今回は「認知症」をテーマにご紹介します。
「認知症」は、知的機能の後天的な低下と言われています。
加齢にともなう「物忘れ」とは違う性質をもっています。
認知機能の低下による生活への影響は、ときに命に関わることもあります。
「認知症」を知ることで、適切な対処へとつなげていきましょう。
「認知症」を知ることで、不測の事故などの予防にも役立てましょう。
認知症
認知症とは?
「認知症」とは、「いったん正常に発達した『記憶』『学習』『判断』『計画』といった脳の知的機能(認知機能)が、後天的な脳の器質障害によって持続性に低下し、日常・社会生活に支障をきたす状態をいう。」(出典:病気がみえるvol.7,第1版)
アルツハイマー型認知症は、認知症の中で最も多く、脳神経が変性して脳の一部が萎縮していく過程でおきる認知症です。(変性性認知症)
次いで多い血管性認知症は、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害によっておきる認知症です。(脳血管性認知症)
(出所:厚生労働省,みんなのメンタルヘルス)
物忘れと認知症の違い
・歳をとると、年齢相応の物忘れはみられます。
・これは自然な現象です。
・一方、認知症は、脳に明らかな異常が出現している疾患です。
一方的な決めつけ、先入観、社会的烙印(らくいん)にならないよう気をつけましょう。
症状
認知症の症状として、「中核症状」と「行動・心理症状」(BPSD:中核症状に付随して起こる二次的な症状のこと)があります。
なお、「行動・心理症状」には周囲から見ると、「妄想」等も、本人なりの背景や理由があると言われています。
(出所:厚生労働省老健局(2019),認知症施策の総合的な推進について(参考資料))
原因
図3にように、認知症は分類されています。
冒頭では、大きく「変性性認知症」と「血管性認知症」に分類される話をしました。
変性性認知症の内訳は、
▶アルツハイマー型認知症
▶レビー小体型認知症
▶前頭側頭型認知症
です。
図4は、その患者数の割合を示しています。
軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)
概要
・正常と認知症の中間の状態
・物忘れはあるが、日常生活に支障がない。
・年間10~30%が認知症に進行する。
(正常な人からは年1~2%が認知症発症)
・一方、正常なレベルに回復する人もいる。
・認知症治療薬の効果はないとする研究が多い。
認知症の前段階にあるといわれることもあります。
軽度認知障害です。
認知症までは至らないが、記憶など認知機能の低下が年齢相応以上に認められる状態言います。
長谷川式簡易認知症評価スケール(HDS-R)
これは、1974年、長谷川和夫氏によって開発されました。
1991年に改訂版が発表されました。
30点満点中、20点以下で認知機能低下(認知症の疑い)と判断しています。
自宅などで個人が行う場合などは、この点数をもって認知症であることを確定させるものではありませんので念のためご注意ください。
また、この点数をもって認知症として対象者を扱うことがけっしてないよう留意ねがいます。
診断にあたっては、かかりつけ医に相談するか、専門医の診断を受けるようにお願いします。
おわりに・・・
2012年時点ですが、高齢者の約4人に1人が認知症または軽度認知障害(MCI)と言われています。
2018年時点では、約7人に1人が認知症というデータがあります。
(出所:厚生労働省老健局(2019),認知症施策の総合的な推進について(参考資料))
認知症もまた国民病のひとつと言えるのではないでしょうか。
認知機能に異常が出現することへの対応はたいへん重要です。
本人に自覚がないため、身近にいる人の気づきから始まる対処がとても重要ということです。
また、身近ではなくても、社会にはそういった認知機能に異常を抱えた人が少なからず生活されていることへの配慮も大切です。
時として、災害に巻き込まれたり、交通事故というトラブルや、万引き・窃盗という犯罪のほか、公共交通機関の死亡事故トラブルといった最悪の事態へと進展してしまうこともあります。(認知症である人が自動車を運転しているケース、認知症の人が踏切内に入ってしまって事故にあうケースなど)
認知症の発症には、生活習慣が影響しているという研究があります。
歯周病(口腔ケア不足という生活習慣)が認知症の発症と関係が深いことも明らかになっています。
完全には解明されているわけではありませんが、少しずつ発症のメカニズムは解明されています。
生活習慣や行動パターンの見直しにより望まない結果を予防できるようぜひご活用ください。
最後に、数は少ないのですが、
・高齢者が運転する車が前後左右キズだらけ
・駐車場で20回以上も切り返ししている高齢運転者
という状態をこれまで見たことがあります。
(筆者はこれまで1度だけ、①高齢運転者、②キズだらけの車、③何回も切り返して駐車できない人、という①②③がそろった人を見かけたことがありました。声をかけることができなかったことに今でも反省しています。そのとき約束の時間があったとは言え、誰かにお願いするなど介入の方法はいろいろあったとたいへん未熟な自分を反省しました。)
また、認知症とは関係ありませんが、
・身体機能が低下したことで、運転に支障がある人がいます。
(例:足の機能低下、白内障・緑内障、老人性難聴など)
疾病が原因で自覚できない人もいますが、
自覚していながら、安全運転ができると自負している人がいることも問題があります。
やむを得ず運転している人もいるのかもしれません。
身体機能の低下は、運転者として安全へのリスクになります。
不安全状態であることを認めることができない人への対応もまた喫緊の課題かもしれません。
身近にそういった人がいる場合は、関係者で相談してください。
もし自分が「自分は大丈夫」と思っている人は、周囲に相談をお願いします。
住んでいる土地や家庭環境によっては、車を手放せない場合もあるかも知れません。
そういった人は、周囲への相談をお願いします。
かかりつけの先生や介護度・障害度認定手続きを担当するケースワーカーなどに相談もできます。
認知症を知り、対処へとつなげていく行動を心がけていただけると助かります。
知った「今がスタートライン!」です。