【第14回】 堤防決壊:堤防の壊れ方とは?洪水の原因のひとつです。河川の増水などで堤防が壊れまるメカニズムを解説。

メカニズム
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洪水は、私たちの暮らしに大きな被害を与えます。

洪水とは、「大雨や雪どけなどによって河川流量が普段より増大したり、氾濫すること。」(出典:用語解説/国土交通省木曽川上流河川事務所HP)です。

氾濫とは、「河川などの水があふれ広がること。」(出典:用語解説/国土交通省木曽川上流河川事務所HP)と明記されています。

今回のテーマは「堤防決壊」です。

決壊とは、「高波等により堤防が壊れて崩れることをいう。」(出典:用語解説/国土交通省木曽川上流河川事務所HP)とあります。今回の説明は河川を主に扱っています。

堤防はなぜ決壊するのか?というメカニズムについて、河川洪水に焦点をあてて、
簡単に説明していきたいと思います。

「溢水」と「越水」

「溢水」

 「溢水」(いっすい)(出典:用語解説/国土交通省木曽川上流河川事務所HP)
  …川などの水があふれること。
   堤防がないところでは「溢水」を使います。

写真1.溢水の状況(出所:水戸市島地区農地・水・環境保全会HPより

「越水」

 「越水」(えっすい)(出典:用語解説/国土交通省木曽川上流河川事務所HP)
  …川などの水があふれ出ること。
   堤防のあるところでは「越水」を使う。

写真2.越水の状況-その1-(出所:鳴瀬川堤防調査委員会報告書(令和2年6月))
写真3.越水の状況-その2-(出所:鳴瀬川堤防調査委員会報告書(令和2年6月))

小まとめ

ということで、「溢水」「越水」いずれも川などの水があふれ出ることを意味しています。
違いは、堤防があるか?ないか?の違いです。
越水により、堤防ののり面が少しずつ削り取られて、そこから決壊が始まる。
といった決壊の進み方が確認できると思います。

堤防決壊

堤防が決壊するメカニズムは、3つあります。
  ▶① 「越水」による堤防決壊
  ▶② 「浸透」による堤防決壊
    ②ー1:「パイピング破壊」
    ②ー2:「すべり破壊」
  ▶③ 「浸食・洗堀」による堤防決壊
です。(出所:鳴瀬川堤防調査委員会報告書(令和2年6月))

それではひとつずつ説明していきます。

① 「越水」による堤防決壊

図1.越水による堤防決壊のイメージ図

 ・河川水が堤防を越流する。
 ・越流水により土でできた川裏(河道と反対側)の法尻が洗掘される。
 ・ 堤防の裏法尻や裏法が洗掘され、最終的に堤防決壊に至る。

② 「浸透」による堤防決壊②ー1:「パイピング破壊」

図2.パイピング破壊によるイメージ図

 ・ 高い河川水位により地盤内に水が浸み込み、
  川裏側まで水の圧力がかかることにより、
  川裏側の地盤から土砂が流失し、水みちができる。
 ・ 土砂の流失が続き、水みちが拡大して、
  堤防が落ち込み、最終的に堤防決壊に至る。

② 「浸透」による堤防決壊②ー2:「すべり破壊」

図3.浸透によるすべり破壊のイメージ図

 ・ 降雨や高い河川水位により水が浸透し、堤防内の水位が上昇する。
 ・ 堤防内の高い水位により、土の強さ(せん断強度)が低下し、
  川裏側の法面がすべり、最終的に堤防決壊に至る。

③ 「浸食・洗堀」による堤防決壊

図3.侵食・洗掘による堤防決壊のイメージ図

 ・ 河川水により堤防の河川側が侵食・洗掘される。
 ・ 河川水による侵食・洗掘が続き、最終的に堤防決壊に至る。

以上、説明してきました。
堤防はさまざまな検討プロセスを経て作られています。ザックリ言いますと、
整備区間を決め、堤防の基本断面の形状を検討し、調査や区間の細分化、
構造の仮設定、設定外力の設定、強化工法の検討、堤防構造の調整
を経ています。

かなり専門的な知識・技術・経験値の集合体と言えます。

それが、先ほどの説明をしたメカニズムで破堤(堤防決壊)することを知りました。

堤防が決壊するまでは、究極的には、平常時と何も変わらないでしょう。
もしも、平常時と比べて変だなとか、変わっているな、と気づくことがあるとすれば、
雨が強く降っていたり、道路の水たまりがいつもより多いといった兆候なのかも知れません。

しかし、雨の降り方や家の前の水たまりの状況だけではなかなか川の危険察知は難しいです。

そこで、ぜひ【第3回】で紹介した「川の水位情報」(国土交通省)の
「水位」や「ライブカメラ画像」の情報を確認しましょう。
どこまでの「水位」にどのスピードで来ているのか、
直接は視るべきではありませんが、「カメラ画像」から
その危険度も直観的につかめると思います。

そうすることで、少しでも早い情報キャッチと、
それによる「避難の決断」がとてもスムーズに進むのではないでしょうか。

おわりに・・・

   堤防決壊は、それによる浸水の速度がとても速いです。
   見る見るうちに水位は上昇します。
   それは、川の水が一気に街・町中に流れてくるからです。

   海に流れ出てくれればよかったのですが、
   その水量を私たちの街・町が受け止めることになるのです。

   「逃げよう!」と思って準備して家のドアを開けた瞬間、
   「あっ、逃げれない…」という状況は非常に多く起こっています。

   そのため、「避難の決断」は早めがとても大切です。
   そうは言っても、「ほとんどのケースでは逃げる必要がなかった。」
   ということはこれもまた多いのも事実です。

   「大丈夫だった」を人生の中で長く多く毎回経験してしまったがために、
   「大丈夫ではないそのとき」「命の危険に直面するするそのとき」に
   残念ながら出くわすことになってしまいます。

   ですから「避難が空振りになった。」というネガティブ経験を、
   ぜひとも「避難が訓練になった。」というポジティブ教訓に変えて欲しいと願っています。

   「ここにこれだけ時間がかかった」とか、
   「お父さんイライラしてた。次は冷静にね」とか、
   「〇〇が定位置になかった」など、
   教訓を得られる貴重な機会になると考えています。

   ふだんの避難訓練とともに、本番も避難訓練として活用!
   予防災実践としての日常(生活習慣防災)にしてみてはいかがでしょうか。
   「知った今がスタートライン!」です。
   
   

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