【第49回】 高齢者(転倒):「ころぶ」が命取りになることも!

事故
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今回は「高齢者(転倒)」です。

転倒」にはいろいろな原因・状況があります。

また、「転倒」により命を縮めてしまうもあります。

実は、日常生活にあるたいへん恐ろしいイベントです。

転ぶ」ということがもたらすリスクを知り
望まない生活」を回避・予防していきましょう。

転倒

転倒事故の発生場所別件数

図表1.転倒事故の発生場所件数
(出所:消費者庁,毎日が転倒予防の日,令和3年10月6日)

図表1は、転倒事故の発生場所別件数です。

住宅での転倒・転落の発生がほぼ半分を占めています。

一般道路や民間施設での発生も多いです。

日常を送る場所のすべてに転倒の危険があるという受け止めが重要で。

年代別・男女別件数(上記、住宅発生299件の内訳)

図表2.年代別・男女別件数
(出所:消費者庁,毎日が転倒予防の日,令和3年10月6日)

図表2は、図表1「住宅発生299件」の内訳からみた、
年代別・男女別件数
の状況です。

女性が男性よりも多い傾向があります。
また、どの年代にも事故が発生していることがわかります。

症状別・処置見込み別件数(住宅発生299件の内訳)

図表3.症状別・処置見込み別件数
(出所:消費者庁,毎日が転倒予防の日,令和3年10月6日)

図表3は、症状別・処置見込み別件数(住宅発生299件のうち)です。

擦過傷・挫傷・打撲傷 134 件で最多です。
骨折85 件で次いで多く発生しています。
 骨折では、要入院66件78%)、要通院17件20%)です。
頭蓋内損傷では、要入院13件93%)。死亡の2件はともに内臓損傷です。

骨折の部位別件数(住宅発生・骨折事故85件の内訳)

図表4.骨折の部位別件数(住宅発生・骨折事故85件の内訳)
(出所:消費者庁,毎日が転倒予防の日,令和3年10月6日)

図表4は、骨折の部位別件数(住宅発生・骨折事故85件の内訳)です。

足が約半数を占めています。
足が負傷するということは、その程度(図表3)も含めて考えますと、
その後の生活レベルがかなり低下してしまうことが容易に推測できます。
つまり、生活レベルの低下が、
新たな疾病体力低下機能低下につながるリスクになるということです。

事実、健康で、若い世代であっても、
足を骨折すると行動範囲に与える影響はどうなるでしょうか。
スポーツをされている人なら、
筋力やパフォーマンスが著しく低下してしまう経験をしたことがある人もいるかもしれません。

実際に足を骨折したことがある人も経験されているかもしれません。
行動範囲は狭まるだけでなく、行動の量も大きく減少してしまうことを。

65歳以上の不慮の事故による死因のうち「転倒・転落・墜落」及び「交通事故」による死亡者数の推移

図表5.65歳以上の不慮の事故による死因のうち「転倒・転落・墜落」及び「交通事故」による死亡者数の推移
(出所:消費者庁,毎日が転倒予防の日,令和3年10月6日)

図表5は、65歳以上の不慮の事故による死因のうち「転倒・転落・墜落」及び「交通事故」による死亡者数の推移です。

交通事故」による死亡者数は、警察当局、交通関連企業の取り組み、交通社会人の法令順守意識やマナーの向上などにともない減少傾向にあることがわかります。

一方で、「転倒・転落・墜落」による死亡者数は近年横ばいであることがわかります。

つまり、時間の経過とともに減少に進んで欲しい死亡事案が、
こと「転倒」にあっては、わずかに増加し続けていることを意味しています。

2020年では、高齢者の「転倒・転落・墜落」による死亡者数
交通事故」の約4倍であることを確認することができます。

65歳以上の家庭における「転倒・転落・墜落」による死亡者数の推移

図表6.65歳以上の家庭における「転倒・転落・墜落」による死亡者数の推移
(出所:消費者庁,毎日が転倒予防の日,令和3年10月6日)

図表6は、65歳以上の家庭における「転倒・転落・墜落」による死亡者数の推移です。

毎年ほぼ横ばいで推移しています。

スリップ,つまづき及びよろめきによる同一平面上の転倒」と
階段及びステップからの転落及びその上での転倒」を比較すると、
80歳以上スリップつまずき及びよろめきによる同一平面上での転倒顕著に多い。
という結果が出ています。

つまり、段差がないと安心しているフロア、畳、床面でも、
つまずいたり滑ったりよろついたりすることによる
事故の発生があるということです。

バリアフリー化の流れにともない、
家の中の段差がないという住居も増えてきました。

一方で、高齢者が住む住宅は、従来の構造である場合も多くあり、
 ・玄関まで階段
 ・玄関土間(靴を脱ぎ履き、脱いだ靴を放置する面)に上がるための段差
 ・玄関土間から上がり框(かまち)の段差
 ・上がり框と玄関ホールとの段差や仕切り
 ・玄関ホールとリビングとの段差
 ・玄関ホールとトイレの段差
 ・和室の段差
 ・リビングとダイニングの段差
 ・浴室と更衣室の段差
 ・更衣室とその手前での段差
 ・…
などがあります。
平面がほとんどといったような構造のお宅はたいへんめずらしいのかもしれません。

家での平面でのつまずきもありますし、
外での平地でのつまずきもあります。
靴が原因で転倒することもあります。
(厚底や素材によりつまずきやすいものがあるということです)
安価な靴を求めるがあまり、
はやりのスリッパを選んでしまったことにより、
つまずきやすい履物を選んでしまっているかもしれないことに気を付ける必要があります。

また、
路面がぬれていることによるスリップ、
凍結によるスリップ
路面の材質(鉄板、マンホール、網…)などによりつまずき易さに影響を与えます。

歩く場所のすべてにリスクがあると思っても良いかもしれません

転倒を防ぐには?

データからみる気づき

転倒・転落・墜落による
 ▶発生場所
 ▶年齢
 ▶ケガの状況
 ▶ケガの部位
 ▶交通死亡事故との死亡者数の比較
 ▶平面・階段での転倒状況
を見てきました。

それでは、転倒によるケガや死亡事故を減らすためにはどうしたらよいでしょうか。

重要なポイントは
 ポイント①:自分の足腰の健康レベルをわきまえること
 ポイント②:急がないこと
 ポイント③:転ぶことを念頭にあること

になると考えています。

年齢とともに、歩くことに必要な
筋肉、判断力、機敏さ、転んだ時の対処力など
が低下していきます。

そのため、
①:まずは自分の足腰の健康レベルを過信しないことが重要です。
  謙虚に自分の健康レベルを受け止めて頂きたいとおもいます。
  いつまでも若くはありません。
  はきはきと歩くことと、過信することは違いますから、
  はきはきと歩く中で、自分の健康レベルを謙虚に受け止めて頂きたいです。

②:次にけっして急がないようにお願いします。
  急ぐことで、安全配慮が散漫になり、低下したりします。
  あるいは、足は年齢相応に前に進んでいる中、
  気持ちが先行し、体は前のめりになってしまうこともあるでしょう。
  そうなると、つまずいた瞬間に一気に転倒へと進んでしまいます。

③:最後に「転ぶかも?」と警戒しながら歩くようにしましょう。
  ①②にも共通することですが、
  自分の現状に謙虚でいることが、
  いろんな段階にあるリスクを避けることにつながり、
  例え一つのエラーにより危ない状況に陥っても、
  ケガを免れたり、大事には至らないような結果にしてくれるでしょう。

小括

多くの転倒では、大事に至らないことでも、
今回のデータが示すようなケース(大けが、死亡事故)に自分がなってしまうこともあるのです。
これは防ぐことができる転倒やケガや死亡になりますから、
ぜひとも予防していただきたいと願っています。

庭木の作業、
高所作業、
屋根の作業、
屋根の雪下ろしの作業
時間に余裕のない作業
次に予定を控えた作業

いろいろな要因が安全への配慮を散漫にしてしまうため、
慣れたことでも、警戒と安全への余裕と対策をして作業などをされてください。

プライドが高い人、
まだまだ自分は若いと思っている人
自分の加齢による変化を受容できない人
強がる人、
大丈夫だと楽観視・軽視する人

はたいへんリスクが大きいといえます。

これまでの人生で、おっちょこちょいなケガをしたことがある人も、
特に注意が必要でしょう。
周りにいる家族や友人などからそのような指摘を受けたことがある人もまた、
ぜひ気を付けていただきたいと思います。

おわりに・・・

今回は「転倒」を扱いました。
日常に潜むたいへん危険な出来事だと思っていまっす。

筆者は過去に、高齢者が暮らす家の中の転倒リスクを評価し、
リスクの高い家具などは買い替えの助言をしたことがあります。

その「転倒予防介入」事例では、
居住者がつまずきにより骨折したという事例があったことをきっかけに介入を決めました。

すでに6年以上が経過しましたが、
今のところ無事な暮らしが続いていると聞いています。

介入には程度があります。
家の構造に手をつける場合もあるかも知れません。
しかし、費用がかかってしまいます。
金銭面での負担にも配慮し、
転倒リスクとなる構造物の100%すべてを改善できなくても、
暮らし方や生活への注意点を正しくエビデンスに基づいて共有し、
当事者に実践していただくことで、
かなりの程度で安全な暮らしにつなげていくことができると思っています。
いわゆる「知ることで防げる悲劇」のまさに実践者になってもらうということです。

「高齢者が、望む生活レベルの月日をできるだけ最期のギリギリまで延伸して欲しい。」

そのような願いから、先ほどの介入を試みました。
また、筆者の知人にはそのようにアドバイスしています。
みなさんもぜひ参考にしながら実践してみてはいかがでしょうか。
知った「今がスタートライン!」です。

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