、司令部等を防護し、粘り強く戦う態勢を確保するため、主要司令部等の地下化・構造強化・電磁パルス(EMP)攻撃対策、戦闘機用の分散パッド、アラート格納庫のえん体化、ライフライン多重化等を実施する。あわせて、省人化を図りつつ、基地警備機能を強化する。・・・
Ⅲ 自衛隊の体制等
1 統合運用体制
⑴
各自衛隊の統合運用の実効性の強化に向けて、平素から有事まであらゆる段階においてシームレスに領域横断作戦を実現できる体制を構築するため、常設の統合司令部を創設する。この際、我が国を取り巻く安全保障環境が急速に厳しさを増していることを踏まえ、速やかに当該司令部を創設するとともに、共同の部隊を含め、各自衛隊の体制の在り方を検討する。
⑵
サイバー領域における更なる能力向上のため、防衛省・自衛隊のシステム・ネットワークを常時継続的に監視するとともに、我が国へのサイバー攻撃に際して当該攻撃に用いられる相手方によるサイバー空間の利用を妨げる能力等、サイバー防衛能力を抜本的に強化し得るよう、共同の部隊としてサイバー防衛部隊を保持する。
⑶
また、南西地域への機動展開能力を向上させるため、共同の部隊として海上輸送部隊を新編する。
2 陸上自衛隊
⑴ 保有すべき防衛力の水準
ア
作戦基本部隊に関して、南西地域における防衛体制を強化するため、第 15 旅団を師団に改編するとともに、各種事態に即応し、実効的かつ機動的に抑止及び対処し得るよう、その他の8個師団、5個旅団、1個機甲師団については機動運用を基本とする。また、専門的機能を備えた空挺部隊、水陸機動部隊、空中機動部隊を機動的に運用する。・・・
イ
スタンド・オフ防衛能力を強化するため、12 式地対艦誘導弾能力向上型を装備した地対艦ミサイル部隊を保持するとともに、島嶼防衛用高速滑空弾を装備した部隊、島嶼防衛用高速滑空弾(能力向上型)及
び極超音速誘導弾を装備した長射程誘導弾部隊を新編する。
ウ
多様な経空脅威から重要拠点等を防護するため、03 式中距離地対空誘導弾(改善型)能力向上型を装備した高射特科部隊を保持する。
⑵ 基幹部隊の見直し等
ア
領域横断作戦能力を強化するため、対空電子戦部隊を新編するとともに、島嶼部の電子戦部隊を強化する。さらに、情報収集、攻撃機能等を保持した多用途無人航空機部隊を新編する。また、サイバー戦や電子戦との連携により、認知領域を含む情報戦において優位を確保するための部隊を新編する。
イ
持続性・強靱性を強化するため、南西地域に補給処支処を新編する・・・
ウ
スタンド・オフ防衛能力、サイバー領域等における能力の強化に必要な増員所要を確保するため、即応予備自衛官を主体とする部隊を廃止し、同部隊所属の常備自衛官を増員所要に充てる。
また、即応予備自衛官については、補充要員として管理する。
3 海上自衛隊
⑴ 保有すべき防衛力の水準
ア
平素からの周辺海域における常時継続的かつ重層的な情報収集・警戒監視態勢の保持に資するとともに、安定した経済活動の基盤となる海上交通の安全確保、各国との安全保障協力等のための海外展開の実施等、増加する活動量に対応し得るよう、哨戒艦等の導入により増強された水上艦艇部隊を保持する。
イ
平素からの周辺海域における常時継続的かつ重層的な情報収集・警戒監視態勢の保持に資するとともに、有事においては、領域横断作戦の中でも重要な水中優勢を獲得・維持し得るよう、強化された潜水艦部隊を保持する。
ウ
平素からの周辺海域における常時継続的かつ重層的な情報収集・警戒監視態勢の保持に資するとともに、有事においては、平素からの活動に加え、偵察、ターゲティング及び対潜水艦戦を始めとする各種作戦を有効かつ持続的に遂行し得るよう、強化された固定翼哨戒機部隊を保持する。
⑵ 基幹部隊の見直し等
ア
認知領域を含む情報戦への対応能力を強化し、迅速な意思決定が可能な態勢を整備するため、所要の研究開発を実施するとともに、情報、サイバー、通信、気象海洋等といった機能・能力を有する部隊を整
理・集約し、総合的に情報戦を遂行するため、体制の在り方を検討した上で海上自衛隊情報戦基幹部隊を新編する。
イ
重層的な警戒監視態勢を構築するとともに水中及び海上優勢の確保や人的資源の損耗を低減させるため、各種無人アセット(滞空型無人機(UAV)、既存艦艇の活用を含む無人水上航走体(USV)、無人水中航走体(UUV)等)を導入するとともに、無人機部隊を新編
する。
ウ
統合運用体制の下、高い迅速性と活動量を求められる部隊運用を持続的に遂行可能な体制を構築するため、基幹部隊の体制の見直し等に着手し、所要の改編等を実施する。
エ
統合任務部隊を運用し得る自衛艦隊等の司令部の継戦能力を向上させるとともに、部隊運用の持続性・強靱性を確保するためのロジスティクスに係る態勢の見直し等に着手し、必要な措置を講じる。オ 護衛艦(DDG・DD・FFM)等に 12 式地対艦誘導弾能力向上型等のスタンド・オフ・ミサイルを搭載する。
カ
上記のオに加え、水中優勢獲得のための能力強化として、潜水艦(SS)に垂直ミサイル発射システム(VLS)を搭載し、スタンド・オフ・ミサイルを搭載可能とする垂直発射型ミサイル搭載潜水艦の取得を目指し開発する。
キ
就役から相当年数が経過し、拡張性等に限界がある艦艇等の早期除籍等を図り、省人化した護衛艦(FFM)等を早期に増勢する。加えて、分散機動運用等の多様な作戦を可能にするため、防空中枢艦を増
勢するとともに、護衛艦(DDG・DD・FFM)の防空能力、電子戦能力等の能力を向上させる。・・・
ク
能力向上した固定翼哨戒機(P-1)及び哨戒ヘリコプター(SH-60K(能力向上型))の整備を進めるとともに、固定翼哨戒機の電子戦、対艦攻撃等の能力を向上させる。
4 航空自衛隊
⑴ 保有すべき防衛力の水準
ア
太平洋側の広大な空域を含む我が国周辺空域を常時継続的に警戒監視するとともに、我が国に飛来する弾道ミサイルに加え、極超音速滑空兵器(HGV)等の新たな経空脅威を探知・追尾し得る固定式警戒
管制レーダーを備えた警戒管制部隊のほか、いわゆるグレーゾーン事態等の情勢緊迫時において、より広域で長期間にわたり我が国周辺の空域における警戒監視・管制を有効に行うため、増強された警戒航空部隊から構成される航空警戒管制部隊を保持する。
イ
戦闘機とその支援機能が一体となって我が国の防空等を総合的な態勢で行うため、質・量ともに大幅に洗練・増強された戦闘機部隊を保持する。また、戦闘機部隊等が我が国周辺空域等で高烈度化する各種航空作戦において粘り強く戦闘を継続するため、増強された空中給油・輸送部隊及び航空救難部隊を保持する。
ウ
部隊等の機動展開、国際平和協力活動等を効果的に実施するため、増強された航空輸送部隊を保持する。エ 重要地域の防空を実施する上で陸上自衛隊の地対空誘導弾部隊と連携するとともに、弾道ミサイル攻撃から我が国を多層的に防護する際に終末段階で対処する機能を備え、多様化・複雑化する経空脅威に対応するため、増強された高射部隊を保持する。
オ
宇宙空間の安定的利用を確保するため、宇宙領域把握(SDA)能力を増強した宇宙領域専門部隊を保持する。
カ
我が国から比較的離れた地域での情報収集や事態が緊迫した際の空中での常時継続的な監視を実施するため、無人機部隊を保持する。
⑵ 基幹部隊の見直し等
ア
我が国の航空戦力の質・量を更に洗練・強化するため、近代化改修に適さない戦闘機(F-15)について、戦闘機(F-35A及びF-35B)への代替ペースを加速させる。
また、近代化改修を行った戦闘機(F-15)について、電子戦能力の向上、スタンド・オフ・ミサイル
の搭載、搭載ミサイル数の増加等の能力向上を引き続き行う。
さらに、戦闘機(F-2)については、スタンド・オフ防衛能力の強化の観点から、12 式地対艦誘導弾能力向上型の搭載能力等を付与するため、計2個飛行隊分の能力向上事業を推進する。加えて、航空戦力の量的強化を更に進めるため、2027 年度までに必要な検討を実施し、必要な措置を講じる。この際、無人機(UAV)の活用可能性について調査を行う。
イ
次期戦闘機について、戦闘機(F-2)の退役が見込まれる 2035 年度までに、将来にわたって航空優勢を確保・維持することが可能な戦闘機を配備できるよう、改修の自由や同盟国との相互運用性を確保しつつ、英国及びイタリアと次期戦闘機の共同開発を推進する。この際、戦闘機そのものに加え、無人機(UAV)等を含むシステムについても、国際協力を視野に開発に取り組む。
ウ
さらに、戦闘機(F-35)や次期戦闘機といった最先端の戦闘機のパイロットの効率的な育成のため、地上教育及び練習機による飛行訓練を教育システムとして一体化することも含め、あるべき教育体系に
ついて検討の上、必要な措置を講じる。
エ
粘り強く戦闘を継続するため、各所に機動分散運用を実施し得るよう、展開基盤の迅速な整備等を行う体制を構築する。また、航空戦力を我が国への侵攻正面に柔軟に集中・指向し得るよう、航空戦力の運
用の在り方について必要な検討を行う。
オ
高烈度な航空作戦にも対応し、また、粘り強く戦闘を継続する観点から、空中給油機能を強化するため、空中給油・輸送機(KC-46A等)を増勢するとともに、救難機(UH-60J)を更新する。また、太平洋側の広大な空域を含む我が国周辺空域における防空態勢を強化するため、太平洋側の島嶼部等への移動式警戒管制レーダー等の整備を推進するとともに、早期警戒機(E-2D)を増勢する。陸上部隊等の迅速な機動展開等を実施するため、輸送機(C-2)を整備する。
カ
スタンド・オフ・ミサイルの運用能力を向上させるため、相手の脅威圏内において目標情報を継続的に収集し得る無人機(UAV)を導入するほか、部隊の任務遂行に必要な情報機能の強化のため、空自作
戦情報基幹部隊を新編する。
キ
多様化・複雑化する経空脅威に対応するため、地対空誘導弾ペトリオット・システム等の能力向上を引き続き進める。
ク
宇宙作戦能力を強化するため、宇宙領域把握(SDA)態勢の整備を着実に推進し、将官を指揮官とする宇宙領域専門部隊を新編するとともに、航空自衛隊を航空宇宙自衛隊とする。
5 組織定員の最適化
2027 年度末の常備自衛官定数については、2022 年度末の水準を目途とし、陸上自衛隊、海上自衛隊及び航空自衛隊それぞれの常備自衛官定数は組織定員の最適化を図るため、適宜見直しを実施することとする。また、統合運用体制の強化に必要な定数を各自衛隊から振り替えるとともに、海上自衛隊及び航空自衛隊の増員所要に対応するため、必要な定数を陸上自衛隊から振り替える。このため、おおむね 2,000 名の陸上自衛隊の常備自衛官定数を共同の部隊、海上自衛隊及び航空自衛隊にそれぞれ振り替える。
Ⅳ 日米同盟の強化
1 日米防衛協力の強化
日米共同の統合的な抑止力を一層強化するため、平素からの連携を図る態勢を構築するとともに、宇宙・サイバー・電磁波を含む領域横断作戦に係る協力、相互運用性を高めるための取組、我が国による反撃能力の行使に係る協力、防空、対水上戦・潜水艦戦、機雷戦、水陸両用作戦、空挺作戦、情報収集・警戒監視・偵察・ターゲティング(ISRT)、アセットや施設の防護、後方支援等における連携を推進する。また、より高度かつ実践的な演習・訓練を通じて同盟の即応性や相互運用性を始めとする対処力の向上を図る。
2 在日米軍の駐留を支えるための施策の着実な実施
在日米軍の安定的なプレゼンスを支えるだけでなく、日米同盟の抑止力・対処力を強化していく観点から、「同盟強靱化予算」を始めとする在日米軍の駐留に関連する経費を安定的に確保する。
Ⅴ 同志国等との連携
1 共同訓練・演習
防衛協力・交流としての意義も十分に踏まえつつ、ロジスティクス協力を含む二国間・多国間の共同訓練・演習を積極的に推進する。これにより、望ましい安全保障環境の創出に向けた我が国の意思と能力を示すとともに、各国との相互運用性の向上や他国との関係強化等を図る。
2 装備・技術協力
装備品に関する協力は、構想から退役まで半世紀以上に及ぶ取組であることを踏まえ、防衛装備の海外移転や国際共同開発を含む、装備・技術協力の取組の強化を通じ、相手国軍隊の能力向上や相手国との中長期にわたる関係の維持・強化を図る。特に、防衛協力・交流、訓練・演習、能力構築支援等の他の取組とも組み合わせることで、これを効果的に進める。
3 能力構築支援
インド太平洋地域の各国軍隊等に対し、能力構築支援の取組を一層強化し、我が国にとって望ましい安全保障環境の創出を目指すとともに、支援対象国との関係強化も推進する。
Ⅵ 防衛力を支える要素
1 訓練・演習
各種事態発生時に効果的に対処し、抑止力の実効性を高めるため、自衛隊の統合訓練・演習や日米の共同訓練・演習に加え、オーストラリア、インド、欧州・東南アジア諸国等との二国間、多国間の訓練・演習についても計画的かつ目に見える形で実施し、力による一方的な現状変更やその試みは認められないとの意思と能力を示していく。・・・
2 海上保安庁との連携・協力の強化
あらゆる事態に適切に対応するため、海上保安庁との連携・協力を一層強化する。・・・
3 地域コミュニティーとの連携
自衛隊及び在日米軍が、平素からシームレスかつ効果的に活動できるよう、自衛隊施設及び米軍施設周辺の地方公共団体や地元住民の理解及び協力をこれまで以上に獲得していく。・・・
4 政策立案機能の強化等
自衛隊が能力を十分に発揮し、厳しさ、複雑さ、スピード感を増す戦略環境に対応するためには、宇宙・サイバー・電磁波領域を含め、戦略的・機動的な防衛政策の企画立案が必要とされており、その機能を抜本的に強化していく。この際、有識者から政策的な助言を得るための会議体を設置する。また、自衛隊の将来の「戦い方」とそのために必要な先端技術の活用・育成・装備化について、関係省庁や民間の研究機関、防衛産業を中核とした企業との連携を強化しつつ、戦略的な観点から総合的に検討・推進する態勢を強化する。さらに、こうした取組を推進し、政策の企画立案を支援するため、防衛研究所を中心とする防衛省・自衛隊の研究体制を見直し・強化し、知的基盤としての機能を強化する。
Ⅶ 国民の生命・身体・財産の保護・国際的な安全保障協力への取組
1 大規模災害等への対応
南海トラフ巨大地震等の大規模自然災害や原子力災害を始めとする特殊災害といった各種の災害に際しては、統合運用を基本としつつ、十分な規模の部隊を迅速に輸送・展開して初動対応に万全を期すとともに、無人機(UAV)(狭域用)汎用型、ヘリコプター衛星通信システム、人命救助システム及び非常用電源の整備を始めとする対処態勢を強化するための措置を講じる。・・・
2 海洋安全保障及び既存の国際的なルールに基づく空の利用に関する取組
開かれ安定した海洋及び既存の国際的なルールに基づく空の利用は、海洋国家である我が国の平和と繁栄の基礎という認識の下、自由で開かれたインド太平洋というビジョンも踏まえ、海洋安全保障及び既存の国際的なルールに基づく空の利用について認識を共有する諸外国との共同訓練・演習、装備・技術協力、能力構築支援、情報共有等の様々な機会を捉えた艦艇や航空機の寄港・寄航等の取組を推進する。・・・
3 国際平和協力活動等
国際平和協力活動等については、平和安全法制も踏まえ、派遣の意義、派遣先国の情勢、我が国との政治的・経済的関係等を総合的に勘案しながら、引き続き推進する。・・・
Ⅷ 早期装備化のための新たな取組
スタンド・オフ防衛能力、海洋アセット、ソフトキル、無人アセット防衛能力、人工知能(AI)、次世代情報通信、宇宙、デジタルトランスフォーメーション(DX)、高出力エネルギー、情報戦といった分野のほか、自衛隊の現在及び将来の戦い方に直結し得る分野のうち、特に政策的に緊急性・
重要性の高いものについて、防衛関連企業等から提案を受けて、又は、スタートアップ企業や国内の研究機関等の技術を活用することにより、民生先端技術の取り込みも図りながら、着実に早期装備化を実現する。
そのため、早期装備化の障害となり得る防衛省内の業務上の手続、契約方式等を柔軟に見直すほか、運用実証・評価・改善等の集中的な反復を通じて、5年以内に装備化し、おおむね 10 年以内に本格運用するための枠組みを新設する。
Ⅸ いわば防衛力そのものとしての防衛生産・技術基盤
1 防衛生産基盤の強化
・・・各企業の防衛事業に対する品質管理、コスト管理、納期管理等を評価して企業のコストや利益を適正に算定する方式を導入し、防衛産業の魅力化を図る。また、企画提案方式等、企業の予見可能性を図りつつ、国内基盤を維持・強化する観点を一層重視した装備品の取得方式を採用していく。有償援助(FMS)調達する装備品についても、国内企業の参画を促進するための取組を行うとともに、合理化・効率化に努める。・・・
2 防衛技術基盤の強化
将来の戦い方に必要な研究開発事業を特定し、装備品の取得までの全体像を整理することにより、研究開発プロセスにおける各種取組による早期装備化を実現する。将来の戦い方を実現するための装備品を統合運用の観点から体系的に整理した統合装備体系も踏まえ、将来の戦い方に直結する以下⑴から⑹までの装備・技術分野に集中的に投資を行うとともに、従来装備品の能力向上等も含めた研究開発プロセスの効率化や新しい手法の導入により、研究開発に要する期間を短縮し、早期装備化につなげていく。・・・
以上を踏まえ、政策部門、運用部門及び技術部門が一体となった体制で、将来の戦い方の検討と先端技術の活用に係る施策を推進する。・・・
⑴ スタンド・オフ防衛能力
ア
12 式地対艦誘導弾能力向上型(地上発射型・艦艇発射型・航空機発射型)について開発を継続し、地上発射型については 2025 年度まで、艦艇発射型については 2026 年度まで、航空機発射型については 2028年度までの開発完了を目指す。
イ
高い隠密性を有して行動できる潜水艦から発射可能な潜水艦発射型スタンド・オフ防衛能力の構築を進める。
ウ
高高度・高速滑空飛しょうし、地上目標に命中する島嶼防衛用高速滑空弾の研究を継続し、早期装備型について 2025 年度までの事業完了を目指すとともに、本土等のより遠方から、島嶼部に侵攻する相手部隊等を撃破するための島嶼防衛用高速滑空弾(能力向上型)を開発する。
エ
極超音速の速度域で飛行することにより迎撃を困難にする極超音速誘導弾について、研究を推進し 2031 年度までの事業完了を目指すとともに、派生型の開発についても検討する。
オ
長射程化、低レーダー反射断面積(RCS)化、高機動化を図りつつ、モジュール化による多機能性を有した島嶼防衛用新対艦誘導弾を研究する。
⑵ 極超音速滑空兵器(HGV)等対処能力
ア
巡航ミサイル等に加えて、極超音速滑空兵器(HGV)や弾道ミサイル対処を可能とする 03 式中距離地対空誘導弾(改善型)能力向上型を開発する。
イ
極超音速で高高度を高い機動性を有しながら飛しょうする極超音速滑空兵器(HGV)に対処する、極超音速滑空兵器(HGV)対処用誘導弾システムの調査及び研究を実施する。
⑶ ドローン・スウォーム攻撃等対処能力
ア
小型無人機(UAV)等の経空脅威を迎撃する高出力レーザーの各種研究を継続する。
イ
高出力マイクロ波(HPM)を照射して小型無人機(UAV)等を無力化する技術の研究を継続する。
⑷ 無人アセット
ア
管制型試験無人水中航走体(UUV)から被管制用無人水中航走体(UUV)を管制する技術等の研究を実施し、水中領域における作戦機能を強化する。
イ
有人車両から複数の無人戦闘車両(UGV)をコントロールする運用支援技術や自律的な走行技術等に関する研究を実施する。
ウ
水上艦艇の更なる省人化・無人化を実現するため、無人水上航走体(USV)に関する技術等の研究を継続する。
⑸ 次期戦闘機に関する取組
ア
次期戦闘機の英国及びイタリアとの共同開発を着実に推進し、2035年度までの開発完了を目指す。次期戦闘機等の有人機と連携する戦闘支援無人機(UAV)についても研究開発を推進する。
イ
これらの研究開発に際しては、我が国主導を実現すべく、数に勝る敵に有効に対処できる能力を保持することを前提に、将来にわたって適時適切な能力向上が可能となる改修の自由や高い即応性等を実現す
る国内生産・技術基盤を確保するものとする。
⑹ その他抑止力・対処力の強化
ア
各種経空脅威への対処能力向上のための将来レールガンに関する研究を継続する。
イ
脅威となるレーダー等の電波器材に誤情報を付与して複数の脅威が存在すると誤認させる欺まん装置技術に関する研究を実施する。
ウ
複雑かつ高速に推移する戦闘様相に対して、人工知能(AI)により行動方針を分析し、指揮官の意思決定を支援する技術を装備品に反映するための研究を行う。
エ
情報収集能力等を向上した多用機(EP-3)の後継機となる次期電子情報収集機について必要な検討を実施の上、研究開発を進める。
オ
警戒監視中の艦艇等から迅速に機雷を敷設するため、小型かつ遠隔から管制が可能な新型小型機雷を開発する。
カ
極超音速誘導弾の要素研究の成果を活用した極超音速地対空誘導弾の研究開発に着手する。
3 防衛装備移転の推進
防衛装備移転については、同盟国・同志国との実効的な連携を構築し、力による一方的な現状変更や我が国への侵攻を抑止するための外交・防衛政策の戦略的な手段となるのみならず、防衛装備品の販路拡大を通じた、防衛産業の成長性の確保にも効果的である。このため、政府が主導し、・・・
4 各種措置と制度整備の推進
以上のような政策を実施するため、必要な予算措置等、これに必要な法整備、及び政府系金融機関等の活用による政策性の高い事業への資金供給を行うとともに、その執行状況を不断に検証し、必要に応じて制度を見直していく。
Ⅹ 防衛力の中核である自衛隊員の能力を発揮するための基盤の強化
1 人的基盤の強化
・・・研究開発事業に係る職員を確保し、技能等の能力を向上させる。この際、特にサイバー領域等
を含む分野については、教育体制の強化や民間人材の活用を図る。
このため、育児、出産及び介護といったライフイベントを迎える中でも、全ての自衛隊員が能力を発揮できる環境を整備するとともに、自衛隊員へのリスキリングを含め、採用から始まるライフサイクル全般に着目した施策を総合的に講じる。
⑴ 採用の取組強化
少子化による募集対象人口の減少という厳しい採用環境の中で優秀な人材を安定的に確保するため、採用広報のデジタル化・オンライン化等を含めた多様な募集施策を推進するとともに、地方協力本部の体制強化や地方公共団体及び関係機関等との連携を強化する。
また、任期制自衛官の魅力を向上する観点から、自衛官候補生の在り方の見直し、任期満了後の再就職、大学への進学等に対する支援の充実を図る。
さらに、少子高学歴化を踏まえ、非任期制自衛官の採用の拡大や大卒者等を含む採用層の拡大に向けた施策を推進する。この際、貸費学生制度の拡充を通じ、有為な人材の早期確保を図る。
さらに、サイバー領域等で活躍が見込まれる専門的な知識・技能を有する人材を取り込むため、柔軟な採用・登用が可能となる新たな自衛官制度を構築するほか、自衛隊を退職した者を含む民間の人材を活用するために必要な施策を講じる。
⑵ 予備自衛官等の活用
作戦環境の変化や自衛隊の任務が多様化する中で、予備自衛官等が常備自衛官を効果的に補完するため、充足率の向上のみならず、予備自衛官等に係る制度を抜本的に見直し、体制強化を図る。このため、即応予備自衛官及び予備自衛官が果たすべき役割を再整理した上で、自衛官未経験者からの採用の拡大や、年齢制限、訓練期間等について現行制度の見直しを行う。
⑶ 人材の有効活用
女性隊員の採用や、意欲・能力・適性に応じた登用を引き続き積極的に行うとともに、女性の活躍を支える教育基盤の整備や、女性自衛官の増勢を見据えた隊舎・艦艇等における女性用区画の計画的な整備を行う。
また、知識・技能・経験等を豊富に備えた人材の一層の活用を図るため、精強性にも配慮しつつ、自衛官の定年年齢の引上げを行うとともに、再任用自衛官が従事できる業務を大幅に拡大し、再任用による退職自衛官の活用を強力に推進する。
中途退職者の抑制は急務であり、効果的な施策の検討の資とするため、中途退職に関する自衛隊員の意識等の調査を実施する。任務や勤務環境の特殊性も踏まえ、必要となる施策については不断に検討し、講じていく。
⑷ 生活・勤務環境の改善等
・・・ハラスメント防止に係る有識者会議における検討結果等を踏まえた新たな対策を確立
し、全ての自衛隊員に徹底させる。さらに、時代に即した対策が講じられるよう、その見直しを継続的に行い、ハラスメントを一切許容しない組織環境とする。
家庭との両立を支援する制度の整備・普及を始めとするワークライフバランス確保の取組を進めるとともに、隊員のニーズを踏まえた託児施設の整備、緊急登庁時におけるこどもの一時預かり等の施策を推進する。また、地方公共団体や関係団体等と連携した家族支援施策を拡充する。
⑸ 人材の育成
より高度な領域横断作戦における統合運用に資する人材確保のため、統合幕僚学校や各自衛隊の幹部学校等における統合教育を強化する。
⑹ 処遇の向上及び再就職支援
自衛隊員の超過勤務の実態調査等を通じ、任務や勤務環境の特殊性を踏まえた給与・手当とし、特に艦艇やレーダーサイト等で厳しい任務に従事する隊員を引き続き適正に処遇するとともに、反撃能力を始めとする新たな任務の増加を踏まえた隊員の処遇の向上を図る。
2 衛生機能の変革
・・・応急的な措置を講じる第一線、戦傷者を後送先病院まで輸送する各自衛隊の各種アセットを有効に利用した後送間救護、最終後送先となる病院それぞれの機能を強化していく必要がある。
まず、第一線救護については、実際に第一線で活動を行う衛生隊員に准看護師及び救急救命士の資格取得を推進するとともに、これらの養成基盤の更なる強化を図る。
また、第一線救護に引き続いて実施する緊急外科手術に関して、新たに統合の教育課程を新設し、計画的な要員の育成を図る。
さらに、艦艇での洋上外科手術についても上記課程修了者に必要な教育訓練を実施し洋上医療の強化を図る。
航空後送間救護については、・・・
南西地域における衛生機能の強化に当たっては、・・・
戦傷医療における死亡の多くは爆傷、銃創等による失血死であり、これを防ぐためには輸血に使用する血液製剤の確保が極めて重要であることから、自衛隊において血液製剤を自律的に確保・備蓄する態勢の構築について検討する。
また、血液製剤と並び戦傷医療において重要な医療用酸素の確保のため、酸素濃縮装置等についても整備を行う。
臨床の現場となる防衛医科大学校病院については、医官及び看護官への高度な医療教育や自衛隊の衛生隊員の技能向上を図るほか、戦傷者の受け入れに対応するため、運営の抜本的改革を図るとともに、病院の建替え等の機会を捉え、機能強化を図る。また、それを補完するものとして、医官及び看護官の部外研修についてもその確保に努める。
Ⅺ 最適化の取組
1 装備品
・・・更なる装備品の効果的・効率的な取得の取組として、長期契約の適用拡大による装備品の計画的・安定的な取得を通じてコスト低減を図り、企業の予見可能性を向上させ効率的な生産を促すことに加え、他国を含む装備品の需給状況を考慮した調達、コスト上昇の要因となる自衛隊独自仕様の絞り込み等により、装備品のライフサイクルを通じたプロジェクト管理の実効性を高める。
2 人員
統合運用体制強化に必要な定数を各自衛隊から振り替えるとともに、海上自衛隊及び航空自衛隊の増員所要に対応するために必要な定数を陸上自衛隊から振り替える。このため、陸上自衛隊の常備自衛官定数のおおむね2,000 名を共同の部隊、海上自衛隊及び航空自衛隊に振り替え、自衛隊の組織定員の最適化を図る。
また、自衛官の定数の総計を増やさず、既存部隊の見直しや民間委託等の部外力の活用を進める。
Ⅻ 整備規模
この計画の下で抜本的に強化される防衛力の5年後とおおむね 10 年後の達成目標は、別表1のとおりとする。
前記Ⅱ及びⅢに示す装備品のうち、主要なものの具体的な整備規模は、別表2のとおりとする。
また、おおむね 10 年後における各自衛隊の主要な編成定数、装備等の具体的規模については、別表3のとおりとする。
ⅩⅢ 所要経費等
1
2023 年度から 2027 年度までの5年間における本計画の実施に必要な防衛力整備の水準に係る金額は、43 兆円程度とする。
2
本計画期間の下で実施される各年度の予算の編成に伴う防衛関係費は、以下の措置を別途とることを前提として、40 兆 5,000 億円程度(2027 年度は、8兆 9,000 億円程度)とする。
⑴
自衛隊施設等の整備の更なる加速化を事業の進捗状況等を踏まえつつ機動的・弾力的に行うこと(1兆 6,000 億円程度)。
⑵
一般会計の決算剰余金が6の想定よりも増加した場合にこれを活用すること(9,000 億円程度)。
3
この計画を実施するために新たに必要となる事業に係る契約額(物件費)は、43 兆 5,000 億円程度(維持整備等の事業効率化に資する契約の計画期間外の支払相当額を除く)とし、各年度において後年度負担についても適切に管理することとする。
4
本計画期間中、2023 年度から 2027 年度までの5年間において、装備品の取得・維持整備、施設整備、研究開発、システム整備等を集中的に実施するため、・・・
5
この計画については、中長期的な防衛と財政の見通しを踏まえつつ、・・・
6
2027 年度以降、防衛力を安定的に維持するための財源、及び、2023 年度から 2027 年度までの本計画を賄う財源の確保については、・・・
ⅩⅣ 留意事項
沖縄県を始めとする地元の負担軽減を図るため、在日米軍の兵力態勢見直し等についての具体的措置及び沖縄に関する特別行動委員会(SACO)関連事業については、着実に実施する。
別表1「防衛力の5年後とおおむね 10 年後の達成目標」
別表2「主要装備の具体的な整備規模」
別表3「10年後を目標とする各自衛隊の主要な編成定数、装備等の具体的規模」
おわりに・・・
今回は「安保3文書③」ということで、「防衛力整備計画」をご紹介しました。
今後5~10年後を目標とした防衛力整備の考え方と目標が示されました。
無論、今後の ”各種” 変化によっては計画通りに進まない/進めないことがあるのかもしれません。
しかし、現状の当局が知り得る範囲で検討された検討の方向性が今回ご紹介した内容になるでしょう。
然は然り乍ら、少し気になることはありました。
それは、紙面の関係で別の機会に言及を譲りますが、
ピンとくる方もいるのではないでしょうか。
もしかすると、
すでにその部分は非公開の中で検討されているのかもしれません。
そのため、けっして批判的な立場ではないことは付言しておきたいと思いますので念のため。
さて、防衛力の整備に関する具体的な構想が決定されました。
新時代戦は明らかに現代戦とは大きく異なることは明白なのですが、
その研究と実力整備の最先端はやはりアメリカになるでしょう。
どこまでの部分が共有されているかは未知数ですが、
考えられることとして、すべてを日米で共有していることはないのかもしれません。
(「米国国家危機評価の観点からおそらくは全面的共有はなされていないでしょう。」という意味です。)
また、周辺諸国の能力整備の現状についても、
当局が知り得ている情報に具体的なものがあるのかないのかは不明ですが。
【第64回】で触れましたが、「情報は取り方と分析次第」です。
無価値(ほぼゼロ0)~ほぼ正確(≒100%)までの精度の幅で左右されてしまいます。
ぜひ、”手に取るように” 入手できるようなテクニカルかつセンスあふれる情報業務が行われていることを信じています。
最後に、新たに新編される部隊や体制が明記されました。
人的基盤をみても、これまでの施策とは違った内容が明記されていました。
▶採用、教育、訓練、予備役、民間の活用のほか、
衛生機能をみても、
▶第一線救護~復帰、に向けた変革の在り方が示されました。
いわゆる「人事サプライチェーン」「戦時医療サプライチェーン」の整備と言えます。
そこで、たいへん重要な視点として、
これまでの取り組みを評価し、
”良かったこと” と ”教訓” を洗い出すことはとても大切でしょう。
これからの取り組みにおいて取り組まれてはならないことをしっかりと選別することができます。
その上で、今回の戦略・計画をみたとき、
筆者の気になる部分があることをお察しいただける方も一定数いるのかもしれません。
それでは今後の防衛力整備に期待しています。
知った「今がスタートライン!」です。