今回は「不顕性リスクモデル」を紹介します。
「不顕性事故モデル」「不顕性危機理論」と読みかえても問題ありません。
これまで、危機管理理論として、
【第31回】ハインリッヒの法則①
【第32回】スイスチーズモデル
【第33回】スノーボール理論
【第37回】危機管理「竜巻理論」
【第41回】竜巻理論と糖尿病
を紹介してきました。
この「不顕性リスクモデル」は、
”一見正しいと認識されているモノ”にアクシデント(事故・問題)やリスクの芽が実は潜んでいる。
という意味で、この現象を一般化した概念になります。
「不顕性事故モデル」や「不顕性危機理論」とも言えます。
これまでの理論とは別の視角からエラー発生のメカニズムをみています。
ぜひ、ご自身が所属する組織で検証してみてはいかがでしょうか。
「不顕性」…医療からヒントを学ぶ!
感染の仕組み
感染症とは『病気を引き起こす病原体』が体内に侵入し、増殖しながら潜伏期間を経て、何らかの症状を引き起こし発症します。(出典:GME医学検査研究所)
つまり、感染した瞬間は発症ではありません。
感染が成立してからしばらくの期間(潜伏期間)を経て、症状として自覚するときが発症ということができます。
「不顕性」とは
不顕性(ふけんせい)とは、病気の過程が始まっているがまだ症状が表れていないことを表す医学用語である。
(出典:weblio辞書「不顕性」)
【解説】
症状があらわれることを発症と言います。
発症は、体に起こった何らかの変化を自覚した段階と言えます。
病気には発症を自覚する段階と、その前段階に分類できます。
その前段階の潜伏期間が「不顕性」の段階ということができます。
「不顕性感染」とは…感染を例に
感染は、病原体が人間の体内に侵入、定着し、増殖することで成立します。
感染しても、症状が現れる場合(顕性感染)と,
はっきりとした症状が現れない場合(不顕性感染)があります。
不顕性感染者は、知らない間に保菌者(キャリア)となって病原体を排泄し、感染源となって感染を拡げる可能性が高いので、しばしば問題となります。
(出典:大幸薬品)
つまり、医療では、発現する場合と発現しない場合に事象を分類しています。
そして、発現した場合を「顕性」、発現しない場合を「不顕性」として定義しました。
ここで、このプロセスを危機管理理論にも応用していこうとする考え方が、
予防災.comでの試みになります。
「不顕性リスク理論」とは
定義:不顕性リスク理論(不顕性事故理論)
つまり、医療用語を援用すれば、
不顕性事故とは、
「事故や問題の過程は始まっているものの事案・事故には至っていない状態」と定義することができます。
換言すると、
まだ事故や問題として認知されていない段階のことです。
まだリスクにすら気づいていない状態のことです。
不顕性期間とは、
「事故・問題の物語は始まっているものの事案・事故・リスクとして認知されるまでの期間」と定義できます。
いずれの用語からも、
事故・問題・リスクとして認知されるまでさまざまな問題(=アクシデントの芽)が蓄積・悪化している経過期間であることがわかります。
事故発生メカニズム…積み重ねたその先で表面化したときに「事故」となる。
図3は、「不顕性リスクモデル」(「不顕性危機モデル」)を図示したものです。
事故は、その程度によりエラー、トラブル、事案、インシデント、アクシデント、事故として分類・表現しています。(アクシデント=事故=深刻な問題=重大なもの)
事故の発生は、さまざまな積重ねの結果です。
積重ねには、教育、訓練、習慣、伝統、文化、反復、先入観、勘違い、間違い、手抜き、横着、良かれと思って、成り行き、無意識に過ごす日々などがあります。
これらの積み重ねの先に、エラーやインシデントやアクシデントがあることを示しています。
また、エラーやインシデントやアクシデントの発生には、
当事者が気づいていない期間が存在しています。
それが「不顕性期間」です。
こういった不顕性期間に蓄積され積み重なっていったエラーは、
結果として重大事故やインシデント、ヒヤリハット事例へとつながっていくことを示しています。
なぜ積み重ねてしまうのか?=生活習慣病と同じ?
仕事を例に話を進めてみましょう。
一般的には、入社・入庁・入職すると新入者教育が行われます。
新部署に配属・異動となれば部署内教育やレクを受けます。
ここで、新入者教育やレクが行われない場合があるかもしれません。その場合には、そもそも論としてノウハウが継承されていない体制であり、当事者が自らの力で成長していくことを意味しています。そのため、本危機管理理論には馴染まない部分も多いです。ですが、そういった場合も期間の長短に関わらない視点も重要なことから、一応含めておくことにします。
新入者教育やレクを受けて実践投入され、教育やレクやこれまでの経験をもとに実践をしていく。
それでは、
果たして、教育やレクは正しいモノだったのか?
果たして、教育やレクによる理解・習得は正しいモノだったのか?
そして、それらとともに実践の中で身についていったノウハウは正しいモノなのか?
ここに、「不顕性危機理論」は関心があります。
各種教育は、組織におけるこれまでの積み重ねの結晶と言えるでしょう。
他方で、
もしも仮にですが、前回のそのままを毎回の教育で使用していたらどのようになるでしょうか?
あるいは、
前回ベースとしながらも、ファクトチェックや必要な確認・修正・自己点検が行われていなければどうなるでしょうか?
ここに、不顕性リスクの経過期間における問題の本質があります。
必要な点検とは、
・経年変化への点検
・安全性の点検
・有効性の点検
・合規制の点検
・教育効果の点検
などがあります。
ですが、現実としては、点検を行うコストを十分に準備できない場合もあり、
なかなか必要な点検が十分に行われていないのが現状なのかもしれません。
特に、使用できる資源(人材、時間、資金)が限られている組織や、
ノルマや目標設定が高い/キツい/厳しいなどの場合には、
なかなか点検に手がまわらないのではないでしょうか。
あるいは、属人的(点検は担当者その人次第)な部分があるかもしれません。
・点検する人はするが、
・点検しようとしない人は何を言っても点検しない。
・点検したとしても点検を指示したところしか点検しない。
・点検しようとしない人は一定数(大多数?)存在している。
そして、今まで正しいと思い、正しいとされていたことを疑うことが本当にできるのか?
ということも指摘できます。
生活習慣病が、生活習慣そのものに疾病原因の多くが潜んでおり、生育環境の影響を強く受けるのと同じで、食・住・運動習慣の改善の必要性を、病気が発症するまでなかなか認識できず、発症してもなかなか改善できないのと同じことなのかもしれません。
ここがまさに、不顕性期間を積み重ねてしまうたいへん厄介なの部分になるといえるのではないでしょうか。
重大な問題の発生を低減するために
不顕性期間に目を向ける!
不顕性期間とは、アクシデントが起こる前のヒヤリハット、インシデントレベルでの期間になります。
この期間に潜んでいる、アクシデントや問題の芽を洗い出すことが大切になるということです。
ちなみに、ハインリッヒの法則、スイスチーズモデル、スノーボール理論などと同じく、アクシデントの芽に関心を向けることには変わりありません。
これらの理論たちと不顕性危機理論の決定的な違いは、
本理論は…
”一見正しいと認識されているモノ”に関心を向けている。になります。
この”一見正しいと認識されているモノ”とは、
▶これまで正しい
▶これまでそうしてきた
▶当たり前
▶デフォルト
▶通常
▶普通
▶会社のために良かれと思って
と認識されているモノのことです。
他方で、これらは実際のところ、必ずしも正しいモノではないことを意味しています。
「〇〇部署の常識は社会の非常識」みたいな部分になるかもしれません。
”一見正しいと認識されているモノ”を見つけ出す方法
実は、たいへんやっかいなのです。
これまで正しいと認識していたことを間違っていると判定する作業になりますから。
医療では、正常か異常か、で判断し、
その判断には、客観的事実とともに主観的事実を併用してアセスメントを行います。
ですが一般的には、さまざまなことを客観的事実や主観的事実で評価できるわけではではありません。
定量的にみることが難しいことも多々あるわけです。
常識、良識、コンプライアンス、モラル、比較により、心情的に、…
そこが、たいへんやっかいと言える理由になります。
筆者の提案は、
危険がどこに潜んでいるのかを診る。
です。
業務・操作・手技を理論的に分解して危機の箇所を同定できる人間
を登用することなります。
(参考:【第37回】危機管理「竜巻理論」)
人材の登用には、
案1)部内において人材を養成
案2)外部から登用
があります。
どちらもそう簡単ではないでしょう。
また、社会はこのような人材を育成していませんし、そのようなビジネスモデルも見当たりません。
内部統制システムを整備している組織はあるとはいいましても、
法令、内規等が守られているかといった形式的な管理にその重点が置かれているように観ています。
そのため、不顕性事故を予防するためには、
属人的な能力に依存してしまっている現状があるといってよいのではないでしょうか。
言い換えると、属人的な能力に依存することが望まれるのかもしれません。
それほどに、”一見正しいと認識されているモノ”を見つけ出す作業は簡単ではないということでもあります。
筆者は、学術・研究、医療、防衛・軍事を背景にした形式知・暗黙知をもっています。
他方で、各界がこれまで蓄積していきたアセスメント手法をもとに、
それらを駆使することが一定程度できるのですが、
社会や組織にはたらいている複雑な力学、行動原理などを読みとくには、
とても高度な眼識が必要だと受け止めています。
事例をもとに「不顕性リスク理論」を考える
事例1)国内自動車業界での某企業が下請けに対して行っていた「買いたたき」問題
自動車業界での某企業で下請け「買いたたき」問題が明るみになりました。
(出典:テレビ東京,WBS番組内、5月10日放送.)
下請け会社に対して「不当な減額要請」をしていた問題です。
買いたたきの報道が真実であるとすればですが。
記事によると、
「某企業が〇日発表した決算では、純利益が前年の2倍近くとなる4,000億円以上と好業績でした。ただ、その好業績の陰で某企業は、中小の取引先企業三十数社に対し、違法な減額を強要していたとして、◇月に公正取引委員会から再発防止の勧告を受けています。テレビ東京がその後、その三十数社以外の複数の下請け企業を取材したところ、「減額の強要が変わらず続いている」という実態があきらかになりました。」(参照元をもとに、企業名、決算額、下請け企業数は筆者が修正しています。)
それでは、当該企業の、方針、文化、風土として、
買いたたきは、事業者(発注元)としてメリット感があったのでしょうか。
(①買いたたきをした者・部署が満足した、②それを業績として社は当該部門を一時的にだが評価したという意味です。優越的地位にある者だけが感じるメリット感だけでしかなくけっしてメリットではありません…念のためでした。)
当該発注元は、目先の狭く浅いと思われる部分ではあるのですが、その部分に活路・勝ち筋を見出したことになります。
しかし、部署・組織・企業・業界・産業としては、全体的・長期的にみるとデメリットでしかないのは明らかです。
ちなみに、買いたたきを報じられた当該企業における当該系列の部署は、報道当時の社長も当該部門の出身との記事を拝見するのですが、部門としても組織としても、「不顕性事故モデル」でいうところの、組織内では”一見正しいと認識されているモノ”の力学で組織が運営されていたといえるでしょう。
こういった状態・常態に対して、平常時に危機の箇所(アクシデントの芽)を認識し、
危機の箇所を特定し、改善していくために行動をおこすことがいかに難しいか、
読者のみなさんはお察し頂けるではないでしょうか。
この買いたたき事例では、当該部署を経験した方が社長にまで昇進しているという事実をもってしても、
組織の評価システムだけでなく、
社会をけん引する大企業としての、バランス感覚と言いますか、常識、良識、モラル、誠実さ、正しさ、誇り…について、とても複雑かつ難しい現状があるように筆者は診ています。
<2024年5月加筆>
事例2)平素の現状から「アクシデントの芽」が果たしてみえるのか?
筆者は、本事例のような視点で現状をみることがあり、その都度、必要な予防策をとってきましたので、ひとつご紹介します。
今後表面化する可能性のある問題について、現状からその積み重ねている部分を評価してみよう!
現実に訪れる結果は1つしかありませんので、
その結果を望むものにしていこう!
というというものです。
【事例】
2024年6月23日、令和6年能登半島地震(2024年1月1日16時10分発生)に伴う防衛省自衛隊の災害派遣が、
地震対応としては東日本大震災(派遣期間174日)を超えて過去最長となりました。
「吉田圭秀統合幕僚長は20日の記者会見で、撤収の見通しは立っていないとした上で、『東日本大震災に比べ規模は小さいが、自衛隊に代わる手段がない地域が残っている。ニーズに応え、丁寧な支援を続ける』と話した。」
(出典:時事通信,2024年06月23日00時10分配信.)
この事例は、一見すると本稿「不顕性事故モデル」とは関係ないのではないか?
というご指摘をいただくかもしれません。
たいへん関係があるため、以下で解説します。
自衛隊の災害派遣は、下記の3要件を総合的に勘案して判断されています。
①緊急性
②公共性
③非代替性
つまり、
①急を要し、②公共の秩序維持の観点、③他に手段がない、ときに派遣されます。
統幕長「規模は小さい」としつつも「自衛隊に代わる手段がない地域が残っている」とし、
撤収の見通しが立っていないことを説明しました。
活動それ自体は問題ありませんし、たいへん重要なことです。
他方で、①②③を発災当初からみていったとき、
どの段階で、①緊急性が解消され、③代わりとなる手段を調達できるか。
これらを常にみていくことが、当局には求められます。
2月時点における上下水道の復旧見通しから、5月末やそれ以降になると言われていました。
そのため、本来なら、活動を速やかに終了させるための、さまざまな創造的対応が求められてくるわけです。
入浴設備の新規調達、自治体への装備品の一部貸与・供与・払い下げなどのほか、
入浴設備運営に関する地元自治体等への移譲など、
これまでにない方法論の創造的適用が考えられるでしょう。
(発案者がいれば、上記いずれかで実行することは、決定権者の判断次第で問題なくできるでしょう。)
もちろん、装備品の供与や払い下げなどには、ルールがあり難しい場合もあります。
したがって、供与できるような、協定、装備品の開発・調達、災害時用の代用品の開発といった発想も有効なのかもしれません。
こういった、さまざまな創造的対応の現状は、まさに、
大規模災害や有事における対応に置き換えてプロアクティブ(先取的)に検証できる。
と筆者は考えており、
本稿が説明する「不顕性リスクモデル」の使い方になります。
大規模災害や有事になってから問題が表面化する前に、
現状やこれまでの活動を慎重に診ていくと、
実は、不顕性期間で起こっているアクシデントの芽を評価することができる。という意味です。
積み重ねとして、組織のこれまでの知識・技術・手法・手順・要領・プロトコル・プログラム・ノウハウを100%実践できることはとても大切です。
求められたことをどれだけ忠実に実行できるか?という意味で。
他方で、加えて、新たな対応方法を創造する力も、同様に大切なのです。
これまでの”やり方”を守ること、”言われた通り”に実行すること
に重きをおいて日々を過ごすことに加え、
創造的対応もあわせて訓練しておかなければなりません。
それでは、今回の事例は、いったい何を示唆しているといえるのでしょうか?
読者のみなさんは、この事例について、どのように受け止められているでしょうか?
※念のためフォローしておきますと、
本稿は、あくまでも、当局の発表をもとにその検証を練習として試みたもので、
「当局が創造的対応をしていない」や、「創造的対応ができない組織」であると評価しているわけではありません。
以上から、
今後表面化する可能性のある問題を洗い出そうとする頭の体操として、
事例をもとに、現状から新たな対応方法を創造する力(その積み重ね)を評価しました。
(本稿は、当該当局の積み重ねの良し悪しまでは言及しておりません。)
本事例は、入浴支援という前例を踏襲している活動です。
その見通しの立たない派遣期間の長期化については、当局はすでに受容した結果といえます。
この受容が、どのようなプロセスで判断されたのか?
長期化することに対して、当局内で十分な検討や対策が行われたのか?
本稿ではそこまで分析する情報を持ち合わせておりませんが、
当局を含め読者のみなさんは、さらに深堀してみるのもいいのかもしれません。
もしも、仮にですが、
「上下水道の復旧を待っていたら、派遣期間が過去最長となってしまった。」
であったとしたら、これはかなり深刻な状態という見方にはなるでしょう。
※「訓練された無能力」を参照ください。
本事例については、災害の規模や災害派遣期間だけで論じるのはもちろん不十分です。
したがって、今回の派遣期間長期化の事例をもとに、
今後、そのアクシデントの芽にあたる部分の洗い出しを精緻に行うことは、
将来的にもたいへん重要になってくることを申し添えておきます。
アクシデントの芽があれば、改善されてください。…最悪の事態を見据えて
アクシデントの芽がないのであれば、引き続きよろしくお願います!
参考…
※訓練された無能力(マートン,1970)…よく起こる事態への処理は、標準的な方法での訓練を受ける(前例踏襲)。この方法は社会が安定的なときには有効だが、事態が変化・不安定化したときに問題を引き起こすことがある。
▶関連:【第47回】 非常時リーダー:有事のリーダーを育て配置するヒントとは?
▶平素は、軍民ともに技術革新が目覚ましいです。さらに、有事においては、軍事関連において、よりそのスピードは加速します。装備品だけではなく、戦術・戦法も同様であり、これまでの戦史がそれを証明していますね。その技術革新の加速をしっかりと平時に訓練・準備できているか?。平時という期間(積み重ねの部分、不顕性期間)は、有事における潜在力をある程度規定してしまいますから、今回の令和6年能登半島地震や世界で起こっている紛争等を参考にして、南海トラフ巨大地震、首都直下地震、日本海溝・千島海溝地震、富士山噴火、周辺有事、新たな秩序などへの対応力の備えとして、大なり小なりアクシデントの芽をみつけてみるのも有効なのではないでしょうか。
<以上、2024年6月加筆>
おわりに・・・
これまでの危機管理理論、ハインリッヒの法則、スイスチーズモデル、スノーボール理論のほか、
筆者の提唱する理論として、「不顕性リスクモデル」を紹介しました。
エラーの原因に目を向ける。
これはどの理論にも共通している取り組みになりますが、
「不顕性事故モデル」はそのプロセス全体に目を向ける点で違いがあります。
ここで、何事もなく数十年も経過した事例を想像してみましょう。
不顕性リスクのいち事例として、
業務手順・手技を本来は正しく理解(実践)していないが無難に一定期間、例えば数日~数年~数十年も時間が経過してしまった場合です。いわゆる、事故発生要因が何らかの理由(おかげ)で、意図的な予防的介入を講じることなく知らず知らずのうちに是正されている状態です。機転が利く先輩がいたとか、現前するリスクを具体的に指摘する以前(意識にのぼる以前)に、そもそも組織力のおかげでリスク因子を関係者らの無意識下で是正・処理・浄化してしまっていることなどが考えられます。知らず知らずのうちにうまく行っている時間が過ぎていることで、リスクマネジメントが奏功している反面で、チームや部署など組織全体に事故のタネがまん延してしまっている状態。
ということができます。
社会ではリスクマネージメントが一般的になり、安全管理組織の整備や、コンプライアンスといった内部統制組織の確立も進んでいます。
安全管理の推進がうまくいっている場合には、さまざまな部分で起こっているエラーのうち、本来は当事者が認識すべき事柄についても、無難に解決・処理され、時間が経過してしまっていることも多いのではないでしょうか。
いわゆる、
安全管理組織の”おかげ”で”たいへんうまくいっている”
というような状況が実は、裏目に出ることもあるかもしれません。
安全管理の”逆機能論”ともいえる現象のことです。
そのため、そういった危機の個所を同定できる人材を探そうとするなら、
▶部内なら…声を挙げられる力のある、ベテラン・中堅・時には新人を発掘してみましょう。
▶外部なら…そういった眼識のある人材を見つけ出し登用しましょう。
ということになります。
育てたり、見つけたりすることはたいへんですが、
こういった眼識のある人材はぜひ重用することをおススメします!
組織にとっての中核利益を担ってくれる人材ということになりますから。
眼識のある人材は…
部署・企業だけでなく、業界・産業としても、そして、長期的にみても必ずやあるべき方向への推進力になるでしょう!。会社の発展だけでなく、他の職員全体にとっての充実感・達成感・誇り・モチベーション、業界・社会の発展のけん引役も担ってくれる人材という意味での壮大な貢献をする立役者となることでしょう。
その意味でも、必ずしもその部門のその組織の専門性を必須としないことはおわかりいただけるのではないでしょうか。
読者のみなさんの中にも、
組織のオペレーションや文化・習慣に対して疑問をもっている方、
明らかに誤りだがなかなか声があげられない方がいるかもしれません。
あるいは、
経営者・管理者・メンバーとして、業務や体質のファクトチェックや必要な確認・修正・自己点検を検討されている方もおられるかも知れません。
関係者が重大なケガ、後遺障害、死亡といった事案に至らないよう、
組織・業界が重大な事案が発生し、破局的状況に陥ってしまうことのないよう、
つらく悲しい思いをしないためにも、
ぜひとも不顕性リスク理論を参考に行動に移して頂ければ幸いです。
知った「今がスタートライン!」です。