今回は「脂質異常症」です。
「高脂血症」ともいいます。
いわゆる体内の「脂質」が異常値を示す疾患になります。
原因にはさまざまあり、治療が試みられます。
それでは、「脂質異常症(高脂血症)」を知って、まずは、予防に努めましょう。
もしも、異常を確認したらなば、あるいは、かかりつけ医からそのような説明を受けたならば、
必ず専門医の判断をもらいましょう。
参照:病気がみえるvol.3(第4版)
脂質異常症(高脂血症)
総論
2007年から脂質異常症という呼び方になっています。
脂質異常症とは、
血清コレステロールや血清トリグリセライドの異常高値を示す「高脂血症」と、
HDLコレステロールの異常低値などの総称です。
症状
自覚症状はほとんどありません。
下記、「リスク」が出現するまでは、基本的に症状はありません。
ただし、例外的に、遺伝的な原因がある脂質異常症の場合には、
アキレス腱の脂肪沈着「腱黄色腫」、黒目の縁に白いコレステロールの沈着物「角膜輪」があらわれる症例もあります。
リスク:脂質異常症(高脂血症)が危険なその理由とは
動脈硬化性疾患の危険因子として確認されています。
…動脈硬化が引き起こす病気には、
・心臓:心筋梗塞、狭心症
・血管:大動脈瘤、大動脈瘤乖離、腎血管性高血圧、
閉そく性動脈硬化症、閉そく性血栓血管炎
・脳:脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血
・腎臓:腎硬化症
などがあり、たいへん危険なフェーズに進むリスク要因です。
(【第37回】【第41回】を参照)
以上のような重大な合併症が起こるリスクがあります。
診断基準
図表1「脂質異常症の診断基準」は、診断基準の値になります。
その際、
▶これまでの経過の把握
▶原因分類
▶基礎疾患
▶家族歴の確認
▶生活習慣
▶薬の服薬状況
▶既往歴
などの確認が行われます。
原因分類では、
脂質異常症(高脂血症)の原因として
①原発性
…遺伝子異常、原因不明なもの、明瞭な家族歴(家族性高脂血症)のあるもの
②続発性(二次性)
…生活習慣の乱れ(過食、運動不足、喫煙、飲酒)、基礎疾患(糖尿病など)、薬物によるもの
に分類されています。
なお、「Non-HDLコレステロール」ですが、
これは近年用いられている指標の一つです。
食後の場合などの評価で使われています。
[non-HDLコレステロール]=[総コレステロール]ー[HDLコレステロール]
のことです。
総コレステロールとHDLコレステロールは、食事による影響を受けない値であることから、食後の場合などでの評価として使用されています。
治療方針
・医師により、カテゴリー分類が行われます。
・脂質管理目標値が決定されます。
・診断に伴うガイドラインなどが活用されます。
治療方針の原則として、大きく2つに分けられます。
①一次予防
②二次予防
です。
①一次予防では、生活習慣の改善を行ったあと、薬物療法の適用を考慮します。
②二次予防では、生活習慣の是正とともに薬物治療を考慮します。
予防としてできる生活習慣の改善
1 動脈硬化性疾患への予防として
① 禁煙、受動喫煙を避けましょう。
② 食べ過ぎを控え、体重は標準体重を。
③ 肉の脂身、乳製品を控え目にし、
魚類、大豆製品の摂取を積極的に。
④ 野菜、果物、未精製穀類、海藻の摂取を増やす。
⑤ 食塩を多く含む食品の摂取を控える。
⑥ アルコールの過剰摂取を控える。
適量はアルコール量にして25g
5%ビールだと、500mL缶で1本分
⑦ 有酸素運動を毎日30分以上
2 食事療法
① エネルギー(カロリー)摂取量は、運動量を考慮します。
標準体重を目安にします。
② 脂肪性(動物性、獣肉の脂身、乳製品、ラード、ばだーなど)を控えます。
これは「飽和脂肪酸」とよばれるものです。
③ 植物性、魚に多く含まれている油に置き換える意識をもちましょう。
これは「不飽和脂肪酸」とよばれるものです。
④ 食塩は1日6g未満を目標に。…できることなら。
(【第43回】高血圧①【第48回】高血圧②)
⑤ アルコールの過剰摂取を控える。(上記1「動脈硬化性疾患への予防として」に重複しています)
適量はアルコール量にして25g
5%ビールだと、500mL缶で1本分
3 運動療法
・有酸素運動…毎日30分以上が目標です。週180分以上は目指しましょう。
・はや歩き、ゆっくりのジョギング
・社交ダンス
・水泳
・サイクリング
などは効果的です。
おわりに・・・
今回は「脂質異常症(高脂血症)」をご紹介しました。
例外もありますが、一般的には症状はありません。
そのため、気づいたときには、たいへん重大な病気に直面してしまうことがあります。
職場で健康診断を受けている中での、血液検査結果はたいへん重要な確認手段になります。
ちなみに、簡単に知る方法は「体重」です。
明かな体重増加がある場合には、脂質異常症とは限りませんが、
身体が重要なサインを出してくれていると受け止めて、かかりつけ医に相談することを推奨します。
体重が教えてくれたリスクのシグナルをぜひ受け止めてください。
体形も参考になります。
他にも、「献血」はたいへん有効です。
日本赤十字社が行っている「献血」で血液ボランティアをしながら、
自分の血液検査データを把握する機会にするのもありなのではないでしょうか。
筆者は、「献血ルーム」と呼ばれる施設を利用することもありますが、
生活圏に来てくれる「献血車」でお世話になることも多いです。
また、年間にできる献血回数には制限がありますが、
おおむね、3~4か月に1回のペースで血液の検査値を確認することができます。
ぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか。
今回はとても症状がつかみにくい疾患「脂質異常症」をとり上げました。
症状が無いため、「自分はとても軽いんだ」と勘違いをしているお話しをしばしば耳にします。
「私は高脂血症だから、〇〇さんのように糖尿病ではないから大丈夫」
といった誤解にもとづく発言です。
筆者だけでなく、医療従事者全般としては、
「脂質異常症」も「糖尿病」もいずれも同様にリスクを感じています。
脳梗塞や心筋梗塞などの合併症に進んでしまわないよう、
日々の ”ちょっとした部分” の生活の積み重ねを大切にしていきましょう。
「食事療法は難しい」という感想をしばしば耳にするときがあります。
筆者は、
「食べたいもので満腹にする毎日」をして
「いつか制限されてしまう食生活習慣」よりも、
まずは、
「食べたいものを最期の日まで食べることができる身体にしておくことが大切です」と説明します。
これは、
「満腹を毎日」続けると、
ほぼ必ずと言っていいほど「生活習慣病」が出現します。
加えて、さらにやっかいな現象として、
「その生活習慣を改善することへの抵抗力が歳月とともに大きくなってしまう」
という特徴をみてきたからです。
そのため、
「変えるなら早いうち」
「簡単に変えられるのは早い時期」
「改善ができたらいつまでも続きます」
「改善はさらなる改善を呼びます」
人間の学習能力は本当に素晴らしいですから。
「しっかりと食べること」
「変わらず変えずに食べること」という学習の方向性を、
「配分して食べること」
「適量で食べること」
そして、
「一生食べられる身体を手に入れること」
として変換するという「学習能力」のすばらしさを信じています。
という視点で助言をしてきました。
みなさんもぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。
知った「今がスタートライン!」です。