【第34回】 不慮の事故(子ども):傾向を知ることで対策に活かそう!

事故
スポンサーリンク

今回は、「子ども不慮の事故」をテーマにします。

不慮の事故と言ってもたいへんたくさんの種類がありますが、今回は統計的な結果から、その発生件数や割合として傾向を知っていきたいと思います。

不慮の事故の傾向を知ることで、対策へと活かしていくことができれば、本ブログが願っている明日がきっと訪れてくれると思いますので、ぜひご活用ください。

今回ご紹介する内容は、
「厚生労働省・消費者庁(2021),子どもの不慮の事故の発生傾向~厚生労働省「人口動態調査」より~,子供の事故防止に関する関係省庁連絡会議、消費者庁消費者安全課」(以下、「厚労省等資料」という)です。

不慮の事故

子どもの死因の全体像

図1.死因順位(令和2年)(出所:厚労省等資料)

子どもの対象年齢は「0~14歳」として整理されています。

・図1からわかるように、先天性の疾患や異常、原因不明の死因、を除けば、
 不慮の事故がたいへん大きな割合を占めていることがわかります。

子ども(0~14歳)の不慮の事故等死者数

図2.不慮の事故等死者数(出所:厚労省等資料)

・不慮の事故の死者数は、全体として減少傾向にあります。
・交通事故による死者数も減少傾向がわかります。

子ども(0~14歳)の不慮の事の死因別死亡者数

図3.死因別死亡者数(出所:厚労省等資料)

・ここでは、
 ▶ 交通事故
 ▶ 窒息
 ▶ 溺死・溺水
 ▶ 転倒・転落・墜落
 ▶ 煙、火災等
 ▶ 自然災害
 ▶ その他
 という項目で整理されています。

・「交通事故」、「窒息」、「溺死・溺水」がたいへん多いことがわかります。

不慮の事故の死因別死亡者数(年齢別比率)

図4.不慮の事故の死因別死亡者数(年齢別比率)(平成28年~令和2年)
(出所:厚労省等資料)

年齢、死因の傾向がわかると思います。
▶0歳…窒息がたいへん多く、次いで、交通事故溺死・溺水
▶1歳…窒息交通事故溺死・溺水
▶2歳…交通事故がたいへん多く、次いで、窒息溺死・溺水
▶3歳…窒息交通事故溺死・溺水転倒・転落・墜落
▶4歳…窒息交通事故溺死・溺水転倒・転落・墜落
▶5歳…交通事故溺死・溺水転倒・転落・墜落
となっています。
0歳は、まだ自分の力で動くことは難しい発達段階ですが、
窒息という死亡の原因が顕著に判明しています。

年齢別の詳細順位 1位~5位

図5.年齢別の詳細順位 1位~5位(出所:厚労省等資料)

▶0歳…ほとんどが窒息です。
     ベッド内
     胃内容物の誤嚥(ごえん)
     食物の誤嚥
     詳細不明

    がその内訳になります。
    第3位に交通事故が入っています。
▶1歳…交通事故溺水(浴槽)溺水(その他)窒息
    1歳になると、交通事故溺水上位に入ってきます。
▶2歳…2歳になると圧倒的に増えてくるのが交通事故です。
    発達段階からも明らかですが、行動が活発になることが背景にあります。
▶3歳…交通事故溺水とともに、転落(建物)が上位にあがってきます。
    活動が活発になるとともに、好奇心も大きくなることが背景として考えられます。
▶4歳…交通事故とともに転落(建物)が上位を占めてきます
    煙・火災等溺水窒息(食物の誤嚥)です。
▶5歳…交通事故約半数に近づきます。
    溺水(浴槽)溺水(自然水域)転落(建物)が上位を占めています。
▶10歳…交通事故溺水(浴槽)溺水(自然水域)転落(建物)が多いです。

年齢別の事故発生場所

図6.年齢別の事故発生場所(出所:厚労省等資料)

年齢別にその事故発生場所を整理したものです。
▶5~14歳…家庭、その他としては「海・川等など自然水域での溺水事故」がほとんどです。
▶1~4歳…家庭がほとんどです。
▶0歳…家庭がほとんどです。

0歳から幼児期中期頃までは、行動が自立していないこともあり、行動範囲の多くは家庭に限定されます。そこでの事故ということです。

一方で、5~14歳にもなると、行動範囲が少しずつ拡大していきます。
行動範囲だけでなく、社会生活上の関係性(社会性)も拡大していきます。
そのため、家庭ではないところで事故が発生していることが確認できます。
事故の多くが自然水域で発生しており、それが溺水事故ということも知ってくことが重要でしょう。

窒息事故の原因と年齢

図7.窒息事故の原因と年齢(平成28年~令和2年)
(出所:厚労省等資料)

▶窒息事故は圧倒的に、発達段階が未熟なほど発生しています。
▶0歳…圧倒的にベッド内での窒息が多いです。
    胃内容物・食物の誤嚥も多いです。
    その他の物体の誤嚥もたいへん多いです。
▶成長や発達段階が進むにつれて、少しずつ自分で食べ物を口に運ぶことができるようになります。
 未熟な段階(乳児~幼児~小児全般)では、飲み込みも未熟です。
 それだけでなく、食べること自体(食べ方)も日々学習のさなかにあります。
 また、「食べ物だけでなくても口に運んでしまう」ことがあります。
 それらを飲み込んでしまうことで起こるアクシデントが多いです。

建物からの転落事故発生場所

図8.建物からの転落事故発生場所(平成28年~令和2年)
(出所:厚労省等資料)

▶平成28年~令和元年の5年間で47件の死亡事故が発生しています。
▶10年前と比べ、減少傾向にあるというデータがあります。
▶多くが家庭で発生しています。

事故発生の状況として、
マンションのベランダの椅子に乗り転落
マンションの部屋の出窓から転落
友人と遊んでいて、自宅ベランダから転落
マンション屋上の天窓のガラスが割れ転落
戸建2階の部屋の窓から転落
学校の2階の教室窓から転落
というように、日常の中に転落のリスクが多くあるということが一例で紹介されています。

溺水事故の年齢及び場所別発生件数

図9.溺水事故の年齢及び場所別発生件数(平成28年~令和2年)
(出所:厚労省等資料)

▶平成28年~令和2年の5年間で278件死亡事故が発生しています。
浴槽での溺水131件と最も多く、次いで海、川等 自然水域での溺水事故が99件です。
▶年齢別には、0歳~1歳は浴槽での溺水、より活動的になる5歳以上で自然水域での溺水事故が最も多く発生している。と分析されています。

事故発生の状況として、
1人で入浴していた、様子を見たらうつぶせで浮かんでいた
親と一緒に入浴し、少し目を離した時に、うつぶせで浮かんでいた
海、川、池やため池で遊んでいる時溺れてしまった
幼稚園学校プール溺れてしまった

現状と傾向から何を教訓とするか~不慮の事故~

年齢が低いほど、保護者による監護が必要になります。
年齢が低いほど、目を離す時間を少なくしなければなりません。
年齢が増すにつれて、成長に伴いさまざまな行動様式が変化していきます。
行動様式の変化に応じたリスクを知っておく必要があります。
多くの事故は、多くの傾向を示してくれています。
もちろん、例外的な事故事例も数の中にはあります。
その希(まれ)な事故を観ないのもリスクです。
傾向として確認できている事故のほか、
希(まれ)な事故からもその傾向をつかもうとすることも大切です。

以上のことから、自分や大切な人たちの生活の中にある、
日々のあたり前な生活と隣り合わせに存在するリスクをぜひ知っておきましょう。
知ることで対策を立てることができます。

おわりに・・・

第31回ではハインリッヒの法則
第32回ではスイスチーズモデル
第34回ではスノーボールモデル
をご紹介しました。
普段の何気ない日常生活をしていて、
 「ヒヤッと」
 「ハット」
 「ちょっとケガした」
 「危なかった」
 「けっこう大きなケガになった」

等がありましたら、
それは重大事故(アクシデント)へ向かうサイン(兆候)だという受け止めをしておくことが肝要です。
 「うちの子はよく○○するんです」
これも大切なサイン(兆候)のひとつです。

事故は起こらないことが一番です。
日常の傾向の中に、そういったリスク回避のヒントや対策のための糸口が隠れています。
ぜひこれを機会に、自己点検(セルフチェック)を試みてはいかがでしょうか。
起こる事故がヒヤリハット以下のレベルに抑え込むことができればいいなと思います。

参考…
  「子どもは静かに溺れます
という言葉をご存知でしょうか。

図10.子どもは静かに溺れます(出所:佐久医師会

これは「佐久医師会」が提供しているものです。
作者もたいへん共感しています。
子どもは、窒息するにしても、溺水状態でも、
その発生しているときは、たいへん静かに状況が進んでいます
溺れいているときに
「助けて~」バシャバシャ、とか
「溺れる~」バシャバシャ、といった
マンガ・アニメ・ドラマ・映画にあるような演出は実際の現場では発生しないことがほとんどです。
したがって、家庭内での入浴時屋外での水域での活動など、
まずは目を離さないことが事故防止」なのだと肝に銘じて日々の生活を送っていただきたいと思います。
そして、もしも目を離さなければならないときがあるとするならば、
溺れたり、転落したり、何かに接触したりするような状況にならない場所に、
一時離してから、
せめて目を離す時間だけはそういった安全な場所で過ごさせて欲しいと思います。
それがリスクを小さくする行動のヒントになるのではないでしょうか。
そういった心掛けが重大事故を防いでくれます。
知った「今がスタートライン!」です。

タイトルとURLをコピーしました