今回は「スノーボールモデル」です。
医療の現場ではしばしば目にする理論になります。
「雪玉」とか「雪だるま」方式と言われたりします。
小さなことが少しずつ大きくなっていくその先に重大な事故が発生するという考え方です。
スノーボールモデル
「スノーボールモデル」とは?
「ミスを雪だるまに例えて説明されるときに使われる。つまり、小さな雪だるま(小さいミス)のうちにストップをかけておけば、一番下の大きな雪だるま(大きな事故)には至らないということである。」(出典:医療事故の法的処理とリスクマネジメント(2011),日本医療・病院管理学会誌,107)と説明されています。
「これは、わかりやすい道理である。ところが、この最初の『ヒヤリハット』の小さなミスの段階でチェックが働かなければ、真ん中の雪だるま(ニアミス)は当然大きくなるわけである。」(出典:Ibid. )
「そして、いよいよ最後の大きな雪だるまになると、相当な勢いで加速していくため、…」(出典:Ibid. )
とあります。
医療の現場では、いよいよ最後のインパクトが患者さんに及んでしまうことが例えとして説明されます。
「スノーボールモデル」に例えられる事例
例1 「誤診」
「思い込み」や「決めつけ」を例にあげてみます。
さまざまにある疾患の検討が狭まり、疑われるべき疾患が疑われることはありません。
本来であれば診断するために必要な問診が行いますが,
「思い込み」などのために本当の疾患を明らかにするための検査は行われません。
こういった、誤りに基づく診断「誤診」により治療が始まってしまうパターンです。
例2 「確認不足」
医師が治療対象である患者さんを間違えたことで、
違う患者さんにすべきではない治療をしてしまうようなケースです。
看護師などの確認不足も重なって、間違っていると認識されずに治療が行われてしまいます。
関係する他の医師も、例えば本来すべきではない患者さんに薬を処方することになってしまったり、
これが薬剤師の確認不足もさらに相まって薬を渡してしまうケースもあるかも知れません。
「スノーボールモデル」の被害者は?
「スノーボールモデル」の被害者は、
▶ 医療であれば患者さんになるでしょう。
▶ 医療の人材育成であれば新人や入職者になるでしょう。
▶ 学校であれば生徒や学生になるでしょう。
▶ 学校の運営であれば若い先生や声をあげるのが苦手な先生になるでしょう。
▶ 会社であれば顧客になるでしょう。
▶ 会社の業務であれば新入社員や転職者になるでしょう。
▶ 家庭内であれば立場の弱い人になるでしょうか。
例えば、子ども、介護を受けている高齢者、障がいのある人など
「スノーボール」を止めるにはどうしたらいいか?
ボール自体は、どうしてもしなければならない行為・行動とした場合、
転がらないようにする必要があります。
転がらないようにするには、ストッパー(転落防止装置)が必要ですから、
その装置に該当する「対策」を確実に実行していく必要があります。
「【第31回】ハインリッヒの法則①」や
「【第32回】スイスチーズモデル」でも少し触れていますが、
さまざまなヒューマンエラーが原因でそのような転がり現象に進みますから、
そういった科学的に明らかになっている特性を考慮して、
対策を打ち出していけるとたいへん有効だと思います。
業界には業界団体による、職能には職能団体によるノウハウが蓄積されてきています。
組織内にもあるところにはちゃんと充実したノウハウがあるかもしれません。
これまでのさまざまな教訓を十分にひととおり確認しておくことはとても大切です。
・個人個人が有する責任をまずは果たすこと
・組織として安全担当者を指定し、理論と現場を吻合させた管理体制を築くこと
それが組織としての責任を果たす。ということにもなること
・「きのう、去年、これまでやってきたから」=「大丈夫」にはならないこと
・「きのう」と「今」ではいろいろ変化要因があることを明らかにすること
・十分な見識をもつベテラン・管理者・経営者が適切なタイミングでチェックすること
・外部の目を入れること
など、具体的な行動要領を導き出すその前にある環境や体制として、
いろいろとおさえることが望まれるポイントはあります。
シワ寄せ …シワは弱いところにできる!
「スノーボールモデル」がたどりつく先についてお話しします。
「シワ寄せ」という言葉があります。
「発生した問題などが他のところに悪い影響を与えること」(出所:国語辞典オンライン)という意味です。
スノーボールモデルが示すように、
所在する問題が望まないかたちで影響を受けるその先は「弱者」です。
まさに「シワ」が「弱い部分」に出現しますが、それと重なるのではないでしょうか。
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おわりに・・・
今回は「スノーボールモデル」をご紹介しました。
悪い影響のその先には「立場の弱い人」がいるというお話しでした。
「ハインリッヒの法則」では、数あるヒヤリハットのその先で重大事故に進む可能性があること、
「スイスチーズモデル」では、数ある予防線を越えてアクシデントが起こっていること、
を説明してきました。
そういった意味で、これら3つのモデルは特徴がまったく異なりました。
とても学びの大きい理論だと筆者はとらえています。
日常の生活の中で、予防ができるアクシデントはたいへん多いです。
多くの人は実のところすでに実践されていると思います。
そんな中、意識的に少しでも予防につながる時間を捻出していただければと思っています。
結果は、「当たり前の日々」という形で訪れてくれることでしょう。
「危険予測」をぜひ「生活習慣防災」のひとつに!
知った「今がスタートライン!」です。