【第51回】 安全保障(中台問題):イアン・イーストン論文からみてみる台湾情勢

原則(principle)
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今回は「中台問題」です。

国家安全保障の話はとてもデリケートなため、半ば抽象的になります。

ここでは、「イアン・イーストン論文」から台湾問題をみてみたいと思います。

イアン・イーストン

・米国シンクタンク機関「Project 2049」のシニア・ディレクター
・米海軍分析センターの分析官
・2013年夏、公益財団法人日本国際問題研究所の客員研究員
・国立経済大学(台湾)の中国研究分野において修士号を取得
・イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校(米国)の国際学分野で学位取得

・台湾や中国本土での5年間の滞在経験
・「The Chinese Invasion Threat」2017年出版
・「China’s Top Five War Plans」2019年1月6日公開(※1)

5つの戦争計画

はじめに

ここでのご紹介は、※1「China’s Top Five War Plans」(2019年公開)に基づきます。
Project 2049 Institute
また、書籍「台湾有事と日本の安全保障」(渡部悦和ほか,2019)を参照しています。

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5つの戦争計画の概要

①台湾への大規模統合火力打撃作戦

Joint Firepower Strike Operations Against Taiwan

【作戦目的】
・台湾の軍事、政治、経済面における重要目標へのミサイル攻撃、航空攻撃し、
・台湾の防空能力の破壊、中国共産党に抵抗する意志を低下させる。

②台湾への大規模封鎖作戦

Joint Blockade Operations Against Taiwan

【作戦目的】
・サイバー攻撃、電子攻撃(電波妨害など)、ミサイル攻撃、航空攻撃、海上攻撃、攻撃的機雷戦を駆使して、台湾を封鎖し孤立させる作戦

③台湾への統合侵攻作戦

Joint Attack Operations Against Taiwan

【作戦目的】
・全面的な着上陸作戦
(ヘリコプターや空挺部隊による着陸作戦と揚陸艦や上陸用舟艇を使用した上陸作戦)
・火力打撃作戦と封鎖作戦の成功後に行う作戦

④統合対航空作戦

Joint Anti-Air Raid Operations

【作戦目的】
・中国本土近くに存在する米軍部隊を人民解放軍、武装警察、民兵などで攻撃する作戦
・特に米軍の攻撃への対処を重視した作戦

⑤国境地域統合作戦

Joint Border Area Operations

【作戦目的】
・国境地域におけるインド軍やチベット義勇兵の攻撃に対処する作戦

5つの戦争計画の位置付け

各種計画は、相互に関連しています。
各種計画は、同時に実施されることがあります。
各種計画は、独立的に実施する場合もあります。
各種計画は、これを支援する各軍の作戦が付随して遂行されることがあります。

5つの戦争計画からみえるもの

作戦領域のマルチ化=マルチドメイン

・作戦が遂行される領域=マルチドメイン
 ▶陸上
 ▶海上
 ▶航空
 ▶宇宙
 ▶電磁波
 ▶サイバー
という、6つの作戦領域が定義されました。

アメリカは、宇宙軍を2019年12月創設、
日本は、宇宙作戦隊を2022年3月創設、
日本は、サイバー防衛隊を2022年3月再編成しています。
日本は、「多次元統合防衛力」や「領域横断(クロスドメイン)」という言葉を使用するようになりました。
筆者の確認した範囲では、平成31年度以降の防衛大綱(30大綱)(2018.12.18閣議決定)から公式に使われているという認識です。

中国人民解放軍が構想する環境構築の本質

重要な視点として
・台湾国内における中国に対する抵抗意志を低下させたい。
・中国、台湾を除く勢力の関与レベルを低下させたい。
・複数正面対応を回避させたい。
があると捉えることができる内容になっています。

おわりに・・・

今回は「中台問題」をとり上げました。
特に、イアン・イーストン論文をもとに、書籍「台湾有事と日本の安全保障」を参照しながら紹介しました。
参照した書籍は、日本の自衛隊の元陸将、元空将、元海将のみなさんが書かれています。
必ずイアン・イーストン論文の戦争計画のとおりに事態が進むとは限りませんが、
分析された内容に関する大枠での構想はご理解いただけたのではないかと考えています。

一方で、日本としては、日本としてだけでなく、
当事国や周辺国や世界の国々は戦争を望んでいません。
望んでいませんが、情勢の変化にともない今回ご紹介の内容が存在してしまっている以上、
当事国や関係国・隣国・周辺国としては必要な準備を整えていかねばなりません。

「日本が防衛力を強化すると、周辺国を刺激して周辺国の軍事力を強化させる」
という指摘をする人がいるかもしれません。

「情勢を鑑みると必要な対応は自ずと導出されるものです」

話は変わって、
どの分野も「進歩・成長・発展・変化」が重要という見方は大切です。
人類の「進化」にも例えることができるのではないでしょうか。
ですから、「環境に適合」するために「進化」が必要で、
まさに、種の存続と繁栄のおおもとにあるものが「環境への適合」と言えるでしょう。

そういった意味で、防衛力は必要な「進化」という見方が自然なのではないでしょうか。
(どの時期までに、どういった種類で、どれくらいの量を、どう使うか、など
 …にはここでは言及しませんが。)

環境/情勢/変化/思惑/傾向/兆候/戦略/計画/事実との
 ▶「適合性」
 ▶「均衡性」
 ▶「相対性」
との相互関係に基づく体制と態勢を整えていくことがとても大切だと考えています。
防衛力整備のための基本原則と言えます。
(筆者(20XX)「防衛比例原則」←【第52回】で説明しています。)

政治は政治で、
外交は外交で、
防衛は防衛で、
経済は経済で、
環境は環境で、
人権は人権で、

といったように、日頃、当局にはそれぞれの役割を進めていただいています。
筆者も応援しています。
みなさんもぜひ当局の準備や環境整備を前向きに受け止めて頂ければありがたいです。

「けっして相手が自分に攻めて来ないとわかっていても、
 軍事的手段で相手を刺激したら、
 ただでは済まないことを、そして、
 間違いなく軍事的手段を行使した側が重要な大部分を失うことになってしまうこを」
受け止めておくことが必要でしょう。

平和であることは、たいへんな多くの人びとの努力の成果でもあります。
そういった時間がいつまでも続くことを願っています。
知った「今がスタートライン!」です。

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