今回は「交通事故」です。
特に、日常生活を想定してご紹介します。
統計もとづくデータを知ることで、生活における予防と防災に役立てていただければ幸いです。
参考:警察庁交通局,令和3年における交通事故の発生状況等について,2022年3月3日
交通事故(死者と重症者)の全体像
死者数の推移
「死者数の推移」です。
年々、その発生数は減少しています。
警察庁が統計を開始したのが1948(昭和23)年です。
その年(1948(昭和23)年)は、3,848人でした。
交通事故の死者数は、昭和27年に4,000人台になります。
昭和45年には16,765人と過去最多を記録しました。
それ以降減少し、昭和51年には1万人を下回りました。
2021(令和3)年は、2,636人でした。
高齢者の割合は、1,520人でした。
重症者数の推移
「重症者数の推移」です。
年々、その発生数は減少しています。
2021(令和3)年は、27,204人でした。
減少傾向ですが、けっして少ない数字ではありません。
交通事故発生件数
統計を開始した1948(昭和23)年は、21,341件でした。
1956(昭和31)年は、122,691件、と10万件を超えました。
1959(昭和34)年は、201,292件、と20万件を超えました。
1960(昭和35)年は、449,947件、と40万件を超えました。
1963(昭和38)年は、53,1966件、と50万件を超えました。
1968(昭和43)年は、635,056件、と60万件を超えました。
1969(昭和44)年は、720,880件、と70万件を超えました。
この間も件数としての増減はありましたが、
これ以降も増減を繰り返しながら、
2001(平成13)年は、947,253件、とピークを迎えています。
これ以降は、減少傾向です。
2020年(令和2)年は、309,000件です。
交通事故死者数・重傷者数の推移
▶「死者数」でみると、
・「歩行中」の事故の割合が全状態を通じて一番高い傾向を示しています。
・次いで「自動車乗車中」
・その次に「二輪車乗車中」
・その次に「自転車乗用中」
の順で割合が多いです。
▶「重症者数」でみると、
・これまでは、状態別に傾向が表れていたようですが、
・近年は、大きな差異はありません。
一方で、状態別での傾向をみてみると、
・「二輪車乗車中」
・「自転車乗車中」
・「歩行中」
・「自転車乗用中」
という区分がなされ、過去には「二輪車乗車中」が多い傾向がありました。
歩行中死者数の状況
▶左側の図は、「横断歩道以外」の横断中事故における歩行者死者数をみています。
〇車両側には、
・交差点安全進行義務の違反
・歩行者による通行妨害
・前方不注意
・安全不確認
など、安全運転義務における違反の割合が多いです。
〇歩行者には、
・走行車両の直前・直後の横断が圧倒的に多く、
・横断歩道外横断もかなり多いです。
・横断禁止場所の横断
・その他の横断違反
・信号無視
といった不注意や違反行為が列挙されています。
▶右側の図は、「横断歩道横断中」の歩行者死者数をみています。
〇車両側には、
・横断歩行者妨害等が圧倒的に多いですが、
・信号無視
・交差点安全進行義務違反
・前方不注意
など、安全運転義務違反を原因とする内容が列挙されています。
自転車乗用中のシートベルト使用別での死者数の状況
自転車乗用中のシートベルト使用別での死者数の状況から、
シートベルトを使用していない場合、使用している場合と比べて、
約17.0倍死亡率が上昇することがわかっています。
児童(小学生)に関する交通事故発生状況
近年は減少傾向にあるようですが、
▶児童(小学生)の死者数の推移によると、
・歩行中で、7人(令和元年)、7人(令和2年)、10人(令和3年)
・自転車乗用中で、6人(令和元年)、6人(令和2年)、4人(令和3年)
・自動車乗車中で、8人(令和元年)、2人(令和2年)、2人(令和3年)
となっています。
▶児童(小学生)の死者・重症者数の推移から、
700件以上の事故が発生しており、
その4割が登下校中という結果が出ています。
登下校中でなくても、
遊戯、訪問、買い物、観光娯楽、散歩などが列挙されています。
▶児童(小学生)の学齢別状態別死者・重症者数でみると、
・いずれの学年でも多いとは見ていますが、
・小学校2年生、小学校3年生、小学校1年生、小学校5年生で多く発生しています。
▶児童(小学生)の時間帯別死者・重症者数では、
・14~15時台
・16~17時台
がたいへん多いです。
まとめ
・交通事故の死者数・重症者数は減少傾向がある。
・交通事故死者数でみると、歩行中の事故が多い。
次いで、自動車乗車中、二輪乗車中、自転車乗車中が多い。
・交通事故重傷者でみると、近年は状態別の差異は少ないものの、
二輪乗車中の事故、自動車乗車中の事故など依然として多い。
・歩行中の死者数から、
車両側に安全運転義務違反がありますが、
その内訳としては、
前方不注意、交差点安全進行義務違反、安全不確認が顕著です。
また、歩行者側に法令違反があるものがあり、
走行車両の直前・直後を横断したり、
横断歩道外での横断がとても目立ちました。
以上、
・交通ルールを守ることを前提とはしつつも、
・必ずしも安全ではないということがわかると思います。
・例え交通ルールを遵守していたとしても、
自分以外の交通利用者が交通違反をしていたら、
その影響(被害)は自分に来る。
そういうことが少なからず起こり得ることを肝に銘じておかなければなりません。
・そこで、
【第31回】ハインリッヒの法則
【第32回】スイスチーズモデル
【第33回】スノーボールモデル
をもとに、自分や大切な人を守るための「配慮」「留意」が必要になります。
・もちろん、完全に安全な場所はありません。
・安全を求めるたために、外出をしないという選択肢も本末転倒です。
・そこで、「危ない」という「リスク」がどこにあるのかを想定しながら、
ルート(経路)や通行ポジションを選定するようにしましょう。
・確かに、「そんなことをいちいちやってられないよ!」
とコメントを頂くかもしれません。
・少しずつ、ひとつずつで構いません。
取り入れてみてはいかがでしょうか。
・また、「時間帯」も大きく影響していました。
特に子どもの場合は、学校や家などの目的地に行くことで精一杯です。
友達と雑談しながら、じゃれ合いながら登下校するので周囲への注意は散漫になります。
こういったコトへの備えとして、地域での見守りは大切です。
・また、「季節」によっても影響を受けます。
明度(日の出・日没による薄暮が早い)により、秋~冬にかけては暗くなります。
雪の季節や、気温が下がることで路面凍結が起これば、またリスクが高まります。
・交通環境は自分と他者と環境の相互作用でその安全が決まります。
そういった相互作用を上手につき合いながら安全と安心を獲得したいです。
おわりに・・・
今回は「交通事故」について、その死者数や重症者数から、傾向をつかんでみました。
事故が多く発生している現状を知ることで、予防や対策につなげていくことを考えてみました。
子どもをもつ親としては、常時ついていられませんから、とても心配になることもあるでしょう。
子どもだけではなく、高齢な親御さんがいる場合もそうかもしれません。
交通ルールを守ることの大切さとともに、
交通事故は各種の相互作用との関係もありますから、
周囲への安全確認とゆとりをもつことの大切さを十分に理解することがとても大切です。
加えて、子どもは親の交通ルールの振舞いをよくみています。
・歩行者の横を猛スピードで自転車で走り抜けている姿、
・点滅した歩行者用信号に向かってスピードを上げていく姿、
・赤信号だけど道路横断する姿、
・横断歩道ではないけど道路横断する姿、
・車道第一(左側)車線の左側を逆走する姿、
・下り坂道で爆走する姿、
・自転車乗車中ヘルメット着用しない姿、
・車道走行中赤信号で歩道に上がり、まるで歩道利用者として振る舞いを変える姿、
・スマートフォンの画面を見ながら走行する姿、
・手放し運転をする姿、
・歩行者に道を譲れといわんばかりに「ベル(警笛)」を鳴らす姿、
・雨天時に傘をさして片手で運転する姿、
・雨天時に道路の水たまりの水を歩行者にはね上げて通り過ぎる姿、
・気に食わないことがあれば文句を言っている姿、…
…いろいろ見ています。
例外なく親の背中を見て育ちますから、
親の振舞いがゆくゆくとして望まない結果につながっているケースがあるのかもしれません。
これは統計的データがありませんが、予防災.comの視点です。
そこで、そのような被害の因果関係の起源にも目を向けてみるのも、
いわゆる、交通社会人としての振舞いに対する予防災実践を試みることも、
「ハインリッヒの法則」「スイスチーズモデル」「スノーボールモデル」に絡めた
「予防災.com」が提案する視点/実践手法になります。
知った「今がスタートライン!」です。