今回は「北新地ビル放火事件」についての
「大阪市北区ビル火災を踏まえた今後の防火・避難対策等に関する検討会報告書(令和4年6月)」
(出典:総務省消防庁)
をご紹介します。
報告書の検討結果
1 検討の背景等
(1) 背景
令和3年 12 月 17 日に大阪市北区において多数の死傷者を伴うビル火災が発生した。
このことから、この火災の原因調査の結果等を踏まえ、階段が1つしか設けられていないビル等において今後取り組むべき防火・避難対策等について検討したものである。
(2) 検討体制等
「大阪市北区ビル火災を踏まえた今後の防火・避難対策等に関する検討会」(以下「検討会」という。)を開催
【委員】(◎:座長、○:副座長、▶:メンバー)(敬称略 五十音順)
▶河本 志朗 日本大学危機管理学部教授(警察官、警察官僚など経て現職)
▶高 黎静 千葉科学大学大学院危機管理学研究科教授(専門:燃焼学 、火災学 、安全工学)
▶河野 守 東京理科大学理工学研究科国際火災科学専攻教授(専門:建築構造・材料 (火災安全工学))
○小林 恭一 東京理科大学総合研究院教授(建設官僚、自治省消防庁官僚、総務省国民保護・防災部長などを経て現職)
◎菅原 進一 日本大学大学院教授(研究:消防防災、建築防火)
▶関澤 愛 東京理科大学総合研究院・火災科学研究所教授(専門:建築防火、都市防火、避難安全等)
▶土橋 律 東京大学大学院工学系研究科教授(専門:安全工学、火災・爆発安全)
▶中川 丈久 神戸大学大学院法学研究科教授(専門:行政法全般、統治機構論、消費者行政等)
▶長谷見 雄二 早稲田大学名誉教授(専門:建築環境、建築設備)
▶柏木 修一 東京消防庁次長 ※令和4年3月 31 日まで
▶吉田 義実 東京消防庁次長 ※令和4年4月1日から
▶小西 一功 大阪市消防局局長
▶寺本 譲 大阪市計画調整局局長
【オブザーバー】
一般財団法人 日本建築防災協会
全国石油商業組合連合会
全国農業協同組合連合会
【事務局】
総務省消防庁、国土交通省住宅局
(3) 検討会等の開催状況
①第1回検討会(令和4年2月8日)
○ 火災の概要及び火災原因調査の中間報告について
○ 関係法令基準について
○ 過去の火災事例とその対応
②第2回検討会(令和4年3月 28 日)
○ 本火災の分析について
○ 緊急立入検査の結果について
○ 防火・避難対策及び危険物の取扱いについて
③第3回検討会(令和4年5月 17 日)
○ 本火災の追加分析について
○ 今後の防火・避難対策等について
④第4回検討会(令和4年6月 21 日)
○ 大阪市北区ビル火災に係る消防庁長官の火災原因調査結果報告書について
○ 今後の防火・避難対策等について
2 消防庁長官の火災原因調査結果
令和4年6月 21 日「大阪市北区ビル火災に係る消防庁長官の火災原因調査結果報告書(以下「火災原因調査結果報告書」という。)」参照。
3 火災シミュレーションによる避難可能性の検証
(1) 目的
避難可能性を検証
…廊下の扉と診察室の窓について、実火災と同じ条件とそれとは異なる条件でのシミュレーション
…待合室、廊下及び診察室
…ガス温度、一酸化炭素濃度、酸素濃度及び見透し距離
…経時変化について分析した。
(2) 火災シミュレーションモデルと入力条件
(3) 火災現場を元にした検証パターンでのシミュレーションの結果(パターン1~3)
(4) 現行の建築基準法令を踏まえた検証パターンでのシミュレーションの結果(パターン5、6)
(5) 考察
ア 診察室の窓の有無と一酸化炭素COの変化
図12は、パターン1及びパターン2のシミュレーション結果を踏まえ、各位置、各高さの一酸化炭素濃度の経時変化を比較検討したものである。
診察室の窓が無い場合、待合室、廊下、診察室のいずれにおいても一酸化炭素濃度は上昇を続け、時間が経つほどその上昇率は高くなった。
診察室の窓がある場合、特に診察室においては、一酸化炭素濃度は1.8m の高さであっても約 400ppm 以下となり、1m 以下の高さではほぼ上昇傾向がみられない。
一方で、待合室においては、火災発生直後は一酸化炭素濃度がより早く上昇するなどの影響もみられる。
イ 廊下の扉の開閉と一酸化炭素COの変化
図13は、パターン1及びパターン3のシミュレーション結果を踏まえ、各位置、各高さの一酸化炭素濃度の経時変化を比較検討したものである。
廊下の扉を閉鎖すると、扉に隙間があった場合でも、火災の影響は、廊下・診察室では大幅に抑制されることがわかった。
この傾向はガス温度、酸素濃度及び見透し距離の経時変化においても同様であった。
一方で、火災当初から扉が閉鎖している条件での結果であるため、実際の火災においては、扉の閉鎖を確実に行なうことが出来るか、または、扉が炎の影響を受けないものであるかについて、留意すべきである。
扉が開放されている場合、火災発生から数分で、廊下や診察室に多大な影響が出た。
例えば、1.8m の高さでは、火災発生後3分程度で廊下において、
また、4分程度で診察室において、
一酸化炭素濃度が1,000ppm(高度の意識障害の可能性、命の危険も) を超えた。
パターン5及びパターン6においても同様の傾向。
階段室の扉が閉鎖されている場合であっても、廊下の扉の閉鎖により、廊下・診察室への火災の影響を大幅に抑制できた。
ウ 階段室の扉の開閉
パターン5のように階段室の扉が閉鎖され、廊下の扉が開放されている場合、
区画が形成されず開いているのは待合室の回転窓の一部と、診察室の窓のみとなる。そのため、発生した火災は酸素を求めて伝播し、約 150 秒で廊下を通過後、約 250 秒で診察室に達し、約 270 秒で診察室の窓に達した。
また、不完全燃焼による一酸化炭素の濃度の急激な上昇、酸素濃度の急激な低下及び黒煙による見透し距離の急激な低下が出火箇所と同一の空間においてみられた。
ただし、前述のとおり、パターン6のように、階段室の扉が閉鎖されている場合であっても、廊下の扉の閉鎖により、廊下・診察室への火災の影響を大幅に抑制することができた。
(6) 火災シミュレーションによる避難可能性の検証結果のまとめ
階段と反対側の居室(本件火災では診察室となっている)に開口部がある場合、パターン2では診察室の窓が吸気口として機能し、一定の時間であればガス温度及び一酸化炭素濃度の上昇並びに酸素濃度及び見通し距離の低下が抑制される可能性がある結果となった。
一方で、パターン5では診察室の窓が排気側として機能し、煙の伝播を促す結果となった。
階段室の扉を閉鎖した場合、今回のシミュレーションでは、主要な外気の流入口である階段室が閉鎖されることで外気の流入箇所が限定され、不完全燃焼が急速に進んだ結果、一酸化炭素の濃度の急激な上昇、酸素濃度の急激な低下及び黒煙による見透し距離の急激な低下がみられた。
廊下の扉が閉鎖され火源とは隔離された場合には、扉に隙間(このシミュレーションでは扉の下端に1cm の隙間を想定している)があったとしても、廊下、診察室では、ガス温度及び一酸化炭素濃度の上昇、酸素濃度及び見通し距離の低下の影響を大幅に抑制することが出来た。
ただし、火災が急激に進展するガソリン火災においては、火災の輻射熱や煙による見透し距離が急速に低下しており(1分程度でほぼ0m となる)、このことを踏まえても扉の閉鎖を確実に行なうことが出来るか、また、扉が炎の影響を受けないものであるかについて、留意すべきである。
以上をまとめると、火災発生時には、速やかに火災発生場所と避難場所を閉鎖の確実性に配慮された扉で区画することが効果的であるといえる。
4 関係法令基準
(1) 消防法令上の基準
検討会報告書を参照ください。
(2) 建築基準法令上の基準
検討会報告書を参照ください。
5 緊急立入検査の結果
(1) 消防本部による緊急立入検査の結果
「大阪市北区で発生した火災を受けた緊急点検について」(令和3年 12 月 19日付け消防予第 600 号)及び「大阪市北区で発生した火災を受けた緊急点検の結果報告等について」(令和3年 12 月 24 日付け消防予第 601 号)による緊急立入検査の結果
▶調査対象:消防法第4条の2の2第2号に該当する防火対象物
▶調査期間:令和3年 12 月 17 日から令和4年1月 31 日まで
▶調査項目:避難施設(廊下、階段、避難口)及び防火戸の維持管理状況
▶調査結果:
・今回対象となった 31,967 件のうち、29,229 件に対して緊急立入検査を実施しており、実施率は 91.4%
・避難施設については 3,894 件(13.3%)で不備があったが、令和4年1月 31 日時点において 2,196 件改善済みとなった。
・防火戸については 1,455 件(5.0%)で不備があったが、令和4年1月31 日時点において 614 件改善済みとなった。
・今回の緊急立入検査時に併せて消防用設備等の維持管理等状況を確認したのは 13,979 件であり、そのうち 4,108 件(29.4%)で不備があった。
(2) 建築部局による緊急立入検査の結果
「大阪市北区で発生した火災を受けた緊急点検について」(令和3年 12 月 19日付け国住指第 1445 号)による緊急立入検査の結果
▶調査対象:消防法施行令第4条の2の2第2号に該当する防火対象物のうち、優先的に検査すべきもの
▶調査期間:令和3年 12 月 17 日から令和4年3月 28 日
▶調査項目:竪穴区画、直通階段等の建築基準法令違反及び維持管理状況
▶調査結果:
・今回立入検査対象となった 13,146 件のうち、10,994 件に対して緊急立入検査を実施しており、実施率は 83.6%
・竪穴区画については、建築基準法令違反が確認されたものが 861 件(7.8%)、不十分な維持管理状態※2が確認されたものが1,351件(12.3%)あり、それらのうち、是正指導を行ったものが 1,788 件(80.8%)、是正済みのものが 319 件(14.4%)
・直通階段については、建築基準法令違反が確認されたものが 408 件(3.7%)、不十分な維持管理状態※4が確認されたものが1,630件(14.8%)あり、それらのうち、是正指導を行ったものが 1,446 件(71.0%)、是正済みのものが 386 件(18.9%)
6 今後の防火・避難対策等
(1) 基本的な考え方
ア 総論
大阪市北区ビル火災は、大量のガソリンに着火した火災であり、一般の建物における可燃物の火災に比べ、延焼拡大が極めて速いものであったと考えられる。
このような大量のガソリンが建物内に存することは通常は考えられず、さらに、大阪市北区ビル火災は、当該建物における唯一の避難経路である階段付近で人為的に火災を生じさせるなど、在館者の避難を困難とする方法で放火されたものであり、建物における失火等の現行法令が想定する「一般的な火災」ではなく、「特殊な火災」にあたるものと考えられる。
このような特殊な火災に対しては、防火・避難対策等により十分な安全性を確保することは容易でなく、規制的な手法は社会への負担が大きいことから、誘導的な対策を基本とすべきである。
また、今般の火災建物のような直通階段が一つの建築物は、構造上、リスクを常に抱えており、そのリスクを平時から下げる対策を講じていくこととすべきである。
具体的には、以下の対策を講じるべきである。
① 直通階段が一つの建築物について、少しでもリスクを軽減するための誘導的な手立てとして、次の3つの切り口から、建築物や消防設備・防火管理等に係る対策について、行政による指導・誘導策や所有者等による自発的な対策などをパッケージとして提示。
▶建築物の安全性向上に向けた誘導策
▶安全性向上のための改修推進に資する既存不適格建築物の増改築等時の規制の合理化措置
▶法令に違反する建築物への是正指導の徹底対策
②被害を軽減することができる製品の技術開発の促進
③危険物の取扱いに係る適正な運用の徹底
イ 具体的な対策
①防火・避難対策
◆直通階段が一つの建築物に係る対策
・建築物の安全性向上に向けた誘導策
・安全性向上のための改修推進に資する既存不適格建築物の増改築等時の規制の合理化措置
・法令に違反する建築物への是正指導の徹底対策
◆研究開発
・ガソリン等による火災が発生した際に被害を軽減することができる製品の技術開発を促進することは、有効な対策の一つになり得ると考えられる。
②危険物の取扱い
ガソリンは国民生活に欠かせない物質であり、その販売規制については、国民の安全性と利便性のバランスを十分考慮すべきである。このため現在義務付けられているガソリンスタンドにおける顧客の本人確認等の適正な運用を徹底すること等に取り組むべきである。
(2) 具体的な対策
① 原則、直通階段又は避難上有効なバルコニーの設置により2方向避難を確保する。ただし、敷地制約等により2方向避難の確保が困難な場合は、人命保護のための補完的な代替措置として退避・救助等のためのスペースを確保する。
①-1 (原則)既存の直通階段から離れた位置への直通階段の増設又は避難上有効なバルコニーの設置
・直通階段が1つしかない建築物については、原則、以下のいずれかの措置を講じ、2方向避難を確保する。
-既存の直通階段から離れた位置に直通階段を増設する
-原則各階において、既存の直通階段から離れた位置に避難上有効なバルコニーを設ける
①-2 (補完的な代替措置)直通階段から離れた位置にある居室等の退避区画化
・敷地制約等により①-1の対策の実施が困難な場合は、消防隊が到着するまでの間、一時的に人命安全が保たれるよう、直通階段から離れた位置にある居室や廊下等の室、又はこれらの部分について、防火的に区画された退避スペース(以下、「退避区画」という。)を確保する。
・退避区画の確保にあたっては、以下の点を考慮すべきである。
- 退避区画は、居室単位で区画する形式(居室退避型)のほか、廊下を一定距離毎に区画する形式(水平避難型)が考えられる。
- 退避区画を構成する戸は、不燃性能・遮煙性能を有するものとし、想定する火災に応じてより高い遮炎性能を有する戸とすることも考えられる。
- 不燃性能・遮煙性能等を有する戸は、常時閉鎖式又は煙感知器連動の随時閉鎖式とし、ドアクローザーの設置等により避難時に在館者が開放した後に自動的に閉鎖するものとする。
- 退避区画を構成する壁は、原則、準耐火構造又は不燃材料とする。
- 退避区画付近や多数の在館者の目に触れやすい各テナントの出入口等の付近に、退避区画が設置されていること及びその機能を示す適切な表示を設ける。表示にあたっては、当該退避区画があくまで直通階段からの避難が不可能である場合における補完的な位置づけであることが伝わるよう配慮されたものとする。
- 退避区画には、原則、外部からの救助が可能で、かつ、人が乗り出せる大きさの開口部を設ける。
- 退避区画には、退避区画内から自主的に避難できる手段を確保する観点から、上記の開口部に一動作式の避難器具を設置する。退避区画に設ける避難器具は、消防法施行令第 25 条に基づく避難器具の設置義務が課されていない場合であっても、原則、消防法令に定める設置基準と同じ基準に適合して設置されるものとすべきである。しかしながら、今回の火災建物のように直通階段が一つの雑居ビル等においては、多くのケースにおいて、敷地境界線との間に十分な離隔距離を有さないことが想定されるところであり、避難器具の設置義務が課されていない防火対象物において、退避区画を設けることに伴い避難器具を自主的に設置する場合についてまで、消防法令に定める設置基準の全ての規定と同じ基準への適合を求めることは、建物関係者の負担が大きすぎると考えられる。このため、消防法施行令第 25 条に基づく避難器具の設置義務が課されていない防火対象物において、退避区画を設けることに伴い避難器具を自主的に設置する場合、建物へ堅固に取り付けるべきこと等の規定については、消防法令に定める設置基準と同じ基準に適合すべきであるが、降下空間、避難空地及び避難通路に係る規定については、安全性に配慮しつつ、消防法令に定める設置基準と同じ基準に適合しなくても差し支えないこととすべきである。
・ 退避区画は、原則各階に設けることが望ましい。
・ 本措置は、火災時の人命保護の観点から、直通階段が一つの既存不適格建築物に限らず、建築基準法において2以上の直通階段の設置を求められない建築物においても、新築・既築を問わず、講じる
ことが望ましい。
② 直通階段の防火・防煙区画化により避難経路を防護するとともに直通階段を介した上階への煙の拡散を防止する。
・今回の火災では火災階に被害が集中したが、火災階よりも上階に多数の在館者がいた場合、上階側においても多数の被害者が生じていたおそれがある。このため、直通階段について、遮煙性能を有す
る防火設備により防火・防煙区画化を完結させ、避難経路の確実な防護及び直通階段を介した上階への煙の拡散を防止することが極めて重要である。
・本措置は、火災時の人命保護の観点から、直通階段が一つで防火・防煙区画化されていない既存不適格建築物に限らず、建築基準法において直通階段の防火・防煙設置を求められない建築物や、直通階
段が2以上の建築物を含め、新築・既築を問わず、広く建築物全般において講じることが望ましい。
・所有者の改修負担軽減のための支援措置
・避難訓練指導
・周知等
・その他
・安全性向上のための改修推進に資する既存不適格建築物の増改築等時の規制の合理化措置
・2以上の直通階段の設置規定(建築基準法施行令第 121 条第1項)について既存不適格の場合(直通階段の増設等又は退避・救助等に有効なスペースの確保)
・直通階段の防火・防煙区画規定(同令第 112 条第 11 項等)について既存不適格の場合(避難経路の防火・防煙対策)
・法令に違反する建築物への是正指導の徹底対策
・研究開発
・危険物の取扱い
+αアルファの視点
学際的な分析プロセス( Multidisciplinary : 複数の学問領域)
筆者の
「医療」
「安全保障/防衛/軍事」
「防災・減災/危機管理」
といった各専門性を分野横断した思考過程で今回の課題に対する分析プロセスを回しました。
詳細なプロセスは紙面の関係で省略しますが、
▶「医療」視点では、
・病態生理の「メカニズム」を人と建物に投影しました。
▶「安全保障/防衛/軍事」視点では、
・「軍事技術的側面」から着想を得て、
・「火」「放火犯」「有毒物質」を仮想敵とした「安全」と「防御・離隔」を検討しました。
▶「防災・減災/危機管理」視点では、
・「有害」からの「避難」と「予防と防災」(予防災)を検討しました。
結果=+αとして、
▶「換気」がキーワードとして導出されました。
具体的には、
▶「一酸化炭素CO濃度」の軽減するための換気
▶「排煙」のための換気
▶「酸素O2の確保」のための換気
▶「延焼の誘導可能性」を検討するための換気
になります。
いわゆる、既存不適格建築物への根本的な対策(基準への適合)には限界があることから、
時間・費用・実現可能性の側面や、
事件・事故としての蓋然性・多様性といった性質への適応可能性(脅威への対策として包括的なものになっていくこと)を目指しました。
そこで具体的には、
「換気」概念への一石を投じるような検討・検証が望まれるというのが筆者の+αになります。
▶「空気の『強制換気』」のことです。
・機器の性能、空気の方向、設置場所・高さへ新たな試みが考えられます。
・「ブースト」様の換気システムがあってもよいかもしれません。(←すいません、これは思い付きです。)
おわりに・・・
今回は2021年12月17日大阪市北区で発生した
「北新地ビル放火事件」の「検討会報告書」をもとにご紹介しました。
筆者がこの記事を書いたのは2022年12月17日です。
事件発生から1年が経ちました。
被害にあわれた方々には心よりお見舞いを申し上げますとともに、
犠牲となられた方々には心よりお悔やみを申し上げます。
検討会では、たいへん権威のある専門家のお歴々が考察結果を導いてくださいました。
建築基準法に基づく既存不適格建築物に関する制限の合理化措置が盛り込まれています。
具体的なところは今後動いていくことになります。
たいへん社会的に意義のある結論が導かれたのではないでしょうか。
一方で筆者は、まったくもって権威ではありませんが、
” multidisciplinary ” ” interdisciplinary ” (学際的な)
な視点で考察をしてみました。
情報がなく、調べるのにたいへん時間がかかってしまいましたが、
「換気」をキーワードとして導き出すことができました。
これは短絡的に「高出力な換気扇」を設置することを意味していません。
「24時間常時換気システム」を設置義務化することを意味するものでもありません。
対象となる建築物とって、最適な「空気の操作」という着想になります。
他にも導出できた対策はあります。
▶「既存不適格建築物は事務所用として使用することを推奨する」
というものです。
しかし、これは ” interdisciplinary ”(学際的な)分析プロセスを経てはいません。
一般的な考え方としての対策案です。
犯罪に及ぼうとする者が、その目的を遂行するための場所として選んでしまわないよう、
あるいは、遂行場所として選ぶことにためらいが生まれるような状況を、
環境が誘導しましょう!という誘導策なります。
とは言いましても、そこまで期待値の高い対策案ではないことは予め申し上げておきたいと思います。
今回は、
「医療」における一酸化炭素COが人体に与えるメカニズムや、
「医療従事者」として使用してきた人工呼吸器や、
「空気」に対する考え方や、
「軍事」における原則論や
「防災減災」としての予防・避難のアプローチや
「危機管理」としての要諦
…
などの視点がたいへん役に立ちました。
上記以外の専門性においても、まだまだ検討の余地があると思っていますので、
筆者の発案がすべてだとは申しません。
読者のみなさんは誤解なきようよろしくお願いいたします。
ぜひ、今回の事件を教訓として、
安全な暮らしの実践に役立てて欲しいと思っています。
その多くは、当局や建物の所有者になるのかもしれませんが、
事業を立ち上げたり、
施設を開設したり、
そういった施設を利用するする際にも、
危険と適切に共存する視点をもっていただければと思っています。
知った「今がスタートライン!」です。