「富士山噴火」のお話しです。
前回【第19回】にふれましたが、日本には111の活火山がありました。
その一つが「富士山」です。
そして、50ある常時観測火山のひとつです。
「常時観測火山」とは、「火山防災のために監視・観測体制の充実等が必要な火山」(火山噴火予知連絡会)ということで選定されている山です。
今回は、富士山噴火という中で、どのような災害リスクがあるのかを概説します。
今回の解説では、令和3年3月の変更を反映した最新のものです。
富士山噴火の歴史
噴火などの現象の経過
・70~20万年前…小御岳火山
・10万年前…古富士火山
・氷河期…氷河期泥流泥流
・5000年前…新富士火山
・3000年前…噴火(4回)
・2300年前…泥流
・781年…噴火
・800~802年…延暦大噴火
・864~866年…貞観大噴火
・999年…噴火
・1033年…噴火
・1083年…噴火
・1435or1436年…噴火
・1511年…噴火
・1707年…宝永大噴火
・1897年…噴気
・1987年…地震(山頂)
※参考:気象庁をもとに筆者修正
古文書から
・新富士火山の噴火は781年以後17回
・平安時代に噴火が多い
・800年~1083年…噴火記録(12回)
・活動と休止のリズム
…1083年~1511年は400年以上噴火なし
…1707年宝永大噴火以後は、約300年間噴火していない。
参考:静岡県富士市HPをもとに筆者修正
ハザードの詳細
降灰
噴火による火山灰の降灰予測を示したものです。
多くの場合西風を前提に作成されています。
ご覧いただいてわかりますように、神奈川県東部でも降灰が10㎝のところもあるようです。
東京都心や千葉県でも2㎝の降灰可能性が見込まれています。
最も深刻になる可能性があるのは、富士山山麓です。
御殿場市だけでなく、小田原西部も50㎝の降灰予測があります。
もちろん、注記にあるように、
一度の噴火で記載の範囲・降灰の量が起こるという説明ではありません。
噴火の状況と風向きとによって見込まれる可能性があることを示していますので誤解なきようお願いします。
溶岩流
溶岩流が流れ出る範囲を表しています。
最新の見直しでは、流出する範囲が拡大されました。
大きな見直しのひとつは、相模湖を越えて流出が起こる可能性が示されたことです。
他にも、大井町や松田町一帯にも流出する可能性も示されています。
とはいえ、注記にもあるように、一度の噴火で表示のすべての地域に溶岩流が流れ出るという意味ではありませんので念のため。
然は然り乍ら、広範な見直しが行われたということで、あらためて身近な方はリスクの見直しをお願いします。
大きな噴石
噴石の飛来するリスクのあるエリアを示した図です。
しかし、注記にもあるように、一度の噴火で表示された地域すべてに噴石リスクが発生するという意味ではありませんので誤解なきようお願いします。
富士山の入山期間は特に注意が必要かもしれません。
ご覧のように、登山道が大きくリスクエリアとして示されていることです。
富士山の登山経験がある方や、メディアなどで富士山の登山道を見た中で気づいた人がいるかもしれません。
登山道では、噴石に対して身の安全を守る、あるいは、被害を極限できるようなシェルターがすべての経路上に設置されているわけではありません。
御岳山噴火(2014年9月)の教訓から、突然噴火する可能性は否定できないことからも、そういったリスクに備えたザックなど防護用の備えは大切だと思います。
一方で、富士山は常時観測火山です。
群発地震や山体膨張などの兆候は把握できる山でもあります。
そのため、登山を計画される方は、登山中における噴火予警報が入手できる装備は大切です。
火砕流・火災サージ
【用語】
▶ 火砕流…高熱の岩石や破片が斜面を流れ下る現象
▶ 火災サージ…火山灰と空気の混ざった高熱の爆風
これらは、スピードが非常に速く、時速100キロを超える事もあります。
火砕流や火砕サージの温度は数百度と大変高温です。
襲われた森林や住宅は一瞬のうちに燃え上がってしまう非常に危険な現象です。
(出所:国土交通省北陸地方整備局)
注記にもありますが、表示されたすべてにリスクが生じるわけではありませんので誤解なくです。
融雪型火山泥流
噴火の発生した時期により、富士山の状態は違います。
融雪型火災泥流の前提としては、富士山の冠雪があることです。
年によっても違いはありますが、9月~翌年6月には富士山に雪があることは多いです。
したがって、融雪型火災泥流リスクがあるのは、7月、8月を除く時期になりそうです。
おわりに・・・
今回は、富士山のハザードリスクについて検討してみました。
富士山は常時観測火山として、常に、最新かつ最速で山の状態の情報が発信されます。
しかし、それが安心を保障してくれるものではありません。
火山噴火には前兆現象(兆候)と言われる現象が起こる場合があります。
一方で、前兆現象を人間側が察知できない場合もあります。
さらには、前兆現象がない場合もあるでしょう。
(後日、前兆現象だったと評価されるケースも)
火山噴火は、その発生した場所と、ハザードの種別により行動パターンは変わってきます。
どのような避難や身を守る行動をとるべきかについて、今一度想像したり、訓練や話し合いをしてみてはいかがでしょうか。
知った「今がスタートライン!」です。