【第27回】 タイムライン:防災行動は「災害時」と「平時」の両時で!「マイタイムライン」の準備を。

台風
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タイムライン」とは、「災害の発生を前提に、防災関係機関が連携して災害時に発生する状況を予め想定し共有した上で、『いつ』、『誰が』、『何をするか』に着目して、防災行動とその実施主体を時系列で整理した計画です。防災行動計画とも言います。」(出典:国土交通省)と説明されています。

これにより、「国、地方公共団体、企業、住民等が連携してタイムラインを策定することにより、災害時に連携した対応を行うことができます。」(出典:国土交通省)といった目的も説明されています。

こういった「防災行動計画」として作られてきた防災のための行動予定表を、私たち住民もひとりひとり、あるいは、家族単位で作りましょうという!のが、「マイタイムライン」になります。

今回は、「風水害」や「洪水」や「土砂災害」といったリスクを対象にしています。

タイムライン

国土交通省の例(紹介例)

図1.タイムラインの紹介に使用した一例(出所:国土交通省)

図1は、国土交通省が「タイムライン(防災行動計画)」を説明するために使用している表を引用したものです。

ご覧のように、作成団体である国土交通省を基本として、関係する機関等の動きについて、時系列で整理されています。

定義

タイムラインとは、災害の発生を前提に、防災関係機関が連携して災害時に発生する状況を予め想定し共有した上で、『いつ』、『誰が』、『何をするか』に着目して、防災行動とその実施主体を時系列で整理した計画をいう。」(出典:タイムライン(防災行動計画)策定・活用指針(初版)/国土交通省)

ゼロアワー

対象災害の設定とともに、主たる災害の発生時点を定めたその時刻
(出典:タイムライン(防災行動計画)策定・活用指針(初版)/国土交通省)

リードタイム

ゼロアワーから時間を遡り、個々の防災行動を実施するタイミングと防災行動に必要な時間をリードタイムといいます。(出典:タイムライン(防災行動計画)策定・活用指針(初版)/国土交通省)

タイムライン導入の効果

① 災害時、実務担当者は「先を見越した早め早めの行動」ができる。また、意思決定者は「不測の事態の対応に専念」できる。

②「防災関係機関の責任の明確化」、「防災行動の抜け、漏れ、落ちの防止」が図られる。

③ 防災関係機関間で「顔の見える関係」を構築できる。

④ 「災害対応のふりかえり(検証)、改善」を容易に行うことができる。

とありました。(出典:タイムライン(防災行動計画)策定・活用指針(初版)/国土交通省)

災害対応はさまざまな機関が活動します。
単独でできることだけではありません。
協働して取り組まなければならないときが多いです。
しかも、他機関が連携しなければならないときもあります。
そういった意味で、事前に行動計画を策定しておくことは、とても役立つわけです。

マイタイムライン

それではマイタイムラインについてみていきましょう。

経緯

平成27年9月関東・東北豪雨における避難の遅れや避難者の孤立の発生を受けて、国、県、鬼怒川・小貝川沿川市町で構成される『鬼怒川・小貝川下流域大規模氾濫に関する減災対策協議会』の枠組みで様々な取り組みを進める中で、住民一人ひとりの単位で、水防災に関する知識と心構えを共有し、事前の計画等の充実を促すためのツールとして開発しました。」(出所:国土交通省)
と紹介されています。

定義

「住民一人ひとりのタイムライン(防災行動計画)であり、台風等の接近による大雨によって河川の水位が上昇する時に、自分自身がとる標準的な防災行動を時系列的に整理し、自ら考え命を守る避難行動のための一助とするものです。
 その検討過程では、市区町村が作成・公表した洪水ハザードマップを用いて、自らの様々な洪水リスクを知り、どの様な避難行動が必要か、また、どういうタイミングで避難することが良いのかを自ら考え、さらには、家族と一緒に日常的に考えるものです。」(出所:国土交通省)

作成例

図2は、三世代家族4人を例に、「台風が近づいているとき」の作成例です。

図2.台風が近づいているとき(出所:東京都)

図3は、夫婦2人家族を例に、「大雨が長引くとき」の作成例です。

図3.大雨が長引くとき(出所:東京都)

図4は、3人家族を例に、「短時間の急激な豪雨が発生するとき」の作成例です。

図4.短時間の急激な豪雨が発生するとき(出所:東京都)

 ▶「台風が近づいているとき」
 ▶「大雨が長引くとき」
 ▶「短時間の急激な豪雨が発生するとき」
では、それぞれ災害の進み具合に違いがあります。
また、起こる災害の種類も変わることがあります。
そういった、災害の発生にすすんでいく「前提」が違うため、
作り方を分けているものです。

つくり方

今回は、東京都と茨城県の作成例を参考にして紹介します。
東京都および茨城県の資料をもとに筆者作成)

 ▶手順①: 避難する場所を記入する。
 ▶手順②: 避難情報や気象情報から避難のタイミングを考える。
 ▶手順③: 避難準備の開始・避難開始・避難完了を決める。
 ▶手順④: 避難開始までの行動を考える。
 ▶手順⑤: 地域に対しての行動を考える。

手順①: 避難する場所を記入する。

・避難場所、避難所を確認しましょう。
・災害種別によって、避難場所や避難所が違う場合があります。
・ハザードマップをもとに、浸水の深さを確認しましょう。
・浸水深は、絶対ではありませんが、浸水の進み具合の目安にもなります。
・住んでいる建物によっては、垂直避難ができる場合があります。
・2階やそれ以上の階など、上の階に避難することが適切な場合もあります。

手順②: 避難情報や気象情報から避難のタイミングを考える。

【第5回】防災気象情報
【第6回】防災気象情報
【第7回】避難所
【第8回】被害を避ける行動
【第18回】避難所アプリ
を参考にしてみてください。

・最も重要な情報は、自治体が発表する避難情報です。
・加えて、気象庁が発表する気象情報も大切です。
・多くの場合は、気象庁の発表とほぼ同時に避難情報が発表されます。
・ですが、これもゼッタイではありません。
・ですので、気象庁の情報も重要な情報源のひとつと筆者は考えています。

手順③: 避難準備の開始・避難開始・避難完了を決める。

・避難判断は、とても難しいです。
・「だいじょうぶだろう」という楽観視、「これまでも大丈夫だった」「お隣さんは避難していないようだから」というバイアス、「防災無線」から避難の情報が流れていないから、など、避難・防災行動を妨害するさまざまな「迷い」や「正常化」が作用します。
・「この情報なら、こういう行動をとる」と計画上で決めてしまいます。
・家族構成、例えば、高齢者がいる、小さい子供がいる、ペットがいるなどに応じたタイミングで決めてください。
・避難場所、避難所までの距離、使えそうな経路を参考にして時間を決めていきましょう。
・避難の経路上に「危ないところがある」ため、それを考慮することも大切です。

手順④: 避難開始までの行動を考える。

・避難開始までに何をするかを考えておきます。
【第10回】非常持出品①
【第11回】非常持出品②
を参考にしてみてもよいでしょう。
・「〇〇に連絡を入れる」
・「両親に避難を促す」
・「〇〇情報を確認する」
・「テレビをつける」
・「友人にも危険が高まっていることを共有する」
・「排水溝のゴミを取り除く」
などを書いておきましょう。

手順⑤: 地域に対しての行動を考える。

・まずは自分の安全確保が最優先です。
・その上で、地域への共助としてのサポートをお願いします。
・これも、日頃のご近所づきあいが大切です。

作成の便利アイテム

作成にあたっては、東京都の資料がひとつ役立つと思います。
あるいは、それぞれでオリジナルのマイタイムラインを作成しても構いません。

図5は、マイタイムラインを作成する際に、
河川情報のURLや、ライブカメラへのURLを
QRコードとしてあらかじめ準備しておくことができますので紹介します。

図5.情報源のQRコード化による整理(出所:「川の水位情報」をもとに筆者作成)

ここでは、Google Chromeで説明しています。
 ①「ページを共有」をクリック
 ②「選択画面」が表示されます。
 ③「QRコードを作成」をクリックします。
 ④「QRコード」が表示されます。
 ⑤「画像データ」をダウンロードできます。(写真ファイル)
 ⑥「画像データ」をマイタイムラインに貼り付けることができます。
 ⑦「QRコード」を使って、「情報収集板」を自作できます。
   …一回一回デフォルトから探しに行かなくても良いのでたいへん便利です。
 ⑧「ブックマーク」してデバイス内やパソコン内で整理することもできます。

「QRコードの読み取り」をすることができれば、
子どもも、高齢者も、重要な情報にたどりつくことができる
ひとつのツールにすることができます。

おわりに・・・

今回はマイタイムラインを紹介しました。
それぞれの家族構成や土地柄、建物の構造などから作成を試みてはいかがでしょうか。
防災行動は、災害が起こってからもですが、
災害を想定して、準備として行うことも含まれます。
災害が差し迫っているときは、
あせったり、気が動転したりと平常心ではいられないものです。
そこで、情報にすぐにアクセスできる日頃の準備はとても有効です。
そういった意味で、いざという時の頭と行動の整理に役立つと思います。
抜けや漏れも防ぐことができます。

本記事では、下記の視点を強調しておきたいと思います。
それは、「具体的に」「どこが」「どうなったら」「危険か
を検討しておくことです。
「〇〇市全域に避難指示が発表」と聞いても、
なかなかピンときません。
避難割合をみても、災害の起こった地域や災害の規模、調査の対象などから条件が全く違いますが、
被害が起こった災害でみても、十数%~60%くらいであったり、
被害が起こらない場合で避難指示が出ている場合では、0.数%という結果もあります。

例えば、2022年9月に発生した台風14号を紹介します。
広島市安佐北区と大竹市の一部地域で計7,389人を対象に、
警戒レベル5「緊急安全確保」が発表されました。
両市の他地域を含む13市町では、警戒レベル4「避難指示」が発表されました。
残る10市町は警戒レベル3「高齢者等避難」が発表されました。
指定場所への避難者は1,919人だったということです。(出所:中国新聞デジタル2022.9.21 7時配信「台風14号、広島県内の避難わずか0・1%」より筆者修正)

必ず避難しなければならないわけではないこと、
避難にも垂直避難といったパターンがあること、
避難先は指定場所とは限らないことなどを考慮は必要です。
ここにきて、自治体や気象庁からの情報でもって「よし、避難しよう!」
とはなかなかいかないことをふまえておく必要があります。

そこで、本記事では、具体性をもたせた
 ①「〇〇川」
 ②「〇〇川の△△地点」
 ③「②の水位とその変化」
 ④「②のライブカメラ画像」
を避難判断の情報源として準備しておくことの大切さを強調しておきます。

そのために、上記「手順②」で触れた過去の記事を参考にして情報を得たり、
「作成の便利アイテム」で紹介した情報整理を準備しておくなど、
避難を後押ししてくれる情報を積極的に準備しておこうという取り組みです。

自分のいる場所に直接影響のある箇所でリスクが急激に高まっている
そういった情報も入手されることを推奨します。
そして、それをぜひ、マイタイムラインとミックスさせて準備していただければと思います。

さいごに、
今回説明した情報へのアクセスが苦手な人もいるかと思います。
そのような人のためにも、アクセスできる人はサポートをお願いします。
マイタイムラインを作るサポートや、
マイタイムラインの各段階で実際にサポートに介入するなど、
実現性ある方法を検討し、準備し、取り入れていただければうれしいです。

参考までに筆者は、知人に対して、
リスクの高い状況になると状況をスクショしプッシュ型で送信
することもありました。(台風、豪雨、暴風雪、噴火で経験)
そういったサポートの方法など、いろいろ工夫はあると思っています。
知った「今がスタートライン!」です。

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